もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?

藍音

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21 勇太

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やった!やった!友達になれるかもしれない!

嬉しくて、下がっていた気持ちがまるで一斉に舞い上がるシャボン玉のように浮かび上がってくる。
降るように舞い散る桜の木の下で浮かれて、風に舞い上がる桜の花びらとともに、空に飛んで行ってしまいそうだ。
そんな喜びの中、神頼みの効果があったのかもしれないとうっすら思った。


同じクラスになってみると、富山くんはすごく気が合う相手だということが分かった。
不思議なぐらい気が合う。
あっという間にお互いを、壮介、勇太と呼び合うようになった。

別に同じ本を偶然読んでた、とかそんなテンプレじゃない。

共通する部分がなくても、壮介といるだけで、楽しい。そして、幸せな気分だった。

ゲームを一緒にプレイすれば、何倍も楽しくなる。
好きな動画サイトが同じで、驚いたこともあった。
こんな本読んだ、と聞いて借りてみれば面白い。
こんな番組が面白い、と紹介すれば楽しんでくれる。

時々合わないことがあっても、ああ、そういう考え方もあるのか、と妙に納得できた。

壮介はあまり喋らない。口が重いタイプっていうのかな?
でも、いつだって一番大切なことを言ってくれた。
オレの心を救ってくれるような一言だったり、人として忘れてはならないような大切な言葉だったり。

知れば知るほど、惹かれていく。

そして、何よりも、お互いに一緒にいて心地よい相手だった。


だから、オレはこれまで以上に、絶対にオレの気持ちを悟られないように、油断しないようにと気を引き締めていたんだ。
これだけ気が合えば、今だけじゃなくて、卒業してからもずっと友達で居られるかもしれない、

まるで願いのように、そう思っていたんだ。


そんな穏やかな日々が続く中、あの修了式前日にバケツの水をかけようとしてきたストーカーが、事件以来全く近寄って来ていないことに気がついた。

(もしかして諦めたのか?・・・だといいけど・・・)

年が明けて早々に、一度、遠くからの視線を感じて振り返ったが、オレが振り返ると、怯えたような様子で踵を返し、そのまま走り去っていった。
それ以来、全く接触されることがなくなった。
もちろん、接触されることを望んでいたわけではないので、ストーカーことすら気がつかなかった。
奴のことを考えたくもなかったことも、その理由の一つかもしれない。
そして、ストーカーが諦めてくれたのではないか、という微かな期待は、春が過ぎて、夏の日差しを感じ始める季節になると、淡い期待から確信に、少しずつ変わっていった。


そういえば、男から告白をされたり、いきなり触られそうになったり、ましてやトイレで覗き込まれるような虫酸が走る行為も、年が明けてから、少しずつ減っていったように思う。
根拠はなかったが、もしかして、少なくとも4月以降は壮介が睨みを聞かせてくれているのではないかと、ふと気がついた。

___________________________

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