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番外編4 勇太 彼氏の部屋 

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「さあ、さっさと行こう!」

壮介はオレの腕を掴むと、引っ張り上げ、そのまま引きずるようにして自分の部屋まで連れて行った。
リビングでは、お姉さんがにこにこ(にやにや?)しながら、ひらひらと片手を振っている。

「がんばって!」

そう口の動きだけで伝えてきた。

(あのお姉さん、何か気づいているのかな?)

壮介を見上げると、後ろから見える壮介の耳は真っ赤に染まっていた。


壮介の家にお邪魔した時は、いつもリビングにいるご家族に挨拶した後にすぐに2階の壮介の部屋に行く。
動画を見たり、映画を見たり、ゲームをしたり。
勉強だって一緒にする。

ただ、今まで「友達」として遊びにきていたので、「彼氏」としてきた今日とは訳が違う。
なんか、無駄に力が入ってしまい、そわそわと視点が定まらないような、落ち着かない気持ちだ。

今日は一緒に試験勉強をする約束だったので、まずは壮介が用意してくれておいたテーブルの上にテキストを広げた。
向かいに座る壮介とオレが床に座れば部屋の中はもう一杯。
まあ、子供部屋なんてこんなもんだよな?

ただ、とにかく落ち着かない。
だって、この部屋、壮介だらけなんだよ!
全部が全部、壮介すぎる!

勉強机も、ペン立てに刺さったペンも、壁にかかったポスター(ちなみに柔道選手な?)も、服も壁にかかった制服も、べ、ベッドもその上にかかった寝具も・・・全部、壮介!!
く、くらくらする・・・
前はこんなことなかった。
隠してた時はこんなことなかった。
でも、今は違う。

オレたち、だって、りょ・・・両想いなんだろ?

そう考えただけでオタオタしてしまう。
尻はムズムズ、座ってられない。

なのにそんなオレに気づきもせず、壮介は教科書を開くと、問題を解き始めた。

と、とりあえず深呼吸~~。うっ、壮介の匂い。おれ、好き。
だ、ダメだ、全然ダメだ。
こんなんじゃ壮介に迷惑をかけてしまう。
試験勉強の邪魔だ。

「ん?どうした。わからないのか?」

壮介は問題集から顔をあげ、オレを見た。

「おい、どうしたんだ」
「な、何が?」
「いや、なんか、顔が赤いぞ?」
「えっ・・・!」

ば、バレた?
オレはガバッと教科書を顔の前に広げた。

「は、範囲を確認してただけだから!」
「ふーん?」
「えっと、えっと・・・古文の範囲は・・・」
「それ、理科だけどな?」
ん?
「しかも教科書反対だぞ?」
うそっ。そんな、古典的な!
「げっ」本当だった・・・

「どうした?集中できないのか?」
「う・・・うん。ごめん」
「まあ、そりゃそっか。俺だって緊張してる」
「本当?全然わからないけど」
「そりゃー、試合で動揺とか緊張とか見えたら半分負けたようなもんだろ」
うーーーそっか。鍛え方が違ったか。

「ま、でも今は勉強しような?とっとと終わらせて少し遊ぼうぜ?」
対面から壮介の手が伸びて、オレの頭をポンポンと撫でた。
ううーーーー
「うん」

オレは、ちょっと恥ずかしくなって本当に教科書を広げた。
オレばっかり、オレばっかり、本当に、情けない奴だよな!?

教科書をテーブルに広げ、とりあえず、集中しているふりだ!
壮介は見ない!
ここは・・・そう、教室だ!
ちょっと無理があるけど、そう思おう!
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