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27 壮介
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朝起きると、少し冷静になっていた。
そう、まだ告ってない。
付き合ってもいない。
付き合ってもらえるのかもわからない。
そもそも、自分の気持ちをはっきりと自覚したばかりだ。
勇太が望まない可能性だってある。その時はきっぱり諦める。・・・できるんだろうか。
まずは、この夏休みを使って少しずつ、距離を詰めていこう。
(大会前だから、稽古やトレーニングが詰まっているが、なんとかなるだろう)
そう決めたものの、人を好きになったことがないから、これ以上、距離をどう詰めていったらいいのかもわからない。
(メッセージをもっと送ってみるとか?どうなんだろう)
意外と難問だった。そもそも十分に友達としては近づいている。
単に人間として、あいつのことが好きだった。一生友達で居られるだろうと思うぐらいには。
でも心は贅沢だ。できれば友達以上になりたい。
俺があいつを思うように、あいつにも好きになってもらいたい。
望みはするものの、そんなことが起こる確率はまさに天文学的な数字だろうとも思う。
ただやっぱり永遠に一緒に居られるわけじゃない。そう考えれば、なんとか今の「オトモダチ」としての距離を少しずつ変えていきたいと思ったんだ。
「夏休み・・・?」
俺は、勇太を誘ってみることにした。
そう、やっぱり交際の基本はデートだろ?
「あー、まあ、1日くらいどこかに行かないか?」
勇太は一瞬困ったような、迷ったような気配を見せたが、
「そうだね。」
と答えた。よっしゃ!
「もし、よければ、大会もあるんだが・・・観に来ないか?」
「え・・・大会・・・うん、そうだね。都合が合うといいな。あとで日程を教えてくれたら、バイトとか家とかに都合を聞いてみるよ」
なぜか、視線が合わない。
もしかしたら、誘ってはいけなかったんだろうか?
なんとなく、取り繕ってはいるが、気乗りしていないようにも見える。
うーん、難しい。いつだって距離を詰めるのは難しい。
遠くから見ていた時も、近くにいる今も、やっぱり同じように難しい。
柔道の試合のように、相手の懐に一瞬で潜り込む、なんてのは夢のまた夢だ。
「まあ、都合が合えば、でいいからな」
「・・・ん・・・」
ちょっと気まずくなった気がしたが、とりあえず、遊びに行く約束は取り付けたからな!
しかも、1日だぞ!?
デ、デートだからな?
夏休み前半はお互い忙しく、あいつはバイト、俺は部活で終わってしまった。
ほぼ、毎日のようにメッセージアプリで簡単なやりとりをしていたが、まあ、それだけ。
でも随分進歩したよな?
お互いの簡単な近況を知らせたり、唯の無駄話をするようなそんなやりとりは、俺の夏休みを充実させてくれた。
俺は8月上旬にある大会のために、毎日必死で稽古とトレーニングを続けたし、忙しすぎて、エロい夢すら見ないほどきつい夏休みだった。
まあ、もちろん、色々と勇太きゅんにはお世話になっていたどな?ほら、俺って一途だからさ。
ただ、なんとなく、俺たちの立ち位置がどうなのか?
(つまり、どっちが突っ込む方で、どっちが突っ込まれる方か?ってことな!)
との疑問にぶつかり悶々としたり、「準備」とやらの与える身体への負担、とかその他諸々(カ、カンチョーとか・・・)を考えると、曖昧な妄想に浸っていた方が、安心なような気もしたし、でも、やっぱり、もし許してもらえるなら、触れてみたいし、と思考は堂々巡りに陥っていた。
俺の大会の日には、どうしてもバイトを休めない、ということで、来てはもらえなかった。
まあ、仕方ない。
みんな予定があるもんな。
(優勝、したんだけどな・・・)
金色のトロフィーが夕日を受けて煌めいているが、なぜか、少し寂しげに見える。
頭でもはわかっていても、優勝の瞬間に立ち会ってもらえなかったこと、俺の気持ちそのもののような気がした。
やっと日程を合わせて一緒に出かけられるようになった時には、お盆過ぎだった。
さらに上部大会があるため、毎日トレーニングと稽古は続けていたが、一日ぐらいいいだろう。
そう思えば、一層トレーニングに力が入った。
そう、もうすぐ、会える。
やっと、会える。
2人で出かけることができるんだ!
俺の中では「初デート♡」だからな?
楽しみだなぁ。
そう、まだ告ってない。
付き合ってもいない。
付き合ってもらえるのかもわからない。
そもそも、自分の気持ちをはっきりと自覚したばかりだ。
勇太が望まない可能性だってある。その時はきっぱり諦める。・・・できるんだろうか。
まずは、この夏休みを使って少しずつ、距離を詰めていこう。
(大会前だから、稽古やトレーニングが詰まっているが、なんとかなるだろう)
そう決めたものの、人を好きになったことがないから、これ以上、距離をどう詰めていったらいいのかもわからない。
(メッセージをもっと送ってみるとか?どうなんだろう)
意外と難問だった。そもそも十分に友達としては近づいている。
単に人間として、あいつのことが好きだった。一生友達で居られるだろうと思うぐらいには。
でも心は贅沢だ。できれば友達以上になりたい。
俺があいつを思うように、あいつにも好きになってもらいたい。
望みはするものの、そんなことが起こる確率はまさに天文学的な数字だろうとも思う。
ただやっぱり永遠に一緒に居られるわけじゃない。そう考えれば、なんとか今の「オトモダチ」としての距離を少しずつ変えていきたいと思ったんだ。
「夏休み・・・?」
俺は、勇太を誘ってみることにした。
そう、やっぱり交際の基本はデートだろ?
「あー、まあ、1日くらいどこかに行かないか?」
勇太は一瞬困ったような、迷ったような気配を見せたが、
「そうだね。」
と答えた。よっしゃ!
「もし、よければ、大会もあるんだが・・・観に来ないか?」
「え・・・大会・・・うん、そうだね。都合が合うといいな。あとで日程を教えてくれたら、バイトとか家とかに都合を聞いてみるよ」
なぜか、視線が合わない。
もしかしたら、誘ってはいけなかったんだろうか?
なんとなく、取り繕ってはいるが、気乗りしていないようにも見える。
うーん、難しい。いつだって距離を詰めるのは難しい。
遠くから見ていた時も、近くにいる今も、やっぱり同じように難しい。
柔道の試合のように、相手の懐に一瞬で潜り込む、なんてのは夢のまた夢だ。
「まあ、都合が合えば、でいいからな」
「・・・ん・・・」
ちょっと気まずくなった気がしたが、とりあえず、遊びに行く約束は取り付けたからな!
しかも、1日だぞ!?
デ、デートだからな?
夏休み前半はお互い忙しく、あいつはバイト、俺は部活で終わってしまった。
ほぼ、毎日のようにメッセージアプリで簡単なやりとりをしていたが、まあ、それだけ。
でも随分進歩したよな?
お互いの簡単な近況を知らせたり、唯の無駄話をするようなそんなやりとりは、俺の夏休みを充実させてくれた。
俺は8月上旬にある大会のために、毎日必死で稽古とトレーニングを続けたし、忙しすぎて、エロい夢すら見ないほどきつい夏休みだった。
まあ、もちろん、色々と勇太きゅんにはお世話になっていたどな?ほら、俺って一途だからさ。
ただ、なんとなく、俺たちの立ち位置がどうなのか?
(つまり、どっちが突っ込む方で、どっちが突っ込まれる方か?ってことな!)
との疑問にぶつかり悶々としたり、「準備」とやらの与える身体への負担、とかその他諸々(カ、カンチョーとか・・・)を考えると、曖昧な妄想に浸っていた方が、安心なような気もしたし、でも、やっぱり、もし許してもらえるなら、触れてみたいし、と思考は堂々巡りに陥っていた。
俺の大会の日には、どうしてもバイトを休めない、ということで、来てはもらえなかった。
まあ、仕方ない。
みんな予定があるもんな。
(優勝、したんだけどな・・・)
金色のトロフィーが夕日を受けて煌めいているが、なぜか、少し寂しげに見える。
頭でもはわかっていても、優勝の瞬間に立ち会ってもらえなかったこと、俺の気持ちそのもののような気がした。
やっと日程を合わせて一緒に出かけられるようになった時には、お盆過ぎだった。
さらに上部大会があるため、毎日トレーニングと稽古は続けていたが、一日ぐらいいいだろう。
そう思えば、一層トレーニングに力が入った。
そう、もうすぐ、会える。
やっと、会える。
2人で出かけることができるんだ!
俺の中では「初デート♡」だからな?
楽しみだなぁ。
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