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Day 7 【不思議TOKYOシンデレラ】いつもより長めの口づけが切ない
しおりを挟む透たちが隊商の近くまで来ると、怪我をしている者たちの治療でわたわたしている桜たちが見えた。
「桜ー! そっちは大丈夫だったか?」
「大丈夫じゃないわよ! けがしてる人の手当を手伝ってよ!」
「それもそうだな、アリス、治療できるか?」
『この世界の人の複製はできませんが、私たちの世界の薬と治療は可能です』
「なんか魔素だかが干渉するんだっけか? それでいいからやってくれるか?」
『はいマスター』
透が、怪我している人たちを一ヶ所に集めると、アリスはその人たちの中心に浮かび、全体を光の中に包んでいった。各人の怪我の状態などを調べ、適切な治療を施していく。
その怪我人の一人が、
「精霊様の治療魔法……」
と呟くと一同みんなが崇めるようにひれ伏した。
「何これ、宗教か何か?」
「いや普通、精霊が姿を現したら、こうだぞ、トールよ」
「え? くっころさんもござるさんも普通じゃん?」
「拙者はエルフ故、いつも精霊様とともにいるので御座る。今も周りにいるのでござるよ」
確かに、アリエルの周りに時折白く光るモヤのようなものが見える。
「そうなんだ、でもくっころさんは?」
「私は、言ってなかったが、精霊と人間のハーフなのだ、人間寄りのだがな」
「衝撃の事実キター! そうなんだスゲー! って精霊って人間と暮らせるの?」
「我々の一族は今、帝国があるところに小さな国を作って住んでいたんだ。そこは森が近いから精霊との繋がりが強くてな、ごく稀に妊娠した女性のお腹には入ってしまう事があるのだ。そして精霊と一体になった子供を出産する。そういう子供は強い精霊の加護を持つんだ。私がそうなのだが、もうその国は帝国に滅ぼされた。生きているのは私独りだ」
「すまん、突っ込んだ事聞いて悪かった」
「いや大丈夫だ」
「ほんとに透ってデリカシーないわね、で悪者はどこに行ったのかしら?」
「なんか帝国に帰ったみたいだぞ。あそうだ、この馬車に何を積んでるんだいったい? それ目的ぽかったぞ」
「この隊商の責任者はいるか! 私はマーガレット・タイタス・サツキ 王都中央騎士団第一隊隊長だ!」
そう告げると、一人の騎士が立ち上がる。
「私はヘイアの町の領騎士隊のエリックと言う、我々は王都の中央研究所に研究成果を検証してもらうため移動中だったのだ」
「なあなあ、研究してたのってこれ? ふた空いてるけど?」
透は倒れた馬車から棺桶のようなものが出ているのを発見する。フタがずれて中身が見えている。
「なんだと! まずい目がさめる前にフタを閉めないと!」
「もう遅いかも?」
フタがガタガタと崩れ落ち、中から10才くらいの女の子が立ち上がる。そして徐ろに透にキスをした、ディープな方である。
「ななな! 何やってんのよ!」
桜が顔を真っ赤にしてスタン銃を透に討つ。
「うぎゃあ!」
透が気絶寸前で踏みとどまる。
「何すんだよ! あぶねえよ! しかも俺不可抗力だろ! ていうかこの子何者?」
〈ワタシハナナゴウジッケンノダイキュウシケンタイデス〉
「な? 機械みたいな話し方だね?で、なぜキスした!」
〈キスハワカリマセンガメズラシイマソダッタノデキュウシュウシマシタ、ナゼカタイナイデゾウショクシテイマス〉
「おいおい、何なの? 人間ではなさそうだな」
「しまった! 起動している、申し訳ないが、君も一緒に王都に来てくれないか?」
「いや俺たちも王都には行くけど、なんで?」
「これは我々の研究所で創り出したホムンクルスなんだ。起動したときに魔素を与えた者の命令を聞くように創られている、よって君の命令しか聞かないのだ。一緒にきてほしい」
「えええ! マジで? 面倒なことになっちまったな」
「透らしいわ、面倒ごとのほうがほっとかないわね本当に」
「なのです」
「でござるな」
「まったくだ」
「ハーレムに憧れとかないんですけど! でもホムンクルスってことは人工生命体なのか? ある意味アリスと一緒だな」
「そうね、私達にとっては珍しくもないわ」
「なな、なんと! こちらの精霊様がホムンクルスですと! 我々の百年の研究が無駄なのですか?」
「いやいや、若干違うから! 本当の意味での生命じゃないし! 十分すごいよ、生き物を作るって」
『そうですね、私の能力でも生命体は作れませんから』
「アリスちゃんでもできないことあるんだ?」
「そうだぜ。体は作れても命は作れないんだぜ」
「なんであんたが偉そうなのよ!」
「まあまあ、んでもどうする? 俺たちのほうがかなり速く着くぜ、王都に」
「国王に謁見した後で落ち合えば良いのではないか?」
「そうだな、じゃあエリックさん、先に王都に行ってるから着いたら冒険者ギルドにでも連絡してくれ」
「そうか、我々もヘイジョーで馬を調達したら急いで向かおう」
「んじゃそういう事で」
と、透達が別れようとすると、ホムンクルスの彼女が一緒に着いてきた。
「ん?なんで?」
〈ワタシハマスタートイッショニイク〉
「それは君の言う事しか聞かん、一緒に連れて行ってほしい」
「んにゃ、そうか、別にござるさん屋根だし座れんだろ」
「そうね、じゃあ一緒に行きましょう、セブンオブナイン」
「出た! ここでスタトレネタ入れて来る?」
「だって名前ないと呼びにくいでしょう」
そんなやり取りをしながら透達は4WDを造り出し、乗り込んでいった。
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