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Another Day 1 【しつこいのはお断り】
しおりを挟む「オサ! アクマガセメテキタ!」
「おっと、大丈夫かい?」
透は悪魔が気になりヌータウに尋ねた。
「イツモノコトダ、ダガ、ミナヲヒナンサセネバ、ニーヨル、ミナヲイツモノ、トコロへ」
「ワカッタ」
「オマエタチハ、アノノリモノニ、モドレ」
「ああ、わかった! みんな一旦飛行艇に!」
透が亜空間ゲートを開き、みんなを飛行艇に戻らせる。
「本当に大丈夫かい?」
「アア、マカセロ」
「んじゃ、危なかったら助けに入るから」
そう言い残し、透もゲートをくぐった。
それから飛行艇を起動し空へと浮かび上がり森を抜けてリザードマンが言う温かい方、地球で言う南へと向かう。
しばらく進むと森の突端で戦闘が行われているのを見つけた。
「あそこだわ!」
「そのようだ、ござるさん、一応屋根でライフルを待機しといてくれないか?」
「わかったでござる」
そう言ってアリエルは飛行艇の上にはしごを登っていく。
「しっかし、あれか? ホントに悪魔っぽいな黒っぽいし、コウモリみたいな羽根で飛んでるし」
「地上にもなんかいるぞ、トールよ」
「確かに、ありゃワニだな。でっかいけど、やっぱ黒いし。でも弓矢では大変そうだけどな」
「あー見てくださいです! 長のひとがでっかい火の玉出したです! なんかとかげみたいになったです」
「あれはサラマンダーですわ。火の精霊ですわよ」
「わーホントだわ! ワニ対トカゲね」
火の精霊はワニを一瞬で焼き尽くした。空を飛ぶ敵にはリザードマン達の矢が飛んでいく。
「あー、一人だけ、人間ぽいのいるな、空飛んでるやつに」
「本当だわ、女性っぽいわよ、あれ? こっち見た? 透、今こっち見たわよ! この船って迷彩されてるんじゃないの?」
「そのはずだ、アリス、光学迷彩起動してるよな?」
『はいマスター、起動中です。重力制御もされてるので、近づくことは無いと思いますが』
「おいトール、なんか魔法を打ってきたぞ!」
魔族からの攻撃が飛行艇へと向かってくる。
「おーっとまず! ナイン防御して!」
〈ラジャでありんす、出よ、光の障壁!〉
ナインが詠唱すると、飛行艇の前に光の壁が現れ、魔族の放った攻撃魔法が吸収される。
「おお、スゴイ! 光魔法とか使えるのね、ナインすごいすごい」
「相手が闇属性の攻撃だったでありんす、光で相殺したのでありんす」
「そうなんだなー、やっぱり魔法ってすげーんだな、えらいえらい」
(トール殿、威嚇射撃するでござるか?)
アリエルからの通信が入る。
「いや、待って。変に目立たないほうがいいだろう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「メディウス様! 我々の魔法が相殺されました!」
「ああ、見たことない魔法だったねえ。やっぱりあそこになんかあるんじゃない? 見えないけどさあ」
悪魔族のメディウスは、すぐそばの何もない空間に妙な違和感を感じ、手下に攻撃魔法を使わせたのだがどこからか放たれた魔法により消えてしまった事に驚いた。自分たち悪魔族以外で属性魔法を使える物を見たことがないのだ。
「お前たち! 下のトカゲ共にもだけどさ、あそこにもシャドウアローを撃ち続けるんだよ!」
「はっ! 仰せのままに!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ありゃ、また撃って来るんか! しょうがねーな、一回話を聞いてくるか」
「えー! 透! あの人のところに行く気?」
「ちょっくら聞いてくるよ、なんで襲ってくるのか、理由あるかもしれないし」
「普通、行かなくない?」
「もしかしたらさ、正当な理由あるかもしれないだろう」
透はそう言うと亜空間ゲートを開く。すぐに亀裂に飛び込むと、先程の女性ぽい悪魔のそばに亀裂が入る。
「何だって言うんだい、空が割れる?」
メディウスが近くの空間に突然入ったヒビに驚いた。そしてそこから透が顔を覗かせる。
「こんちは! ねえねえ、君って何でリザード族の集落に攻撃してんの?」
いきなり出てきた人の頭に驚いて、そしてしゃべった事にも吃驚したメディウスは、声を出せなかったが、気を取り直し、
「あんた何者だい、見たことない顔だねえ、そんなの面白いからに決まってるだろう、たかがトカゲじゃないかい、殺したっていいだろう」
「あー、だめなやつだ、これ。お前、ほんとに悪魔だな、リザードマンだって生きてんだぞ!」
「うるさいねえ」
そう言ってメディウスは、魔法を放つ。
「漆黒より出よ、影の矢よ!シャドウアロー!」
「うおっと、ヤベ」
透はゲートを閉じる。
「やべえ、やべえ。全然言うこと聞かないわ、やっぱ悪魔だわ。よしではうちらも攻撃開始だ! ござるさんお願いします!」
「オッケーでござる」
アリエルは、ライフルを伏射で構え狙いをつける。セミオートでタタタッと小気味よい振動とともに徹甲弾が撃ち出されると空中を飛んでた悪魔族が一人二人と羽を撃たれ落ちていく。
「お前たち! シャドウウェアを使いな、ある程度は防げるはずだよ!」
「はっ! 漆黒の衣、我が身に纏え、シャドウウェア!」
手下の悪魔たちが黒い靄のようなものを全身に巡らすと、存在が曖昧になり、アリエルの撃つ光の弾が屈折したように逸れてしまう。しかし、何発に一回かも割合でダメージを受けているようだった。
「あっちの防御もすべては受けきれてないな」
透は向こうが防御魔法を使ったのを見て、そう呟く。
〈こっちもそろそろまずいでありんす。魔力切れしそうでありんす〉
ひとりで悪魔族の魔法を防いでいたナインが疲れた表情でそう答える。
「マジか! ごめんごめん、アリス、こいつの武装ってなんか使えるかい?」
『現在、バルカン砲のみ使用可能です。ナノエネルギーミサイルは一発だけ撃てます』
「そうか、ではナノミサイルをあいつらのど真ん中に撃とう、あいつらでもこれは回避できないだろう」
『ナノエネルギー装填開始、しばらくの間、転移不可能、光学迷彩も解除されます。防御に徹してください。』
「女王様、すいませんがお願いします!」
アライアに防御魔法をかけてもらうよう、透は頼んだ。
「わかりましたわ、光に精霊よ、我の声に答え顕現しこの船を守り給え!」
アライアの詠唱により、光の精霊が、飛行艇の前に大きな女神の姿で現れる、女神が大きく手を広げると、悪魔族の闇の矢が女神の前で消えていく。
「何やってるんだい! せっかく相手の姿が見えたのに、今が好機なんだよ!」
メディウスは、すぐに詠唱を始める。ナノマシンズの圧縮に入っている飛行艇は迷彩も解かれ、無防備に姿を晒している。ここしかないと魔法を放とうとしたその瞬間、
『ナノエネルギーミサイル、発射! 目標悪魔族』
充填が完了し高圧縮されたナノマシンズの塊が飛行艇より放出された。光の尾を引いて、またたく間にあくまでの集団の中心に到達する。
「こりゃまずいわね! お前たち! 至急転移しろ! 退却だ!」
メディウスはナノエネルギーミサイルをみて、退却を決めたが、ときすでに遅く爆発が起こる。物凄い轟音と共に炸裂したエネルギーは、ほとんどの悪魔族をふっ飛ばす。ギリギリで闇の空間に逃れたのはメディウスと数人程度であった。
「覚えておれ! 忘れないからねえ!」
捨て台詞を残し、悪魔族は闇の空間を使い転移して行った。
「いや、危ねー、しつこいの嫌い!」
「でもこれで助かったわね、女王様、ありがとうございます」
「それほどでもありませんわ、アリエルも頑張ったわよ」
「んだんだ、ナインもアリスも良くやった!」
みんなで無事を喜びながら、リザード族の兵の前に飛行艇を降ろすのだった。
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