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32 壮介
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「勇太きゅん、大丈夫かな」
心配だ。メッセージを送るとすぐに猫のスタンプとともに返事が来たが、気持ちは晴れなかった。
顔色が悪かったし、あの表情も気にかかる。
(もしかして、何か、悩みでもあるのかな?)
そう思い至ると、新学期になったら、何か力になれないか聞いてみよう、と決めた。
その日の夜のことだった。
なんと、久しぶりに、「姫」が来た。
今回は俺のシャツを羽織り、ボタンは2つ3つしかかかっていない。
か、彼シャツ?彼シャツってやつなのか?
チラチラと肌が見え、余計に俺の劣情をそそる。
見えそうで見えないところがエロすぎる。
「ねぇ、壮介?オレのこと好き?オレのこと好きにしていいんだよ?」
そう言うと俺をベッドに押し倒し、のし掛かってきた!
羽のように軽い体に乗られて、身動きが取れない。
しかも下から見える俺のシャツを羽織った姫・・・エロすぎる。
(うおっ!)
だ、大歓迎だけど、大歓迎だけど、本当に、いいのか?!
もちろん、大好きだけど!!
いや、でも、そもそも・・・どっち?
お、俺?俺が押し倒されてるから、俺が受けるの?
・・・
ちょっと待って、ちょっと待って、まだ、準備とかしてないし、そもそも、いろいろ、心の準備とかも間に合ってないから!
「はやくぅぅ~~」
姫が俺を誘惑する。
大好きだけど、大好きだけど、いつだって、ボクは大歓迎だけど!でも!
俺の準備が整ってないってだけじゃない。
今日はダメだ。だって、あんなに体調が悪そうだったし、今日はダメだ。
もっと身体も自分も大切にしてくれ。
頼むから!!
「ダッ、ダメだ・・・!!!」
俺は、まさに断腸の思いで身をよじり、素早く体を横にずらすと姫の下から抜け出した。
ドン!!!
直撃だった。
俺の身体は勢いよくベッドの下の床に叩きつけられた。
受け身なしはキツイ。
(痛ってぇ)
夢だった。
(やっぱりか・・・)
当たり前だよな。
俺はため息をつくと頭を掻いた。
相変わらず妄想は健在だ。
でも、以前とは何かが違っていた。俺の中の何かが変わってしまった。
翌朝、朝食に降りて行くと、姉貴が近寄ってきた。
「ねえねえ、ちょっと、あんた、昨日随分カッコつけて出かけて行ったけど、どこ行ってきたの?」
うぜえ。
俺は姉貴を無視して朝食をかっこんだ。ちなみに俺は朝は和食派な。
「もしかして、あの子?お見舞いに来てくれた、すごく可愛い男の子?」
しかも無駄に鋭い。
俺は姉貴をチラッと見ると、焼き鮭を食った。
なにワクワクして見てんだよ。まあ、いい趣味なのは認めるがな。
勇太は世界一可愛い。
「やめなさい!」母ちゃんが鋭い声で言った。「あんたのおかしな趣味に弟を巻き込まないで」
「えー?」
「そうだよ。本当にこの子はおかしなことばかり言って。男同士なんて気持ち悪いでしょ。」
ばあちゃんまで参戦してきた。
女達は言い合いを始めた。朝からうるさい奴らだ。
「ごちそうさま」
食べ終わった俺はそれだけ言うと、立ち上がった。
部屋に戻る途中、思わず口にした言葉は、
「関係ねぇ」
そう、関係ねぇ。
俺と、勇太だけの問題だ。
どこかからあのカチッという音が聞こえた。
ずっとそうじゃないかと思っていた。
これは、俺が勇太に堕ちる音。今までの「当たり前」を壊す音。
誰かが決めた枷が壊れる音。
もう二度と聞くことはないだろう。
男同士は気持ち悪い。
男は女と付き合うべき。
誰も言わない「当たり前」なプレッシャー。
周りの意見や「当たり前」にとらわれる事は、もう、ない。
枷が、壊れた。
心が、決まった。
心配だ。メッセージを送るとすぐに猫のスタンプとともに返事が来たが、気持ちは晴れなかった。
顔色が悪かったし、あの表情も気にかかる。
(もしかして、何か、悩みでもあるのかな?)
そう思い至ると、新学期になったら、何か力になれないか聞いてみよう、と決めた。
その日の夜のことだった。
なんと、久しぶりに、「姫」が来た。
今回は俺のシャツを羽織り、ボタンは2つ3つしかかかっていない。
か、彼シャツ?彼シャツってやつなのか?
チラチラと肌が見え、余計に俺の劣情をそそる。
見えそうで見えないところがエロすぎる。
「ねぇ、壮介?オレのこと好き?オレのこと好きにしていいんだよ?」
そう言うと俺をベッドに押し倒し、のし掛かってきた!
羽のように軽い体に乗られて、身動きが取れない。
しかも下から見える俺のシャツを羽織った姫・・・エロすぎる。
(うおっ!)
だ、大歓迎だけど、大歓迎だけど、本当に、いいのか?!
もちろん、大好きだけど!!
いや、でも、そもそも・・・どっち?
お、俺?俺が押し倒されてるから、俺が受けるの?
・・・
ちょっと待って、ちょっと待って、まだ、準備とかしてないし、そもそも、いろいろ、心の準備とかも間に合ってないから!
「はやくぅぅ~~」
姫が俺を誘惑する。
大好きだけど、大好きだけど、いつだって、ボクは大歓迎だけど!でも!
俺の準備が整ってないってだけじゃない。
今日はダメだ。だって、あんなに体調が悪そうだったし、今日はダメだ。
もっと身体も自分も大切にしてくれ。
頼むから!!
「ダッ、ダメだ・・・!!!」
俺は、まさに断腸の思いで身をよじり、素早く体を横にずらすと姫の下から抜け出した。
ドン!!!
直撃だった。
俺の身体は勢いよくベッドの下の床に叩きつけられた。
受け身なしはキツイ。
(痛ってぇ)
夢だった。
(やっぱりか・・・)
当たり前だよな。
俺はため息をつくと頭を掻いた。
相変わらず妄想は健在だ。
でも、以前とは何かが違っていた。俺の中の何かが変わってしまった。
翌朝、朝食に降りて行くと、姉貴が近寄ってきた。
「ねえねえ、ちょっと、あんた、昨日随分カッコつけて出かけて行ったけど、どこ行ってきたの?」
うぜえ。
俺は姉貴を無視して朝食をかっこんだ。ちなみに俺は朝は和食派な。
「もしかして、あの子?お見舞いに来てくれた、すごく可愛い男の子?」
しかも無駄に鋭い。
俺は姉貴をチラッと見ると、焼き鮭を食った。
なにワクワクして見てんだよ。まあ、いい趣味なのは認めるがな。
勇太は世界一可愛い。
「やめなさい!」母ちゃんが鋭い声で言った。「あんたのおかしな趣味に弟を巻き込まないで」
「えー?」
「そうだよ。本当にこの子はおかしなことばかり言って。男同士なんて気持ち悪いでしょ。」
ばあちゃんまで参戦してきた。
女達は言い合いを始めた。朝からうるさい奴らだ。
「ごちそうさま」
食べ終わった俺はそれだけ言うと、立ち上がった。
部屋に戻る途中、思わず口にした言葉は、
「関係ねぇ」
そう、関係ねぇ。
俺と、勇太だけの問題だ。
どこかからあのカチッという音が聞こえた。
ずっとそうじゃないかと思っていた。
これは、俺が勇太に堕ちる音。今までの「当たり前」を壊す音。
誰かが決めた枷が壊れる音。
もう二度と聞くことはないだろう。
男同士は気持ち悪い。
男は女と付き合うべき。
誰も言わない「当たり前」なプレッシャー。
周りの意見や「当たり前」にとらわれる事は、もう、ない。
枷が、壊れた。
心が、決まった。
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