再婚いたしました｡…兄弟が出来ました｡双子の兄と弟です｡…正直いらない｡

お父様とお母様｡私は娘ではありませんよ？

｢あらあら四川様｡お久しぶりですわ｣
｢そちらのお嬢さんは？娘さんですか？｣
｢あら｡千夏ちゃんが娘になったら嬉しいけれど残念ながらまだ違うわ｡まだ､ね｣
私はその言葉を聞いてゾッとした｡
あとなんで私はここに…？
あれ？
昴お兄ちゃんのおうちにお泊まりして…記憶が無いぞ？
｢お母様｡私､少し外の空気を吸ってきますね｣
｢1人になっちゃいけないわよ？｣
｢はぁい｣
私はパーティー会場から出るとはぁとため息をついた｡
｢前に…小さい時にもこんなことはやってたけど…さすがに慣れないなぁ｣
こう…知らない人に囲まれるのはちょっと怖いし｡
あと私仕事してないんだけど大丈夫かな｡
白川の従兄弟くんにも何も言ってないし｡
｢一応連絡だけしておくかな…｣
私は持っていたクラッチバッグからスマホを取り出し､ママの携帯に繋げた｡
｢もしもし？ママ？｣
『千夏｡どうしたの？』
｢あ～なんか昴お兄ちゃんのとこに泊まったら帰れそうになくなったから…｣
『まぁ｡…本当に計画してたのね』
｢計画？｣
『なんでもないわ｡千夏ももう16だものね｡…そうよね』
なんかママ1人で納得してる｡
『裕翔さん達には私から話しておくから千夏はゆっくりしてなさい』
｢え…いや…私帰りたいんだけど｣
『まぁまぁ』
プチッと電話が切れた｡
嫌な予感しかしないんですけど…｡
とりあえず…帰るか｡
着てきた服だけ回収して…｡
私は住居の方へ移動した｡

｢千夏｡どこ行く気だ？｣
｢家｡帰るの｣
｢…母は帰さないつもりだぞ？｣
｢ふぅん…ってなんで昴お兄ちゃんがいるの！？｣
｢廊下を通っていくお前を見かけたからな｡俺とお前を結婚させてお前を本当の娘にするつもりのようだ｣
｢いや…無理｣
｢こっちから願い下げだ｣
昴お兄ちゃんと結婚？
無理無理無理｡
まず昴お兄ちゃんのこと好きっちゃ好きだけどそれは幼い時から一緒にいたお兄ちゃんへの愛情…みたいな感じだし｡
恋愛感情になるなんてことは一切ない｡
それに昴お兄ちゃんと結婚なんてことになったら学校のみんなが怖い｡
生徒も教師も世間の目も｡
｢…先生と生徒の恋愛は禁止だよ｣
｢恋愛じゃなくて見合いだろ｣
そうともいえる｡
｢じゃあとにかく私は帰るから｡またいつものところに振り込んどいてね｣
｢表まで送る｡どうせタクシーで帰るんだろ？｣
｢うん｡お金は無駄にあるから｣
昴お兄ちゃんは当たり前のように私の荷物を持ってくれた｡
｢今日の服は洗って返すね｣
｢返さなくていい｡どうせ千夏しか着ないんだから｣
｢…こんなブランド服貰えないよ｣
｢社長なんだからパーティー用のドレスの1着くらい持っとけ｣
…絶対これ私が持って帰るって言わない限り終わらない会話だ｡
そうこうしているうちに表の門まで辿り着いた｡
｢送ってくれてありがとう｣
｢いや…千夏が帰った云々より帰っていく千夏を送らないと母に殺される｣
｢…そうだね｣
マナーとかには厳しいもんね｡
私にはちょこっとだけ甘くなるけど｡
私はスマホを取り出すとタクシーを呼んだ｡
｢…あ｡そうそう｡来週家庭科でマフィン作るからな｣
｢げっ!!作ったことないよ!!｣
｢ちなみに俺はゲスト講師で参加するからな｡小さい頃から食べてるから味にはうるさいぞ？｣
｢まじで！？｣
…それは困る｡
ママ…マフィンなんて作ったことあるのかな｡
タクシーが来ると昴お兄ちゃんは私の荷物を先に入れてくれた｡
｢じゃあな｡また明日｣
｢うん｡ありがと｡あともう少し甘めに見てくれない？｣
｢無理だ｣
…しょぼん｡
私はタクシーへ乗り込み家へ帰った｡

その時は気づかなかった｡
私も昴お兄ちゃんも｡
私達以外の第三者がいたことを｡