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19 勇太

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図々しいかなとも思ったが、山田くんが背中を押してくれた。
何よりも、オレが富山くんに会いたかった。
顔が見たいし、心配で心配でたまらなかった。
お見舞いの口実を作るために、教師からプリントや上靴などを預かり、富山くんの自宅に向かった。

そこは、閑静な住宅街で、少し駅から遠く、ちょっと不便なところだった。
こんな距離を歩かせてしまったのだろうか。
もしかして駅から徒歩ではなく自転車?どちらにしても寒かっただろう。

ご自宅にお邪魔すると、少し年上の綺麗な長髪の美人が迎えてくれた。
見た目とは違いサバサバとした感じのいい人だった。
訪問の理由を伝えると、富山くんは寝ているとのことだった。
恐縮して見舞いの品と預かってきたプリントや上靴だけを渡して帰ろうとしたのだが、せっかくだから顔を見ていってといってくれた。さっき様子を見に行ったら、すっかり熱も下がっていたし、他の症状もなく、ただの疲れだろうから、と。
熱が出たと聞いていたのに、いいのかな?とは思ったが、正直、顔が見たかった。
無事を確かめたい、というのももちろんあるけれど、何よりも、ただ、会いたかった。

部屋にお邪魔すると、富山くんはやっぱり調子が悪かったようで、寝込んでいた。
顔を見たいとか、勝手なことばかり考えていた自分が恥ずかしくなる。
とりあえず、用件のみ伝えて帰ろうとすると、やっぱりあいつはオレの心が楽になることを当たり前のようにいってくれたんだ。

「白石のせいじゃないからな」、と。

もう、認めるしかない。
それは、オレが、2度目に恋に落ちた、瞬間だった。



心臓が加速する。
このまま、いま、ふわふわと陽をあびて舞い上がっている昨日の雪のように、風に乗って飛んで行ってしまいたい。
でも、側にいたい。
近づきたい。

だけど、何よりも、嫌われたくない。

でも、やっぱり、心は踊る。


お見舞いの品を渡すと、富山くんは美味しそうにプリンを食べてくれた。

(あ、生クリーム載ってるやつが好きなんだ・・・もしかして、甘いもの好きなのかな?なんだか可愛い・・・)

そんな、新たな発見に少しくすぐったくなりながらも、思ったよりも元気そうな姿に安心した。
頑張って、お見舞いに来てよかった。そう思った。


帰り際、オレは勇気を振り絞ってメッセージアプリの IDを聞いた。
自分から IDを聞くなんて初めてだ。
大丈夫だよな?
オレの気持ちバレてないよな?
不自然じゃないよな?
キモくないよな?


その日の夜、体調を訪ねるメッセージを送った。

見舞いの後に体調を訪ねるのって、不自然じゃないよな?
オレがあいつに気があるってバレないよな?
男にキモい思いを寄せられているって気づかれないよな?

オレの頭の中は不安や期待が渦を巻くように溢れかえって堂々巡りだ。
でも、メッセージを送りたい気持ちには勝てなかった。

いつ返信が来るだろうか。
それとも来ないだろうか。
もしかして、メッセージアプリが壊れてしまったのでは?
スマホの調子が悪くなった?
電波が悪い?
昨日の雪で基地局が故障した?

やっぱり、返信はくれないんだろうか。

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ありがとうございました。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。

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