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10 壮介

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「あの!山田くんに聞いて来たんだ。今日、きちんとお礼を言おうと思って、富山くんのことを探したけど、休んでるって聞いて、それで!」

勇太が焦ったように話し出す。邪魔とは言え姉貴がいなくなると二人きりになってしまう。
嬉しいけど、き、緊張する・・・

「家まで来るとか、図々しいかなって思ったけど、心配で。俺のせいで熱まで出させちゃって、本当に申し訳ない。山田くんが家を教えてくれたから、お邪魔しちゃって・・・」

そうか、山田、良い仕事したな。
俺は、山田が大切なペットボトルのお茶を飲んでしまったことを許してやることにした。
 
「これ、お見舞い。何が好きか分からなかったから、定番にしてみた」

勇太がぐいっとコンビニ袋を差し出した。
 
「病気の時にはプリンかなと思って。違う?オレだけ?」
 
勇太はくしゃっと笑うとコンビニ袋からいくつかプリンを取り出した。
窓から日が射して勇太の髪を明るく照らす。きらきら後光が差しているように見える。
それは俺だけ?それとも誰の目にも見えるほど輝いているんだろうか・・・?

「オレは硬いのとか好きだけど、富山くんはどっち派?プリンは硬い方?柔らかい方?」

俺はバリバリ甘党だ。なんなら生クリームのかかっている柔らかいプリンとかが大好きだ。

「今、食べる・・・?」
 
勇太の大きな瞳が揺らめいた。
なんでそんなに綺麗なんだ?
右手に固めのプリン、左手に柔らかい生クリームの乗っているプリンを持っている。
もしかして天使?それとも俺を堕落に落とそうとする淫魔?
どっちでもいい。俺はきみのなすがまま♡
ピンク色の唇が俺を誘惑するように曲線を描いた。

「どっちにする?」

どしゃーー!!
それって、それって。『プリンそれとも勇太』的な?
勇太一択でお願いします。

「固いの?それとも・・・こっちの柔らかいの・・・?」

だ、大丈夫すぐに硬くなるから、君のそばにいるだけでボクは、ボクは・・・・・・じゃなくて!

「し、白石も・・・食べろよ」
 
お、俺頑張った。頑張った理性。
俺は勇太に固い方のプリンを押し返し、ひったくるようにして柔らかい生クリームのせのプリンを奪った。
 
「お、俺はこっちで良いから」
 
ぺりぺりとプリンの容器の蓋を剥がし、プリンにぱくついた。ん、うまい。安定の旨さだ。
普段食べてるもの口にすると冷静になるって、あるよな?
プリン、プリン。俺が食べてるのはプリン。
プリンだっつったら、プリンだっつーの!!
勇太は俺がプリンを食べる姿を見ると、ほっとしたような息を吐き、自分もプリンを食べようとした。
が、その時ふと気がついたらしい。

「ねえ、本当にそっちでよかった?固い方が美味しくない?」

固い方が美味しい・・・・
固い方が美味しい・・・・
固い方が美味しい・・・・

ぐらぐらぐらぐらぐるぐるぐるぐる。
俺の頭の中ではあらぬ妄想がぐるぐる渦を巻き始めた。
やめてくれ、本体がここに居るんだ。やばいだろう、本当に。
やめてくれ!変態さんだと思われてしまう。
 
昨夜のスケスケ姫の妄想をよりリアルに思い出しそうになったところで、必死に押し返す。
大好きだけど、大好きだけど!!!

頼む、今は引っ込んでてくれ!

(そして、できれば、あとでお願い)


___________________________

お読みいただき、ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

ちなみに、私は固いプリンのほうが好きです。
皆さんは、どっち派ですか?
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