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第?章 暴虐のサムルトーザ
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覇王サムルトーザが求めたのは、強さではなかった。
深い沼の底から突然沸き上がった泡沫のように、いつしか彼は異世界クルプトに存在していた。生まれつき備わっていた本能にも似た嗜虐心の赴くまま、彼はクルプトにいる人間を、切り裂き、刻み、殺し尽くした。結果、クルプトの世界人口の実に半分は、サムルトーザによって滅ぼされた。
腰に二本、背中には四本の剣を背負い、鎧ではなく着物のような軽装である。古代中国の宰相に似た出で立ちであったが、それはサムルトーザが実戦で、より素早く動けるように求めた結果だ。顔立ちこそ若いが、その相は邪悪そのものを具現化したかのように、口は頬まで裂け、目はつり上がり、額には爬虫類の如き第三の目がある。
「魔王サムルトーザ! これ以上の非道は許さん!」
魔王。超越者。邪悪。様々な呼ばれ方をした。実際の所、自分がどういった種族に属するのか明確に認識できてはいなかったが、彼にとっては瑣末なことだった。とにもかくにも、人間はサムルトーザをそのように呼び、怒りを募らせては、自らの元を訪れる。こちらから赴く手間が省けて、結構なことだと思っていた。
「クルプト十二聖騎士が最後の一人! グウェイ=セリウス参る!」
相打ちの覚悟か、剣を上段に構えて突進してくる人間の戦士に対し、ぬらりと腰の剣を抜く。第三の目で、数十もの斬撃の軌道を事前に予見し、戦士の攻撃を紙一重で躱す。それと同時に、一閃。剣を持ったままの敵の腕を切り飛ばし、あっという間に勝負は付いた。
それでもサムルトーザは剣を鞘に仕舞わない。倒れた戦士に近付くと、無防備な足に剣を振り下ろす。
絶叫する戦士。サムルトーザは更にもう一本の足も、ゆっくりと切り落としていく。
「た、助けてくれ……! お願いだ……!」
一刻前までの勢いが嘘のよう。戦士は幼子のように泣いて、命乞いをしていた。
「ひは……! ひはははははは!」
覇王サムルトーザが求めたのは、強さではなかった。己の欲望のままに、無抵抗な人間の体をバラしていく。泣き叫ぶ声を少しでも長く聞く為に、じわり、じわり。
サムルトーザの本質は残虐。強さはただ彼に付随しただけ。それでも、彼の強さは、異世界クルプトを崩壊させる程に圧倒的であった。
強さを求めることには興味がない。だが、弱き者の哀れな姿を見る時の快感は全てに勝った。
今日もサムルトーザは人間の血煙と阿鼻叫喚の中を嗤いながら進む。ただ、己の嗜虐心を満たす為に――。
それは端の見えない漆黒の長卓だった。周囲は薄暗く、先の方は全く窺い知れない。卓の端に近付く程に闇は深くなっている。
かろうじて見える周囲に、異形の者達が卓の色と同じ漆黒の椅子に腰掛けていた。
「……あぁ?」
サムルトーザは間の抜けた声を発してしまう。自分は今、クルプトにある人類最後の砦と呼ばれる大陸へ向かっていた筈。なのに、これは一体どうしたことか。
「チッ」と、サムルトーザは舌打ちする。幻術か? しかし、いつ掛けられた? 魔法だろうが幻術だろうが、攻撃が発動する前は『気』が動く。それを自分に全く感知させないとは。
周りには凄まじいオーラが満ちている。だが、サムルトーザに恐怖はない。それどころか、久方ぶりに心地良い緊張を感じていた。
(いる。暗黒の力を持った者達が。しかも複数)
軽く腰を上げて、背中の鞘に手を伸ばした時。
「覇王サムルトーザ。そう構えないで頂きたい」
長卓の奥から、氷のような女の声がした。サムルトーザはその方向を窺うが、女の姿は闇に閉ざされて輪郭すら見えない。
「仲間――というのは語弊がありますが、それでも我々はアナタと似た存在なのですから」
サムルトーザは暗闇に目を凝らす。自分をこの妙な空間に招き寄せた手際を考えても、人間や、単なる魔物ふぜいにできる範疇を超えている。
(似た存在ねえ)
「……邪神か?」
ぼそりと呟くように尋ねると、女は少し楽しげに笑った。
「違います。少なくとも今はまだ」
「邪神じゃねえなら、てめえは何だ?」
「時の覇王クロノザと申します。此処は戴天王界。数多に存在する世界を支配した覇王達が集いし時空です」
「世界を支配した覇王達……?」
女の言葉を繰り返しながら、サムルトーザは周囲に最大限の気を巡らせる。かろうじて姿が窺えたのは数名。サムルトーザの近くの席で、泥の固まりのような怪物と、皮膚から骨の見える不気味な女が「ほほほ」と笑っていた。
「世界を我が物にし、生物界の頂点に君臨し――それでも、なお皆様、飢えておられます。『更なる暴力への渇望』……『満ちぬ支配欲』……『永遠の命への執着』……だからこそ、サムルトーザ。アナタも此処に導かれたのです」
サムルトーザは背中の鞘から剣を抜いた。相手が何でも関係はない。上から見下ろすような女の態度が気に食わなかった。
しかし、その刹那。サムルトーザの背後。耳元で囁く声がした。
「もう一度、言います。我々はアナタと似た存在。敵ではありません」
生まれて初めて背後を取られた。『時の覇王』。その二つ名の通り、時間を操るようだ。そんな魔法や術を使う者はクルプトには存在しなかった。
(こんな奴でも邪神には至らないのか)
更にサムルトーザをもってして、驚愕の事実。長卓の更に奥。闇に包まれて見えないが、クロノザとはまた別の威圧感を放つ存在がいる。
サムルトーザは剣を鞘に収める。依然、恐怖はない。ただ、違う世界にはこんな奴らが存在するのかという純粋な好奇心。それがサムルトーザを黙って席に座らせた。
「話を続けましょう。我々の悲願達成には、神の決めた秩序を破壊する――つまり、神界を滅ぼさねばなりません。その為には、我々が更に力を付けて、邪神へと神上がりする必要があります」
いつしか女の声は遠くに離れていた。時の覇王クロノザが語り続ける。
「邪神に神上がりする方法は二つ。いや、我々にとってはたった一つしかありません。それは……」
少しの沈黙の後、時の覇王は言う。
「66666体の神々を殺害することです」
「ふざけてんのか?」
サムルトーザは卓に足を乗せて、吐き捨てるように言った。時の覇王はくぐもった声で笑う。
「冥界の王より聞き及んだ確かなる真実です。しかしながら仰る通り、数万体もの神々を殺すというのは、全く現実的ではありません。要は回数なのです」
その瞬間、時の覇王の冷たい声に、邪悪が更に加味される。
「一柱の神だけを狙い撃ち、その神を66666回殺し続ければ良い」
「……馬鹿げた話だ」
(だが、時間を操るてめえにゃあ、それが可能って訳か)
「これを『可逆神殺の計』と呼びます。女神殺害の実行者は此処に居られる皆様方。そして、その番は公平を期す為、『目玉』によって決められます」
不意に、長卓の見えない位置から、血気盛んな覇王達の声が響く。
「早く目玉を転がせ!」
「回せ、回せ!」
……ことり、と奥の方で音がした。やがて、漆黒の長卓の端に彫られた溝を、陶器の目玉が疾走する。
黒の長卓を二周半して――ようやく目玉が止まったのは、サムルトーザの二つ隣の不気味な女の前だった。
「不死公ガガ。頼みましたよ」
時の覇王の声の後、
「ほほほほほほほほほほほ!」
女は、けたたましい笑い声を上げた。ガガが席を立ち、サムルトーザの背後を通る。瞬間、サムルトーザは察知する。
まるで生命を感じない。アンデッド……いや、絡繰り人形のよう。実体はおそらく別の空間にある。更に――。
(全身に武具を隠してやがる)
ガガがくるりと向き直り、長卓の覇王達に恭しく頭を垂れる。
「贄たる女神と勇者。すぐに殺して差し上げましょう」
……ことり、と音がした。あの時と同じように、黒の長卓の溝を目玉が転がる。
ガガ、そしてボルベゾの席は、今や空虚な暗闇に支配されていた。目玉の転がる音を聞きながら、サムルトーザは二体の覇王がいた席を楽しげに見やった。
(世界を支配した覇王だと? てめえらの世界は、どれだけ弱い世界だったんだ? てめえらクソと、俺を一緒くたにすんじゃねえ)
そんなことを思いながら、ふと周囲がざわついていることに気付く。
ちらりと前を見ると、サムルトーザの前で、目玉が動きを止めていた。
「暴虐の覇王……!」
「サムルトーザか……!」
周囲の覇王達の息を呑む声が聞こえた。無論、此処にいる誰しも、サムルトーザと一戦交えたことはない。それでも黒の長卓に座る者はすべからく、世界統一の覇王達である。サムルトーザの纏う覇気が必殺のオーラに満ちていることを感じていた。
時の覇王の声が響く。
「覇王サムルトーザ。アナタならば、可逆神殺の計の終焉に相応しい。勇者と女神の首を。そして我らの悲願を」
ふん、と鼻を鳴らして、サムルトーザは立ち上がる。
(永遠の命が得られるってんなら、やる価値はある。まだまだ俺ァ、楽しみてえからなあ)
ガガにボルベゾ。かつて世界を牛耳っていた超越者が連続で返り討ちにあった。『勇者と女神は繰り返しの時を知悉している』――どうやらそのことに疑いはなさそうだ。追い詰められた鼠の、死に際の抵抗だと、クロノザは言っていたが……とにもかくにも、可逆神殺の計が終わりに近付いているのは間違いない。
(ってことは、今この現状も、既に繰り返しの時空の中に含まれているのか)
だが、時の覇王ですら、それを完全に把握することはできないと言う。ならば、考えるだけ無駄というものだろう。
(ま、俺ァ、楽しめりゃあそれで良い)
神の放つ光とは別種の青白く不気味な光に包まれ――サムルトーザは戴天王界から姿を消した。
深い沼の底から突然沸き上がった泡沫のように、いつしか彼は異世界クルプトに存在していた。生まれつき備わっていた本能にも似た嗜虐心の赴くまま、彼はクルプトにいる人間を、切り裂き、刻み、殺し尽くした。結果、クルプトの世界人口の実に半分は、サムルトーザによって滅ぼされた。
腰に二本、背中には四本の剣を背負い、鎧ではなく着物のような軽装である。古代中国の宰相に似た出で立ちであったが、それはサムルトーザが実戦で、より素早く動けるように求めた結果だ。顔立ちこそ若いが、その相は邪悪そのものを具現化したかのように、口は頬まで裂け、目はつり上がり、額には爬虫類の如き第三の目がある。
「魔王サムルトーザ! これ以上の非道は許さん!」
魔王。超越者。邪悪。様々な呼ばれ方をした。実際の所、自分がどういった種族に属するのか明確に認識できてはいなかったが、彼にとっては瑣末なことだった。とにもかくにも、人間はサムルトーザをそのように呼び、怒りを募らせては、自らの元を訪れる。こちらから赴く手間が省けて、結構なことだと思っていた。
「クルプト十二聖騎士が最後の一人! グウェイ=セリウス参る!」
相打ちの覚悟か、剣を上段に構えて突進してくる人間の戦士に対し、ぬらりと腰の剣を抜く。第三の目で、数十もの斬撃の軌道を事前に予見し、戦士の攻撃を紙一重で躱す。それと同時に、一閃。剣を持ったままの敵の腕を切り飛ばし、あっという間に勝負は付いた。
それでもサムルトーザは剣を鞘に仕舞わない。倒れた戦士に近付くと、無防備な足に剣を振り下ろす。
絶叫する戦士。サムルトーザは更にもう一本の足も、ゆっくりと切り落としていく。
「た、助けてくれ……! お願いだ……!」
一刻前までの勢いが嘘のよう。戦士は幼子のように泣いて、命乞いをしていた。
「ひは……! ひはははははは!」
覇王サムルトーザが求めたのは、強さではなかった。己の欲望のままに、無抵抗な人間の体をバラしていく。泣き叫ぶ声を少しでも長く聞く為に、じわり、じわり。
サムルトーザの本質は残虐。強さはただ彼に付随しただけ。それでも、彼の強さは、異世界クルプトを崩壊させる程に圧倒的であった。
強さを求めることには興味がない。だが、弱き者の哀れな姿を見る時の快感は全てに勝った。
今日もサムルトーザは人間の血煙と阿鼻叫喚の中を嗤いながら進む。ただ、己の嗜虐心を満たす為に――。
それは端の見えない漆黒の長卓だった。周囲は薄暗く、先の方は全く窺い知れない。卓の端に近付く程に闇は深くなっている。
かろうじて見える周囲に、異形の者達が卓の色と同じ漆黒の椅子に腰掛けていた。
「……あぁ?」
サムルトーザは間の抜けた声を発してしまう。自分は今、クルプトにある人類最後の砦と呼ばれる大陸へ向かっていた筈。なのに、これは一体どうしたことか。
「チッ」と、サムルトーザは舌打ちする。幻術か? しかし、いつ掛けられた? 魔法だろうが幻術だろうが、攻撃が発動する前は『気』が動く。それを自分に全く感知させないとは。
周りには凄まじいオーラが満ちている。だが、サムルトーザに恐怖はない。それどころか、久方ぶりに心地良い緊張を感じていた。
(いる。暗黒の力を持った者達が。しかも複数)
軽く腰を上げて、背中の鞘に手を伸ばした時。
「覇王サムルトーザ。そう構えないで頂きたい」
長卓の奥から、氷のような女の声がした。サムルトーザはその方向を窺うが、女の姿は闇に閉ざされて輪郭すら見えない。
「仲間――というのは語弊がありますが、それでも我々はアナタと似た存在なのですから」
サムルトーザは暗闇に目を凝らす。自分をこの妙な空間に招き寄せた手際を考えても、人間や、単なる魔物ふぜいにできる範疇を超えている。
(似た存在ねえ)
「……邪神か?」
ぼそりと呟くように尋ねると、女は少し楽しげに笑った。
「違います。少なくとも今はまだ」
「邪神じゃねえなら、てめえは何だ?」
「時の覇王クロノザと申します。此処は戴天王界。数多に存在する世界を支配した覇王達が集いし時空です」
「世界を支配した覇王達……?」
女の言葉を繰り返しながら、サムルトーザは周囲に最大限の気を巡らせる。かろうじて姿が窺えたのは数名。サムルトーザの近くの席で、泥の固まりのような怪物と、皮膚から骨の見える不気味な女が「ほほほ」と笑っていた。
「世界を我が物にし、生物界の頂点に君臨し――それでも、なお皆様、飢えておられます。『更なる暴力への渇望』……『満ちぬ支配欲』……『永遠の命への執着』……だからこそ、サムルトーザ。アナタも此処に導かれたのです」
サムルトーザは背中の鞘から剣を抜いた。相手が何でも関係はない。上から見下ろすような女の態度が気に食わなかった。
しかし、その刹那。サムルトーザの背後。耳元で囁く声がした。
「もう一度、言います。我々はアナタと似た存在。敵ではありません」
生まれて初めて背後を取られた。『時の覇王』。その二つ名の通り、時間を操るようだ。そんな魔法や術を使う者はクルプトには存在しなかった。
(こんな奴でも邪神には至らないのか)
更にサムルトーザをもってして、驚愕の事実。長卓の更に奥。闇に包まれて見えないが、クロノザとはまた別の威圧感を放つ存在がいる。
サムルトーザは剣を鞘に収める。依然、恐怖はない。ただ、違う世界にはこんな奴らが存在するのかという純粋な好奇心。それがサムルトーザを黙って席に座らせた。
「話を続けましょう。我々の悲願達成には、神の決めた秩序を破壊する――つまり、神界を滅ぼさねばなりません。その為には、我々が更に力を付けて、邪神へと神上がりする必要があります」
いつしか女の声は遠くに離れていた。時の覇王クロノザが語り続ける。
「邪神に神上がりする方法は二つ。いや、我々にとってはたった一つしかありません。それは……」
少しの沈黙の後、時の覇王は言う。
「66666体の神々を殺害することです」
「ふざけてんのか?」
サムルトーザは卓に足を乗せて、吐き捨てるように言った。時の覇王はくぐもった声で笑う。
「冥界の王より聞き及んだ確かなる真実です。しかしながら仰る通り、数万体もの神々を殺すというのは、全く現実的ではありません。要は回数なのです」
その瞬間、時の覇王の冷たい声に、邪悪が更に加味される。
「一柱の神だけを狙い撃ち、その神を66666回殺し続ければ良い」
「……馬鹿げた話だ」
(だが、時間を操るてめえにゃあ、それが可能って訳か)
「これを『可逆神殺の計』と呼びます。女神殺害の実行者は此処に居られる皆様方。そして、その番は公平を期す為、『目玉』によって決められます」
不意に、長卓の見えない位置から、血気盛んな覇王達の声が響く。
「早く目玉を転がせ!」
「回せ、回せ!」
……ことり、と奥の方で音がした。やがて、漆黒の長卓の端に彫られた溝を、陶器の目玉が疾走する。
黒の長卓を二周半して――ようやく目玉が止まったのは、サムルトーザの二つ隣の不気味な女の前だった。
「不死公ガガ。頼みましたよ」
時の覇王の声の後、
「ほほほほほほほほほほほ!」
女は、けたたましい笑い声を上げた。ガガが席を立ち、サムルトーザの背後を通る。瞬間、サムルトーザは察知する。
まるで生命を感じない。アンデッド……いや、絡繰り人形のよう。実体はおそらく別の空間にある。更に――。
(全身に武具を隠してやがる)
ガガがくるりと向き直り、長卓の覇王達に恭しく頭を垂れる。
「贄たる女神と勇者。すぐに殺して差し上げましょう」
……ことり、と音がした。あの時と同じように、黒の長卓の溝を目玉が転がる。
ガガ、そしてボルベゾの席は、今や空虚な暗闇に支配されていた。目玉の転がる音を聞きながら、サムルトーザは二体の覇王がいた席を楽しげに見やった。
(世界を支配した覇王だと? てめえらの世界は、どれだけ弱い世界だったんだ? てめえらクソと、俺を一緒くたにすんじゃねえ)
そんなことを思いながら、ふと周囲がざわついていることに気付く。
ちらりと前を見ると、サムルトーザの前で、目玉が動きを止めていた。
「暴虐の覇王……!」
「サムルトーザか……!」
周囲の覇王達の息を呑む声が聞こえた。無論、此処にいる誰しも、サムルトーザと一戦交えたことはない。それでも黒の長卓に座る者はすべからく、世界統一の覇王達である。サムルトーザの纏う覇気が必殺のオーラに満ちていることを感じていた。
時の覇王の声が響く。
「覇王サムルトーザ。アナタならば、可逆神殺の計の終焉に相応しい。勇者と女神の首を。そして我らの悲願を」
ふん、と鼻を鳴らして、サムルトーザは立ち上がる。
(永遠の命が得られるってんなら、やる価値はある。まだまだ俺ァ、楽しみてえからなあ)
ガガにボルベゾ。かつて世界を牛耳っていた超越者が連続で返り討ちにあった。『勇者と女神は繰り返しの時を知悉している』――どうやらそのことに疑いはなさそうだ。追い詰められた鼠の、死に際の抵抗だと、クロノザは言っていたが……とにもかくにも、可逆神殺の計が終わりに近付いているのは間違いない。
(ってことは、今この現状も、既に繰り返しの時空の中に含まれているのか)
だが、時の覇王ですら、それを完全に把握することはできないと言う。ならば、考えるだけ無駄というものだろう。
(ま、俺ァ、楽しめりゃあそれで良い)
神の放つ光とは別種の青白く不気味な光に包まれ――サムルトーザは戴天王界から姿を消した。
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