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王都編

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「そう…ならば形見が命を守ってくれたのですね」

「はい。少々、傷つけてしまいましたが、
 母はシスターに、父から貰ったナイフだと伝えたのだと聞いております」

「まさか…そなたの母の名は…エミリア?」

「え?どうして母の名を・・・」

「やはりか!やはり、そなたは私の息子。エミリアは私の子を宿したまま消息を絶って居たのだな!?」

「どう…言う…事だ?アレクの父親が…王様?!そん・・・なっ」

 ギギギっと効果音が付きそうな感じでバルトは私に顔を向けて来たね。

 私だって戸惑ってるんだけど?

「俺だって『そんな事、有る訳ない』って思ってるぞ。
 確かに母の名はエミリアだけどさ、同じ名前だった…って事も有るだろ?!」

「アレクシス殿、そのナイフを王様に見せて貰えぬだろうか?」

「貴方は?」

「申し遅れました宰相のディラン・マーティン。
 アレクシス殿のナイフに紋章が刻まれておりませんか?」

「・・・刻まれて居ますが…傷ついてるけど良いのですか?」

「構いません」

「・・・判りました…」

 懐をガサゴソと探し鞘に収まった状態のナイフ(本来なら預けなければならないが何事も無く通過して居る)を宰相に渡すと

「間違いなく王家の紋章に御座います」

 と、驚きの答えが返って来た(マジか…)って事は、だからこそ、武器を預ける事なく謁見出来たのか?!

「そうか…間違い無く王家の紋章で有ったか」

「エミリアさんが王都へ行かせ巡り合うようなさったのでしょうね」

「・・・それは無いと思います」

「アレク?」

「母は養母で有るシスターに、
 私を王都へは行かせないで欲しい、
 と願い出て居たそうです。
 ですので王都へ向かわせたと言う考えは違うと思います」

「では何故、王都へ?」

「それは騎士になる為に御座います」

「バルト殿も同じですか?」

「はい。お…私とアレクは幼き頃より剣を合わせては将来、
 騎士になろう…と言いあった仲で御座います」

「長旅で疲れておろう?
 そなたらは騎士になる為の試験を受けに王都を目指して居た。
 途中、令嬢から護衛を頼まれ野盗を殲滅しつつ向かってくれた…
 と言う事で合っておるな?」

「「はい。間違い御座いません」」

「ディラン…2名に客間を使って貰い、試験日までのサポートを・・・」

「承知しました」

 何と…王城での寝起きが決定しまったようだ。

 だが、未だに放心状態なのは俺。

 手元に戻って来たナイフに視線を落とし、王城に描かれた紋章と見比べてみても変化は無い。

 瓜二つの紋章が本当で有ると言う事を雄弁に語って居た。

「アレク…と呼び捨てに出来るのも短いかも知れないな」

「よせやい。俺が王子って器じゃねぇの判ってんだろ」

「くっくっく…確かにな」

「そこ、断言すんじゃねぇよ。地味に傷つく」

 言い合いはすれども内心は不安だらけだ。

 本当に母さんは王様と恋仲だったのか?それを聞く術は…もう残って無い。

 残されて居るのは形見となったナイフ。

 それが王家の品なのだと言われれば否定できないのは判り切って居る。

 それでも平凡な騎士になりたいと思う俺は贅沢なのだろうか?

 ま、悩んでも紋章が変わる訳じゃないからな。

 なるようにしかならねぇな(流石、元オー型・・・楽観的な考えに至ってしまった)
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