上 下
38 / 47

Another Day 1〜2

しおりを挟む

 飛行艇を着陸させると、タラップにて草原に降りてくる透達一行だが、そこにリザード族のヌータウが声をかける。

「オマエ、スゴイ、アンナ、マホウ、ミタコトナイ」
「私もびっくりしたわよ! 爆弾よ、爆弾」
「いやまあ、調子に乗ってあれ使っちゃったからさあ、まあしばらくここの世界にいないといけないわ、飛行艇一旦ナノマシンズに戻すからな」

 そう言って、透はアリスに頼む。アリスは飛行艇を光の粒子に変えて、霧散させる。

「とりあえず、暫くは襲ってこないんじゃない? アイツらも?」
「アア、タスカッタ、アリガトウ」
「で、どうするのだ?」

 ペギーがこれからの行動を透に聞いてくる。透は、

「まあ今日は、よかったらヌータウさん、みんなで泊めてもらえたりします?」

 そう聞くと、ヌータウは、カマワンと言って、みんなで集落へと戻ることになった。
 集落に戻ると、男衆何人かが、ティピーの様なテントを建ててくれ、透とアリス、ナインの三人とアライア親子、そして桜達三人と3つに別れて泊まる事になった。
 その夜は、リザード族の勝利の宴にお呼ばれし夜遅くまで騒いで食べて、寝床に入るのだった。

 次の日、透たちはテントから出てくると、川に向かい、顔を洗ったり、体を吹いたりした後、一旦集まった。

「取り敢えず、一日経ったけどアリス、むこうの世界の時間差はどうだ?」

『はいマスター、こちらとの時間差は若干向こうのほうが遅く、向こうはまだ半日が経過したところです。私達のこちらでの滞在しなければいけない時間は計算上、後3日は必要です』

「と言う事で、どうする? つっても南は悪魔族いるし、北か東か」
「白狼族さん、会ってみたいです!」
「そうね、ユイちゃんの親戚みたいなもんだしね」
「でもどうするでござる? この間のよんだぶるでぃーとか言う乗り物ではこの人数乗れないでござろう」
「そうよね、バスよ! バス」
「いや、道よくないからな。四駆がいいんだよな」

 暫くは考えた透だったが、ふと思い出したかのようにアリスに告げる。

「XC90 北欧のメーカーのやつ、創れるかな?」

『はいマスター、データにあります。サーフとバイク4台リセットしますが、よろしいでしょうか?』

「いいよ、お願いする」

 アリスはテントの外の広いところでナノマシンズを集積させる。小さな光の点が集まりだし、自動車の形を創り出す。そして一際光が強くなり、それは現れた。VOLVOフラッグシップ7人乗りSUV XC90である。

 「うわー、かっこいい! 未来の車なのこれ? ピカピカしてる! 外車よ!外車!」

 21世紀の車に興奮して大はしゃぎの桜をなだめつつ、

「こだわってハイブリッドにしてみました。T8ツイン……なんとかだ!」

『ツインエンジンインスクリプションです。マスター』

「それだ!」
「透! ハイブリッドって何?」
「あそうか、ここにいるみんな、知らんのか。エンジンだけではなくモーターで電気でも走るのだ!」
「えー! そっかだからツインなのね」「んだんだ」

 他の連中はポカーンだったが、何やらすごいことはわかったようだ。

「さっ、乗った乗った。一番後ろはユイとナインかな、少し狭いから」
「なんか高級感漂うのです」「さーふとは違うでありんす」
「やっぱり外車は違うわね」

 桜は助手席に、アリエルはやはり屋根にアライアとペギーは後部座席と定位置に乗り込んだ。

「それじゃあ、ヌータウさんありがとうございました! 止めてまでもらってすいません! また近くに来たらよりますんで!」
「コチラコソ、タスケテ、クレテ、アリガトウ、イツデモコイ」

 リザードマン達に挨拶をして透は運転席に乗り込み、センターコンソールにあるボタンを押しスタートさせる。

「えー、ボタンなの? スゴイ! ていうか何これ、画面よ! テレビみたいよ!」

 二十世紀の人間にはすべてが驚きのようだったが、後ろもみんなもびっくりしていた。

「それは地図なのか? トール、映し出されているのは?」
「そうそう、アリスが探索してたやつを入れてもらったんだ」

 そう言いながら透は車をスタートさせる。モーターでスルスルと動き出し、桜はまたびっくりする。

「音もなく動いたわ!」

 森の民の命の森だから、排気ガスを出したくなかった透の配慮だった。しばらくモーターで走り、森を抜けるとアクセルを踏み飲む、すると軽い音と共にエンジンがかかった。

「エンジンかかったのね、静かだわ! さすが外車」

 桜は未来の車に感心していた。サンルーフを開け、アリエルに声をかける。

「屋根でいいのか? 中でもいいんだぜ?」
「風が気持ちいいのでござる、精霊が喜んでいるでござるよ」
「そっかー、んじゃ、飛ばしますか」

 透たちを乗せた車はスピードを上げ北を目指す。北側は草原の先に高い山脈があり、その麓に白狼族は住んでいるという。ナビを頼りに一行はその集落を目指すのだった。
 しばらく何事もなく順調に道は進み、ちょっと大きめの川の辺りに差し掛かり、ちょうどいいかと昼食休憩にすることにした。

「疲れたー! 材料出すから、桜作ってよ!」
「いいわよ、なんかせっかくだからバーベキューとかしたいわよね、牛肉あるんでしょ」
「いいね! 材料とアウトドア用品一式出すぜ」

 透は自分の亜空間バッグからテーブル、バーベキューコンロ、ガスボンベ、イス、牛肉とアーカンディアで買った野菜一式を出した。ついでにアリスに頼んでコーラを創ってもらった。

「やっぱ炭酸ほしいよな、あと、ナイン、簡単でいいから風呂造って! 入りたいのよ日本人としては」

〈よいでありんすか三人くらい入れるやつ造るでありんす〉

 ナインは浴場造りを始め、桜はユイとバーベキューの用意を始めた。透は疲れていたので、車のシートを倒し寝ていた。
 しばらくして、肉の焼けるいい臭いがし始める。寝ていた透も匂いにつられ、起き上がり車を降りてくる。

「ひゃー、美味そう!」

 串に刺さった玉ねぎ、肉、トマト、ピーマン等の色とりどりの食材がいい具合に焼けてなんとも言えないシズル感である。テーブルにはポテトサラダが皿に盛られていた。

「ポテトサラダ? 作ったの? 桜?」
「マヨネーズと卵もらったしね、じゃがいももきゅうりも透の食材にあったわよ」
「まあなんでも突っ込んでは置いたけど、やるね!」
「バカにしないでよ! 家は私が料理してんのよ!」
「あそうでした。すいません」
「私も手伝ったのです!」
「ユイ、かあーいーかあーいー」

 そんなこんなで準備ができみんなが集まってきた。ナインはまたペギーと風呂作り終え、エルフ親子は散策から戻ってきた。

「特に危険はないようでござるよ」
「あ、ありがとう、すまねえ、寝てて」
「いいでござるよ、一人で動かすほうが大変でござろう」

 透が自分だけ寝ていたのを謝ると、アリエルにそう労われた。

「んじゃ、ご飯食って、風呂ですかね!」
「そうね、さ、食べて、食べて!」

 桜は焼けたバーベキューからどんどんサラに置いていく。みんなでそれを手に取り食べ始める、

「あー、美味しいですわ! 色々な味がしますわ!」

 アライアが感嘆の声を上げる。使ったのはみんな知ってる王道の黄金のタレなのだが、アーカンディアの人たちには食べたことのない複雑な美味しさであった。

「やっぱり黄金のタレ最強だな!」
「確かにね、美味しいわよね」
「このサラダも美味しいな、サクラよ。ジャガラがこんなに美味しくなるとは」
「ティリリさんに感謝ね、マヨネーズと卵もらえたし」
「この飲み物、凄いです! シュワシュワするです! 甘いです」

 コーラもアーカンディアの住人には初めての体験だったようで、好評だった。
 楽しい昼食が終わり、透は久しぶりの風呂に入り、さっぱりして出てきた。

「あーやっぱり、風呂いい!」

 おっさんである。腰に手を当て牛乳を飲む姿も様になっていた。他のみんなも代わる代わる入っていった。

「ナインありがとな、いつもわりーな」

〈わちきもはいるでありんすから、いいのでありんす〉

「そうそう、みんな一緒よ!」

 そう言って腰に手を当て牛乳を飲む櫻とユイであった。

「お前らもかい!」

 久しぶりのツッコミのあと、他の人たちが風呂から上がり、体を休ませてから再び、目的地へと車を走らせる透であった。
 途中、林の中でテントを張って一泊し、山々が間近に見えるところまで来ていた。

「もうすぐ、山麓だな、優しい人たちならいいんだけどなあ」
「それって、透の言う、フラグってやつじゃない? どうせやっかいごとに巻き込まれんでしょう、透の事だし」
「なのです」
「だろうな」
「でござる」
「ですわね」
「ありんす」

『はいマスター』

「えええ、アリスまで言う!」

 なぜか、冗談に聞こえない透であった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。 ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。 この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。 「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」 ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。 十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。 森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。 庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。 レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。 成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。 そして――。 魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。 絶望と悲しみに打ちひしがれる……… 事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。 「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」 十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。 実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。 「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」 しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。 レイの気になっている事とは―? 食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉ 縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。 全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。 あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。 様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。 その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう? と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。 なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。 そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。 すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。 ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて... 異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。 ☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...