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1 聖女開眼
24 攻略対象?? 聖女オタク 神官リカルド
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「みなさん、落ち着いてください!」
興奮を抑えきれない様子で、リカルドが叫んだ。
いや、落ち着くのはあなたでは‥‥‥
「ここは、皆で聖女さまをお迎えする唄を唄わなければ!」
は?
「そうであった」
「ついつい興奮してしまった」
「ありがたやありがたや」
なんだか、ハンドベル?みたいな楽器を取り出した人もいる。
あっちでは竪琴?
「皆でお迎えせねば」
「聖女様、お待ちしておりました」
「ありがたやありがたや」
白ローブの人たちは口々にいい、突然「さんはいっ」と歌い出した。
「お~~あり~がた~きせ~いじょさま~~~」
いや、ちょっと、なにこれ?何の罰ゲーム?
「み~よ~はふ~きゅう~のひ~のひ~かり~」
「お~ささ~えし~ます~せ~いじょさま~~」
逃げ回ってたのに、何で見知らぬ白装束のおじさんに取り囲まれて、こんな訳のわからない唄を唄われてるの?
どっかからかタイミングよくハンドベルの音が聞こえてくる。
「せ~いじょっ、せ~いじょっ、せ~いじょ~~」
なんか、あっちの方では興奮して踊り出している人までいる。
フォーメーション組んでる人達までいる。
興奮のあまりか、部屋のあちこち踊り出す集団が発生していた。
しかも、何だかノリノリになって一緒に踊り出した使用人さんまでいるよ?
「おーーーーーーー、せいじょっさ~ま~~」
リカルドはいつの間にやら指揮者のようなポジションになっていたが、勢いよく拳を固めて唄を締めると、私の方をキラキラした目でふり返った。
「いかがですか?聖女さま。我々の聖女さまをお迎えする唄は?お喜び頂けましたでしょうか?」
え、私?ちょっと引いてた。
喜ぶところだったのここ?
いや、ちょっと、頼んでないけど‥‥‥
なんか、この人たち、聖女狂なの?
何で、勝手に聖女認定して盛り上がってんのよ?
ドン引きして後ずさる私の前にとうさまが私を隠すようにすっと立った。
「お待ちください。これは私の娘。聖女様ではございません。」
さすがとうさま、グッジョブ!
「いいえ、間違いありません、この聖なるオーラに金環の瞳。私の人生を懸けて研究を続けてまいりました!この方は間違いなく当代の聖女さまです!男爵様であろうと、止めることはできません。ありがたい、ありがたい、教団だけではなく、国全体に喜びをもたらす存在なのです!!」
「聖女様あああああ」
「ああああああ」
「ありがたやああああ」
「聖女様、バンザーイ」
「はっ!待て!!もしやわれわれの唄がお気にめさなかったのでは?聖女様、もう一度チャンスを、もう一度おおおお」
「お願いしますううううう」
「聖女様あああああああ」
「お許しくださいいいいいい」
なんか、ますますおかしくなってきた気がする。
半目になって、教団の人たちを見ていると、お父様が私を振り返って小声で、
「望むか?」
と聞いた。
私は小さく首を横に振った。
お父様は、分かった、というように目で頷くと、一同に告げた。
「娘は聖女様ではありません。どうか、お引き取りください」
部屋にいた全員の目が私に注がれた。
一斉に、皆の感情が流れ込んでくる。
期待、歓迎、喜び、そして、戸惑い、困惑、悲しみ‥‥‥
その感情に私の心も共感し、揺さぶられてしまう。
思わず、一歩前に出て、室内にいる皆に話しかけた。
「みなさん、落ち着いてください。」
部屋の中を荒れ狂うように渦を巻いていた興奮の波が治り、高ぶっていた感情が静かになる。
興奮の波が引き潮のように去っていく。
お父様が、もう一度、語りかけるように告げる。
「娘は聖女様ではありません。今日のところは、どうか、お引き取りください」
白いローブの人たちはノロノロとフードをかぶり、部屋から1人、また1人と退出していった。
最後の1人となったリカルドは私を未練がましく見てから退出していった。
ふぅ。
去り際に、小さくはあるが確信した声でリカルドが呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
「金環の瞳に揺らめく黄金の瞳、そしてあの声‥‥‥間違いない!!絶対にお守りせねば。」
興奮を抑えきれない様子で、リカルドが叫んだ。
いや、落ち着くのはあなたでは‥‥‥
「ここは、皆で聖女さまをお迎えする唄を唄わなければ!」
は?
「そうであった」
「ついつい興奮してしまった」
「ありがたやありがたや」
なんだか、ハンドベル?みたいな楽器を取り出した人もいる。
あっちでは竪琴?
「皆でお迎えせねば」
「聖女様、お待ちしておりました」
「ありがたやありがたや」
白ローブの人たちは口々にいい、突然「さんはいっ」と歌い出した。
「お~~あり~がた~きせ~いじょさま~~~」
いや、ちょっと、なにこれ?何の罰ゲーム?
「み~よ~はふ~きゅう~のひ~のひ~かり~」
「お~ささ~えし~ます~せ~いじょさま~~」
逃げ回ってたのに、何で見知らぬ白装束のおじさんに取り囲まれて、こんな訳のわからない唄を唄われてるの?
どっかからかタイミングよくハンドベルの音が聞こえてくる。
「せ~いじょっ、せ~いじょっ、せ~いじょ~~」
なんか、あっちの方では興奮して踊り出している人までいる。
フォーメーション組んでる人達までいる。
興奮のあまりか、部屋のあちこち踊り出す集団が発生していた。
しかも、何だかノリノリになって一緒に踊り出した使用人さんまでいるよ?
「おーーーーーーー、せいじょっさ~ま~~」
リカルドはいつの間にやら指揮者のようなポジションになっていたが、勢いよく拳を固めて唄を締めると、私の方をキラキラした目でふり返った。
「いかがですか?聖女さま。我々の聖女さまをお迎えする唄は?お喜び頂けましたでしょうか?」
え、私?ちょっと引いてた。
喜ぶところだったのここ?
いや、ちょっと、頼んでないけど‥‥‥
なんか、この人たち、聖女狂なの?
何で、勝手に聖女認定して盛り上がってんのよ?
ドン引きして後ずさる私の前にとうさまが私を隠すようにすっと立った。
「お待ちください。これは私の娘。聖女様ではございません。」
さすがとうさま、グッジョブ!
「いいえ、間違いありません、この聖なるオーラに金環の瞳。私の人生を懸けて研究を続けてまいりました!この方は間違いなく当代の聖女さまです!男爵様であろうと、止めることはできません。ありがたい、ありがたい、教団だけではなく、国全体に喜びをもたらす存在なのです!!」
「聖女様あああああ」
「ああああああ」
「ありがたやああああ」
「聖女様、バンザーイ」
「はっ!待て!!もしやわれわれの唄がお気にめさなかったのでは?聖女様、もう一度チャンスを、もう一度おおおお」
「お願いしますううううう」
「聖女様あああああああ」
「お許しくださいいいいいい」
なんか、ますますおかしくなってきた気がする。
半目になって、教団の人たちを見ていると、お父様が私を振り返って小声で、
「望むか?」
と聞いた。
私は小さく首を横に振った。
お父様は、分かった、というように目で頷くと、一同に告げた。
「娘は聖女様ではありません。どうか、お引き取りください」
部屋にいた全員の目が私に注がれた。
一斉に、皆の感情が流れ込んでくる。
期待、歓迎、喜び、そして、戸惑い、困惑、悲しみ‥‥‥
その感情に私の心も共感し、揺さぶられてしまう。
思わず、一歩前に出て、室内にいる皆に話しかけた。
「みなさん、落ち着いてください。」
部屋の中を荒れ狂うように渦を巻いていた興奮の波が治り、高ぶっていた感情が静かになる。
興奮の波が引き潮のように去っていく。
お父様が、もう一度、語りかけるように告げる。
「娘は聖女様ではありません。今日のところは、どうか、お引き取りください」
白いローブの人たちはノロノロとフードをかぶり、部屋から1人、また1人と退出していった。
最後の1人となったリカルドは私を未練がましく見てから退出していった。
ふぅ。
去り際に、小さくはあるが確信した声でリカルドが呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなかった。
「金環の瞳に揺らめく黄金の瞳、そしてあの声‥‥‥間違いない!!絶対にお守りせねば。」
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