13 / 54
13 壮介
しおりを挟む
新年になって、姫からあけおめスタンプが送られてきて、俺もそれに対して当たり障りのないスタンプを返した後は特にメッセージのやり取りもなく。
新学期が始まり、相変わらず姫と俺は週2の体育の授業で顔をあわせる程度の距離感が続いていた。
ひとつ変わったことといえば、顔をあわせると嬉しそうに挨拶してくれるようになったくらいかな。
姫が俺に向かって微笑むとか、尊すぎて俺はその度に平静を保つためにいつも以上に無表情になってしまう。
俺だって、俺だって、可愛く笑って挨拶してみたいんだよ!
ちょっと、無理だが。
4組のバケツ男にもきっちり説教してやった。
誰だか名前もわからないから、新学期早々の昼休みに教室に俺から会いに行ってやったんだ。
「おい、お前」
「ひっ・・・!柔道部の富山・・・くん!!」
バケツ男は俺に水をかけてから俺の顔を見ては逃げ回っていたが、そうは問屋がおろさない。
「人に迷惑をかけちゃダメだろ」
「ご、ごめんなさい、僕、富山くんに水をかける気なんてなかったんだ」
「いや、そういう問題じゃないから。俺じゃなくても真冬に水をかけるとかありえないんだよ」
本当に危ないところだった。
勇太に水がかかっていたらと思うと、むしゃくしゃして思わず睨みつける。
「ヒイイ」
バケツ男からは声にならないような悲鳴のような声が漏れ出した。
「いや、冬とかいうそういう問題じゃねえだろ。人様に水をぶっかけるとか、お前のやってることはイジメじゃないのか?」
「イジメなんてそんな・・・僕は、本当に白石くんのことが・・・」
「あとな、お前誰に断って白石のモノを確認しようとかしてんだよ、この変態」
「そんな、僕は変態なんかじゃ・・・」
いや、お前自覚ないのかよ。立派な変態さんだぞ。
「勝手なことしてんじゃねーぞ」俺だって見たことないんだぞ。
「勝手って・・・?」
バケツ男が戸惑ったような顔をする。
どう捉えたらいいのか、混乱し出したようにあちこちに目を泳がせ始めた。
ムカつく。俺は声を低くして念を押すことにした。
「あ゛~?本人が嫌がってんのにダメだろ?お前、ストーカーか?」
「ぼ、僕は純粋な気持ちで・・・」
「はああ?純粋?純粋ってなんだよ?蜂蜜か?笑わせんな。ひとっつも面白くねーぞ?」
「ぼ、ぼ、ぼ・・・・・」
「おい、いいか、人様に迷惑をかけちゃいけねーんだよ。小学生でも知ってんだろ?そしてお前のしていることは完全な迷惑行為だ。分かったな」
俺は目に力を入れると、よーく念押ししてやった。
俺の切れ長の目に力が入ると三白眼になって迫力が出るって山田が言ってたしな。
「ヒィィィ・・・」
「わ・か・っ・た・な?」
「・・・わ、わ、わ、分かりましたぁあ~~~」
「好きなら、相手の嫌がることするなよな」
俺は、すっかり小さくなったバケツ野郎の頭に手を置いてちょっと撫でてやった。
優しく微笑んでやる。ほんとだぞ?
説教するときは飴と鞭が大事だよな。
「ひっ」と声にならない声をあげてバケツ野郎はますます縮こまった。
なんだか気を失う寸前の人みたいに見えるが、まあ、気のせいだろ。
これだけ優しく言ってやったんだからな?
「あとな、使ったバケツはきちんと片付けろ」
有意義な話し合いができてよかった。
バケツ野郎のストーカー行為もしばらくは落ち着くだろう。
すっきりとした気分で教室に戻り、急いで弁当をかっこんだ。
4組の教室から、
「富山が2行以上喋った」
「姫のバックに富山がついた」
「富山に無礼を働いたモブが成敗された」
などと、勝手な情報が撒き散らされたことを、笑い死にしそうになっている山田に聞かされ、苦虫を噛み潰したような顔だとさらに爆笑されたのは、また別の話だ。
___________________________________
お読みいただきまして、ありがとうございました。
お気に入りに入れてくださった方が、20名様もいらっしゃいます。
ありがとうございます。心から感謝しています!
次回から、勇太のターンに移ります。
あと、お知らせです。
これまで、毎日昼の12時配信とさせていただいていました。
これは私がお昼休みに読んでね♡と勝手に考えまして、設定していました。
(つまり、私が毎日昼休みにBL小説を読んでるってことですね)
しかし、その時間の更新では修正作業(趣味の校正)ができないことがわかりました。
誰にも、問題ないかもしれませんが、勝手ながら、次回から0時の更新とせていただきます。
よろしくお願いします。
【ちょっとCM】
もしよろしければ、拙作エッセイ「藍音のたわごと」もご覧ください。
趣味の校正作業について、書いてます。
あと、作者と勇太のやりとりもあちこちに出てきます。
新学期が始まり、相変わらず姫と俺は週2の体育の授業で顔をあわせる程度の距離感が続いていた。
ひとつ変わったことといえば、顔をあわせると嬉しそうに挨拶してくれるようになったくらいかな。
姫が俺に向かって微笑むとか、尊すぎて俺はその度に平静を保つためにいつも以上に無表情になってしまう。
俺だって、俺だって、可愛く笑って挨拶してみたいんだよ!
ちょっと、無理だが。
4組のバケツ男にもきっちり説教してやった。
誰だか名前もわからないから、新学期早々の昼休みに教室に俺から会いに行ってやったんだ。
「おい、お前」
「ひっ・・・!柔道部の富山・・・くん!!」
バケツ男は俺に水をかけてから俺の顔を見ては逃げ回っていたが、そうは問屋がおろさない。
「人に迷惑をかけちゃダメだろ」
「ご、ごめんなさい、僕、富山くんに水をかける気なんてなかったんだ」
「いや、そういう問題じゃないから。俺じゃなくても真冬に水をかけるとかありえないんだよ」
本当に危ないところだった。
勇太に水がかかっていたらと思うと、むしゃくしゃして思わず睨みつける。
「ヒイイ」
バケツ男からは声にならないような悲鳴のような声が漏れ出した。
「いや、冬とかいうそういう問題じゃねえだろ。人様に水をぶっかけるとか、お前のやってることはイジメじゃないのか?」
「イジメなんてそんな・・・僕は、本当に白石くんのことが・・・」
「あとな、お前誰に断って白石のモノを確認しようとかしてんだよ、この変態」
「そんな、僕は変態なんかじゃ・・・」
いや、お前自覚ないのかよ。立派な変態さんだぞ。
「勝手なことしてんじゃねーぞ」俺だって見たことないんだぞ。
「勝手って・・・?」
バケツ男が戸惑ったような顔をする。
どう捉えたらいいのか、混乱し出したようにあちこちに目を泳がせ始めた。
ムカつく。俺は声を低くして念を押すことにした。
「あ゛~?本人が嫌がってんのにダメだろ?お前、ストーカーか?」
「ぼ、僕は純粋な気持ちで・・・」
「はああ?純粋?純粋ってなんだよ?蜂蜜か?笑わせんな。ひとっつも面白くねーぞ?」
「ぼ、ぼ、ぼ・・・・・」
「おい、いいか、人様に迷惑をかけちゃいけねーんだよ。小学生でも知ってんだろ?そしてお前のしていることは完全な迷惑行為だ。分かったな」
俺は目に力を入れると、よーく念押ししてやった。
俺の切れ長の目に力が入ると三白眼になって迫力が出るって山田が言ってたしな。
「ヒィィィ・・・」
「わ・か・っ・た・な?」
「・・・わ、わ、わ、分かりましたぁあ~~~」
「好きなら、相手の嫌がることするなよな」
俺は、すっかり小さくなったバケツ野郎の頭に手を置いてちょっと撫でてやった。
優しく微笑んでやる。ほんとだぞ?
説教するときは飴と鞭が大事だよな。
「ひっ」と声にならない声をあげてバケツ野郎はますます縮こまった。
なんだか気を失う寸前の人みたいに見えるが、まあ、気のせいだろ。
これだけ優しく言ってやったんだからな?
「あとな、使ったバケツはきちんと片付けろ」
有意義な話し合いができてよかった。
バケツ野郎のストーカー行為もしばらくは落ち着くだろう。
すっきりとした気分で教室に戻り、急いで弁当をかっこんだ。
4組の教室から、
「富山が2行以上喋った」
「姫のバックに富山がついた」
「富山に無礼を働いたモブが成敗された」
などと、勝手な情報が撒き散らされたことを、笑い死にしそうになっている山田に聞かされ、苦虫を噛み潰したような顔だとさらに爆笑されたのは、また別の話だ。
___________________________________
お読みいただきまして、ありがとうございました。
お気に入りに入れてくださった方が、20名様もいらっしゃいます。
ありがとうございます。心から感謝しています!
次回から、勇太のターンに移ります。
あと、お知らせです。
これまで、毎日昼の12時配信とさせていただいていました。
これは私がお昼休みに読んでね♡と勝手に考えまして、設定していました。
(つまり、私が毎日昼休みにBL小説を読んでるってことですね)
しかし、その時間の更新では修正作業(趣味の校正)ができないことがわかりました。
誰にも、問題ないかもしれませんが、勝手ながら、次回から0時の更新とせていただきます。
よろしくお願いします。
【ちょっとCM】
もしよろしければ、拙作エッセイ「藍音のたわごと」もご覧ください。
趣味の校正作業について、書いてます。
あと、作者と勇太のやりとりもあちこちに出てきます。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!
時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」
すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。
王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。
発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。
国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。
後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。
――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか?
容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。
怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手?
今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。
急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…?
過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。
ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!?
負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。
-------------------------------------------------------------------
主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる