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新しい同居人がやってきた
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「ねこ」
「だめ」
「いぬ」
「だめ」
「とり」
「だめ」
「むぅ」
「だめだよ」
リンが口を尖らせている。
いつものように客の気配がない喫茶店『小道』。
カウンターを挟んでリンが口を尖らせてユウをジト目でみている。言葉を重ねるたびに口の尖りが鋭さを増していくようだ。
ユウはユウで困った顔をしながらも、少し眉の端がピクピクとしている。
「じゃあ、うさぎ」
「だめ」
「それじゃあ……」
「リン、ここは喫茶店だよぅ、生き物は飼えませんよぅ」
「むぅ」
いつになく強硬な姿勢のリンに、ユウはとまどいを隠せない。
リンがその手に握り締めているのは先日パティとトリシャが持ってきた帝都で発行されている雑誌。
この世界では製紙技術が割りと発達していて、本や雑誌の発行は盛んに行われている。
といっても高くはないものの安くはない。
それはともかく、その雑誌が問題だった。
今回の雑誌の特集は「街角、あなたのペット自慢」。
帝都に住む人の自慢のペットが肖像画付で沢山載っている。
猫や犬をはじめ、ねずみだのうさぎだの、果ては牛のような大きな動物まで載っていた。
パティやトリシャと一緒になって目をきらきらさせて雑誌に見入っていたリン。
その時から、なんとなくいやな予感はしていたものの、ユウはこうもその予感が的中するとは思っていなかった。
「一応ね、飲み物食べ物をお客さんにだすところだから、あんまりね」
「お客いないもん」
「うっ……」
リンが口を尖らせて、いよいよ頬も膨らんできて、ぷいっとしながらユウの痛いところを突いてくる。
「なんで?」
「なんでって……」
「お客いないし、大丈夫」
「リン……」
ユウには苦笑いすることしかできない。
ユウとしても動物を飼うことにはやぶさかでない。ただ、以前に助けた鳥のような事だってある。
『小道』は近くに森もあるのだから、もし仮に猫や犬を飼ったとして、店から出て森に迷い込んでしまったりしたら、またリンに同じような思いをさせてしまうのではないか、とユウは思ってしまう。
リンがその辺りの事をちゃんとわかって言ってるのか、ただ今だけの感情で言ってるのか、ユウには図る事ができないでいた。
それからリンは何かにつけ猫か犬か、あるいは様々な動物のよさをユウに訴えてくる。
その手には必ずあの雑誌が握られていた。
ユウは毎度受け流すが、その度にリンは口を尖らせるのであった。
*
「ペット、ですか?」
コーヒーに口つけながらフーディが首をかしげる。
昼下がり、太陽が高く昇って照り付けてくるから夏のように暑い。
時折吹いてくる風が木々を揺らす音だけが、涼しさを感じさせてくれる。
「そうなんですよ、もう何日も……」
「ふむ。いっそ飼って見るのもいいかもしれませんよ? リンリンがそこまで何かにこだわった事ってありましたっけ?」
「うぅん……」
フーディの言うとおり、リンがここまでごねるのは珍しい。
けれど、リン自身もただ漠然と"何か"を飼いたいというだけで、具体的にこの動物を、ということはないから、本気なのかそうでないのかもイマイチ判断つけられず、さらにはペットを手に入れるあてもない。
「もしよかったらつてを当たってみましょうか?」
「うーん……じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ははは、問題ありませんよ。それにしても、すっかり僕はユウちゃんの相談役ですねぇ」
「あはは、まぁ、フーディさんくらいですからね、こんなとこに頻繁にくるのは」
「ちょっと引っかかるものがありますが……まぁ、いいでしょう。」
「ふふ、これからもよろしくお願いしますね」
ユウが微笑むと、フーディも上機嫌でうなずくのであった。
*
それから、リンにフーディが伝を当たってくれると話すと最初はぱーっと顔を明るくさせたが、けれどフーディが、ということにリンなりに何かひっかかるものを感じて、次の瞬間には腕組みをして「うーん」と唸った。
「だ、だいじょうぶだよ、きっと」
「そうかな?」
「そうだよ、うん、ドラゴンとか魔物とかじゃないと思う、よ?」
「そうかなぁ……」
そうはいったものの、ユウもまたリンのように腕組みをしてうーんと唸ってしまった。
フーディのことだから、無茶はしないまでも、奇をてらってくる可能性は捨てきれない。
けれどその期待のような疑惑のような思いはいい意味で裏切られる事になる。
そのとき、ドアベルが鳴って、店の入り口が静かに開いた。
「やぁ、ユウちゃん、こんにちは」
「いらっしゃいませー、あ、フーディさん」
「フーディ!」
フーディの来訪に、リンも珍しくまだ玄関口にいるフーディへ、トテトテと近寄っていく。
なんだかんだで、フーディへの期待はあるらしい。
そのフーディは小脇に小さな何かを抱えていた。
「あ!」
それに気付いたリンが目をキラキラとさせた。
「お約束のものですよー」
「あー! やった!!」
フーディがリンに差し出したそれを確認してリンが歓喜の声を上げた。
フーディが持ってきたものは、フーディの掌よりも少し大きいくらいの子犬だった。
眠っているようだが、リンの声に耳をピクピクとさせている。
「か、か、かわ、かわいい……!」
その愛らしい様子に、思わずリンが目を見開いて、手をわしゃわしゃとさせて寝ている子犬に近づいていく。
その身をぶるぶると震わせて全身で喜びを表現しているかのようだ。
「おやおや……気に入ってくれて大変うれしいのですが……」
リンの豹変ぶりに思わずフーディも後ずさり気味だ。
その気配に気付いた子犬がゆっくりと目を覚ました。ぱちくりと目をさせて、視線を上げるとその先には鬼気迫るリンの顔が。
「うわっ!なんだおまえ!」
「あ」
どこからともなく聞いた事のない女性の声が響く。
同時に、フーディが声をあげた。
子犬はフーディの手から跳ねて、宙返りして店の床に着地すると、四肢を踏ん張って謎の声にぽかんとしているリンを睨む。
「さて、用事も済んだし、私はこれで」
「まてよ、フーディ!」
「待ってくださいね、フーディさん」
そそくさと店を出て行こうとしているフーディを二つの声が呼び止める。
そのうち一つは目にも止まらぬ速さでフーディに近づいてその袖を掴んでいた。
リンはまだ固まったままだ。
「はは……いやぁ、まぁ、そういうことで」
なおも店を出ようと一歩踏み出したフーディだったが、ユウが袖をがっちり掴んでいるから進めない。
もう一つの声の主も、ローブの裾を咥えて引っ張っていた。
「説明、してくれますよね?」
フーディがまるでたてつけの悪いドアがギギギと音を出しながらゆっくり開くように、首を回して振り返る。
そこには笑顔のユウが、その後ろになんだか恐ろしい鬼のような幻影を背負った笑顔のユウがいた。
リンは未だ固まったままだ……
*
カウンターの中で仁王立ちするユウ。
その前にはうなだれたフーディと、カウンターの上には同じくうなだれた子犬の姿があった。
その後ろには同じく仁王立ちのリンの姿が。
「この子は……まぁ、古い知り合いの娘さんです……」
「そんな事だと思いましたよ」
「思いましたよ!」
ユウの言葉をリンも復唱する。
「オレは、魔族の中でも誇り高きウォードッグ一族の……」
「聞いてない」
「ええぇ……」
子犬も二本足で立ち上がり胸を張って自己紹介を始めるもリンにピシャリと遮られてしまった。
「はぁ……フーディさんを信じた私がバカだった…」
「バカだった……」
ユウとリンが同時にやれやれと眉間を抑えて首を振る。
「いやいや、僕の話も聞いてくださいよ。流石に飲食店に行き成り生き物を放り込むのもどうかと思いましてね、ならば人語を理解できるほうがいいかと思いましてね。丁度ウォードッグ族の娘が修行にでたいといってたのを思い出したのです。それでこの子を」
「いやいやいや、フーディさん。それじゃあペットになんて出来ないじゃないですか」
「そうですか? 人間に飼われるのもまた修行の一つかと」
「いやいやいやいや、それ以前に、なんで魔族の方と知り合いなのですか、フーディさん」
「細かい事はいいじゃないですか。どうします? 飼います?」
「いやいや……」
ふとカウンターに視線を落とすと、いつのまにやら、子犬が出された菓子とミルクを尻尾をぶんぶん振り回しながら舌鼓を打っている。
「うめぇ、これうめぇ」
カップのミルクを器用になめながら、焼菓子をぱくっと一飲みにしていた。
その姿に思わずユウの頬が一瞬緩みそうになるが、きゅっと引き締めてフーディに向き直る。
「今、にへらっとしましたよね?」
「してません。とにかく飼えませんよ。というか飼うとか失礼ですよ」
「むぅ」
フーディに食って掛かるようにしているユウだったが、一方でフーディは余裕そうな態度で出されたコーヒーを飲んでいる。
「美味しい?」
「あ? ああ、うめぇぜ!特にこの菓子はすげえうめえ!」
「ユウ、飼おう」
ユウとフーディを尻目に子犬があまりに美味しそうに菓子を食べているので、気になったリンは子犬に話しかけている。
菓子を絶賛されて、目を輝かせていた。
「リン……」
はぁ、と大きくため息をつくユウ。
「ほらほら、リンリンもこういってることですし、どうです? 世話の必要もありませんよ、何せ人の言葉がわかりますし」
「そういう問題じゃないんですけどね……」
苦笑してしまうユウ。
いずれにしても、このままこの子犬を飼う、というのには抵抗がある。
しかしながら、少々口の悪そうなこの魔族の子犬とリンはなんだかウマがあうようで、もはやリンはニコニコと子犬と話している。
子犬の方もまんざらではなさそうだ。
「うぅ……とりあえずペットではなく、居候ということなら……」
この日、喫茶店『小道』に新たに居候が増える事になった。
ウォードッグ族の子犬、キャニ。
彼女がユウとリンにもたらす物は何か、それはまだわからない。
有耶無耶のまま居候をさせることになってしまったが、なんとなくユウは楽しくなりそうな気がしていた。
「だめ」
「いぬ」
「だめ」
「とり」
「だめ」
「むぅ」
「だめだよ」
リンが口を尖らせている。
いつものように客の気配がない喫茶店『小道』。
カウンターを挟んでリンが口を尖らせてユウをジト目でみている。言葉を重ねるたびに口の尖りが鋭さを増していくようだ。
ユウはユウで困った顔をしながらも、少し眉の端がピクピクとしている。
「じゃあ、うさぎ」
「だめ」
「それじゃあ……」
「リン、ここは喫茶店だよぅ、生き物は飼えませんよぅ」
「むぅ」
いつになく強硬な姿勢のリンに、ユウはとまどいを隠せない。
リンがその手に握り締めているのは先日パティとトリシャが持ってきた帝都で発行されている雑誌。
この世界では製紙技術が割りと発達していて、本や雑誌の発行は盛んに行われている。
といっても高くはないものの安くはない。
それはともかく、その雑誌が問題だった。
今回の雑誌の特集は「街角、あなたのペット自慢」。
帝都に住む人の自慢のペットが肖像画付で沢山載っている。
猫や犬をはじめ、ねずみだのうさぎだの、果ては牛のような大きな動物まで載っていた。
パティやトリシャと一緒になって目をきらきらさせて雑誌に見入っていたリン。
その時から、なんとなくいやな予感はしていたものの、ユウはこうもその予感が的中するとは思っていなかった。
「一応ね、飲み物食べ物をお客さんにだすところだから、あんまりね」
「お客いないもん」
「うっ……」
リンが口を尖らせて、いよいよ頬も膨らんできて、ぷいっとしながらユウの痛いところを突いてくる。
「なんで?」
「なんでって……」
「お客いないし、大丈夫」
「リン……」
ユウには苦笑いすることしかできない。
ユウとしても動物を飼うことにはやぶさかでない。ただ、以前に助けた鳥のような事だってある。
『小道』は近くに森もあるのだから、もし仮に猫や犬を飼ったとして、店から出て森に迷い込んでしまったりしたら、またリンに同じような思いをさせてしまうのではないか、とユウは思ってしまう。
リンがその辺りの事をちゃんとわかって言ってるのか、ただ今だけの感情で言ってるのか、ユウには図る事ができないでいた。
それからリンは何かにつけ猫か犬か、あるいは様々な動物のよさをユウに訴えてくる。
その手には必ずあの雑誌が握られていた。
ユウは毎度受け流すが、その度にリンは口を尖らせるのであった。
*
「ペット、ですか?」
コーヒーに口つけながらフーディが首をかしげる。
昼下がり、太陽が高く昇って照り付けてくるから夏のように暑い。
時折吹いてくる風が木々を揺らす音だけが、涼しさを感じさせてくれる。
「そうなんですよ、もう何日も……」
「ふむ。いっそ飼って見るのもいいかもしれませんよ? リンリンがそこまで何かにこだわった事ってありましたっけ?」
「うぅん……」
フーディの言うとおり、リンがここまでごねるのは珍しい。
けれど、リン自身もただ漠然と"何か"を飼いたいというだけで、具体的にこの動物を、ということはないから、本気なのかそうでないのかもイマイチ判断つけられず、さらにはペットを手に入れるあてもない。
「もしよかったらつてを当たってみましょうか?」
「うーん……じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「ははは、問題ありませんよ。それにしても、すっかり僕はユウちゃんの相談役ですねぇ」
「あはは、まぁ、フーディさんくらいですからね、こんなとこに頻繁にくるのは」
「ちょっと引っかかるものがありますが……まぁ、いいでしょう。」
「ふふ、これからもよろしくお願いしますね」
ユウが微笑むと、フーディも上機嫌でうなずくのであった。
*
それから、リンにフーディが伝を当たってくれると話すと最初はぱーっと顔を明るくさせたが、けれどフーディが、ということにリンなりに何かひっかかるものを感じて、次の瞬間には腕組みをして「うーん」と唸った。
「だ、だいじょうぶだよ、きっと」
「そうかな?」
「そうだよ、うん、ドラゴンとか魔物とかじゃないと思う、よ?」
「そうかなぁ……」
そうはいったものの、ユウもまたリンのように腕組みをしてうーんと唸ってしまった。
フーディのことだから、無茶はしないまでも、奇をてらってくる可能性は捨てきれない。
けれどその期待のような疑惑のような思いはいい意味で裏切られる事になる。
そのとき、ドアベルが鳴って、店の入り口が静かに開いた。
「やぁ、ユウちゃん、こんにちは」
「いらっしゃいませー、あ、フーディさん」
「フーディ!」
フーディの来訪に、リンも珍しくまだ玄関口にいるフーディへ、トテトテと近寄っていく。
なんだかんだで、フーディへの期待はあるらしい。
そのフーディは小脇に小さな何かを抱えていた。
「あ!」
それに気付いたリンが目をキラキラとさせた。
「お約束のものですよー」
「あー! やった!!」
フーディがリンに差し出したそれを確認してリンが歓喜の声を上げた。
フーディが持ってきたものは、フーディの掌よりも少し大きいくらいの子犬だった。
眠っているようだが、リンの声に耳をピクピクとさせている。
「か、か、かわ、かわいい……!」
その愛らしい様子に、思わずリンが目を見開いて、手をわしゃわしゃとさせて寝ている子犬に近づいていく。
その身をぶるぶると震わせて全身で喜びを表現しているかのようだ。
「おやおや……気に入ってくれて大変うれしいのですが……」
リンの豹変ぶりに思わずフーディも後ずさり気味だ。
その気配に気付いた子犬がゆっくりと目を覚ました。ぱちくりと目をさせて、視線を上げるとその先には鬼気迫るリンの顔が。
「うわっ!なんだおまえ!」
「あ」
どこからともなく聞いた事のない女性の声が響く。
同時に、フーディが声をあげた。
子犬はフーディの手から跳ねて、宙返りして店の床に着地すると、四肢を踏ん張って謎の声にぽかんとしているリンを睨む。
「さて、用事も済んだし、私はこれで」
「まてよ、フーディ!」
「待ってくださいね、フーディさん」
そそくさと店を出て行こうとしているフーディを二つの声が呼び止める。
そのうち一つは目にも止まらぬ速さでフーディに近づいてその袖を掴んでいた。
リンはまだ固まったままだ。
「はは……いやぁ、まぁ、そういうことで」
なおも店を出ようと一歩踏み出したフーディだったが、ユウが袖をがっちり掴んでいるから進めない。
もう一つの声の主も、ローブの裾を咥えて引っ張っていた。
「説明、してくれますよね?」
フーディがまるでたてつけの悪いドアがギギギと音を出しながらゆっくり開くように、首を回して振り返る。
そこには笑顔のユウが、その後ろになんだか恐ろしい鬼のような幻影を背負った笑顔のユウがいた。
リンは未だ固まったままだ……
*
カウンターの中で仁王立ちするユウ。
その前にはうなだれたフーディと、カウンターの上には同じくうなだれた子犬の姿があった。
その後ろには同じく仁王立ちのリンの姿が。
「この子は……まぁ、古い知り合いの娘さんです……」
「そんな事だと思いましたよ」
「思いましたよ!」
ユウの言葉をリンも復唱する。
「オレは、魔族の中でも誇り高きウォードッグ一族の……」
「聞いてない」
「ええぇ……」
子犬も二本足で立ち上がり胸を張って自己紹介を始めるもリンにピシャリと遮られてしまった。
「はぁ……フーディさんを信じた私がバカだった…」
「バカだった……」
ユウとリンが同時にやれやれと眉間を抑えて首を振る。
「いやいや、僕の話も聞いてくださいよ。流石に飲食店に行き成り生き物を放り込むのもどうかと思いましてね、ならば人語を理解できるほうがいいかと思いましてね。丁度ウォードッグ族の娘が修行にでたいといってたのを思い出したのです。それでこの子を」
「いやいやいや、フーディさん。それじゃあペットになんて出来ないじゃないですか」
「そうですか? 人間に飼われるのもまた修行の一つかと」
「いやいやいやいや、それ以前に、なんで魔族の方と知り合いなのですか、フーディさん」
「細かい事はいいじゃないですか。どうします? 飼います?」
「いやいや……」
ふとカウンターに視線を落とすと、いつのまにやら、子犬が出された菓子とミルクを尻尾をぶんぶん振り回しながら舌鼓を打っている。
「うめぇ、これうめぇ」
カップのミルクを器用になめながら、焼菓子をぱくっと一飲みにしていた。
その姿に思わずユウの頬が一瞬緩みそうになるが、きゅっと引き締めてフーディに向き直る。
「今、にへらっとしましたよね?」
「してません。とにかく飼えませんよ。というか飼うとか失礼ですよ」
「むぅ」
フーディに食って掛かるようにしているユウだったが、一方でフーディは余裕そうな態度で出されたコーヒーを飲んでいる。
「美味しい?」
「あ? ああ、うめぇぜ!特にこの菓子はすげえうめえ!」
「ユウ、飼おう」
ユウとフーディを尻目に子犬があまりに美味しそうに菓子を食べているので、気になったリンは子犬に話しかけている。
菓子を絶賛されて、目を輝かせていた。
「リン……」
はぁ、と大きくため息をつくユウ。
「ほらほら、リンリンもこういってることですし、どうです? 世話の必要もありませんよ、何せ人の言葉がわかりますし」
「そういう問題じゃないんですけどね……」
苦笑してしまうユウ。
いずれにしても、このままこの子犬を飼う、というのには抵抗がある。
しかしながら、少々口の悪そうなこの魔族の子犬とリンはなんだかウマがあうようで、もはやリンはニコニコと子犬と話している。
子犬の方もまんざらではなさそうだ。
「うぅ……とりあえずペットではなく、居候ということなら……」
この日、喫茶店『小道』に新たに居候が増える事になった。
ウォードッグ族の子犬、キャニ。
彼女がユウとリンにもたらす物は何か、それはまだわからない。
有耶無耶のまま居候をさせることになってしまったが、なんとなくユウは楽しくなりそうな気がしていた。
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