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13 壮介

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新年になって、姫からあけおめスタンプが送られてきて、俺もそれに対して当たり障りのないスタンプを返した後は特にメッセージのやり取りもなく。
 
新学期が始まり、相変わらず姫と俺は週2の体育の授業で顔をあわせる程度の距離感が続いていた。
ひとつ変わったことといえば、顔をあわせると嬉しそうに挨拶してくれるようになったくらいかな。

姫が俺に向かって微笑むとか、尊すぎて俺はその度に平静を保つためにいつも以上に無表情になってしまう。
俺だって、俺だって、可愛く笑って挨拶してみたいんだよ!
ちょっと、無理だが。


4組のバケツ男にもきっちり説教してやった。
誰だか名前もわからないから、新学期早々の昼休みに教室に俺から会いに行ってやったんだ。

「おい、お前」
「ひっ・・・!柔道部の富山・・・くん!!」

バケツ男は俺に水をかけてから俺の顔を見ては逃げ回っていたが、そうは問屋がおろさない。

「人に迷惑をかけちゃダメだろ」
「ご、ごめんなさい、僕、富山くんに水をかける気なんてなかったんだ」
「いや、そういう問題じゃないから。俺じゃなくても真冬に水をかけるとかありえないんだよ」

本当に危ないところだった。
勇太に水がかかっていたらと思うと、むしゃくしゃして思わず睨みつける。

「ヒイイ」

バケツ男からは声にならないような悲鳴のような声が漏れ出した。

「いや、冬とかいうそういう問題じゃねえだろ。人様に水をぶっかけるとか、お前のやってることはイジメじゃないのか?」
「イジメなんてそんな・・・僕は、本当に白石くんのことが・・・」

「あとな、お前誰に断って白石のモノを確認しようとかしてんだよ、この変態」
「そんな、僕は変態なんかじゃ・・・」

いや、お前自覚ないのかよ。立派な変態さんだぞ。

「勝手なことしてんじゃねーぞ」俺だって見たことないんだぞ。
「勝手って・・・?」

バケツ男が戸惑ったような顔をする。
どう捉えたらいいのか、混乱し出したようにあちこちに目を泳がせ始めた。
ムカつく。俺は声を低くして念を押すことにした。

「あ゛~?本人が嫌がってんのにダメだろ?お前、ストーカーか?」
「ぼ、僕は純粋な気持ちで・・・」
「はああ?純粋?純粋ってなんだよ?蜂蜜か?笑わせんな。ひとっつも面白くねーぞ?」
「ぼ、ぼ、ぼ・・・・・」

「おい、いいか、人様に迷惑をかけちゃいけねーんだよ。小学生でも知ってんだろ?そしてお前のしていることは完全な迷惑行為だ。分かったな」
 
俺は目に力を入れると、よーく念押ししてやった。
俺の切れ長の目に力が入ると三白眼になって迫力が出るって山田が言ってたしな。

「ヒィィィ・・・」
「わ・か・っ・た・な?」 
「・・・わ、わ、わ、分かりましたぁあ~~~」

「好きなら、相手の嫌がることするなよな」

俺は、すっかり小さくなったバケツ野郎の頭に手を置いてちょっと撫でてやった。
優しく微笑んでやる。ほんとだぞ?
説教するときは飴と鞭が大事だよな。

「ひっ」と声にならない声をあげてバケツ野郎はますます縮こまった。
なんだか気を失う寸前の人みたいに見えるが、まあ、気のせいだろ。
これだけ優しく言ってやったんだからな?
 
「あとな、使ったバケツはきちんと片付けろ」


有意義な話し合いができてよかった。
バケツ野郎のストーカー行為もしばらくは落ち着くだろう。
すっきりとした気分で教室に戻り、急いで弁当をかっこんだ。



4組の教室から、

「富山が2行以上喋った」
「姫のバックに富山がついた」
「富山に無礼を働いたモブが成敗された」

などと、勝手な情報が撒き散らされたことを、笑い死にしそうになっている山田に聞かされ、苦虫を噛み潰したような顔だとさらに爆笑されたのは、また別の話だ。


___________________________________

お読みいただきまして、ありがとうございました。
お気に入りに入れてくださった方が、20名様もいらっしゃいます。
ありがとうございます。心から感謝しています!

次回から、勇太のターンに移ります。

あと、お知らせです。

これまで、毎日昼の12時配信とさせていただいていました。
これは私がお昼休みに読んでね♡と勝手に考えまして、設定していました。
(つまり、私が毎日昼休みにBL小説を読んでるってことですね)

しかし、その時間の更新では修正作業(趣味の校正)ができないことがわかりました。
誰にも、問題ないかもしれませんが、勝手ながら、次回から0時の更新とせていただきます。
よろしくお願いします。

【ちょっとCM】
もしよろしければ、拙作エッセイ「藍音のたわごと」もご覧ください。
趣味の校正作業について、書いてます。
あと、作者と勇太のやりとりもあちこちに出てきます。

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