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私と兄様は先生に呼び出されて先生の執務室へ入った。
「お二人はとても能力が高いようで…」
「兄様。エルお腹空いた」
「うん。あとでおやつ食べようね。でも今は先生のお話聞けるかな?」
「エルのお腹優先!!」
「…わかったから。先生、クッキーか何かありませんか?」
先生は無言でクッキーを差し出した。
「うわぁい!!」
「エル。淑女らしく」
「エルはエルだも~ん」
私はクッキーを口いっぱい頬張った。
「…先生、すみません。話を続けてください」
「はぁ…いや、あの…そちらのエルーシア嬢の力はなんでしょうか?」
「…エルの力?エルの力はエルがにいに教えてもらったやつだよ?」
「…エル。にいってのが誰かはまだ教えてくれないの?」
「にいはにいだもん」
「…そう」
兄様は悲しそうな目で笑った。
…どうしてそんな顔するの?
「…お二人なら聖剣にも認められるでしょうね」
…聖剣?
「聖剣ってなんですか?」
兄様が聞いてくれた。
「聖剣エクスカリバーのことです。昔はダンジョンの中にあったのですが…およそ8年ほど前にダンジョンごと崩壊し今は地に落ちたガラスで出来た部屋の中に台座ごと置いてあります。その聖剣を引き抜けるかどうかというのを魔法科では必ず行うのですよ」
…聖剣…引き抜く…ガラスの部屋。
エルがいたところ…。
「…エル?顔色悪いよ?」
「…エルの」
「ん?」
「エルのおうち…エルの聖剣…人間になんて渡さない…絶対に…」
「…エル!!」
兄様は私の前で手をパンと合わせた。
その音で私は正気になった。
「…兄様?」
「よかった。元に戻ったね。…エルは聖剣のことになるとおかしくなるから…」
…聖剣。
「兄様…エル…聖剣のとこ行きたい」
「…先生。そこへはいつ?」
「来月です。他の子にはまだ内緒にしていてくださいね」
「…兄様」
「うん。一緒に行こうね」
兄様は私の意図を汲み取ったのか手を握って笑いかけてくれた。
にいがいる。
帰れる。
兄様と一緒に。
…父様や母様も一緒に行けたらな。
みんな一緒に住めたらな。
いいのにな。
「お二人はとても能力が高いようで…」
「兄様。エルお腹空いた」
「うん。あとでおやつ食べようね。でも今は先生のお話聞けるかな?」
「エルのお腹優先!!」
「…わかったから。先生、クッキーか何かありませんか?」
先生は無言でクッキーを差し出した。
「うわぁい!!」
「エル。淑女らしく」
「エルはエルだも~ん」
私はクッキーを口いっぱい頬張った。
「…先生、すみません。話を続けてください」
「はぁ…いや、あの…そちらのエルーシア嬢の力はなんでしょうか?」
「…エルの力?エルの力はエルがにいに教えてもらったやつだよ?」
「…エル。にいってのが誰かはまだ教えてくれないの?」
「にいはにいだもん」
「…そう」
兄様は悲しそうな目で笑った。
…どうしてそんな顔するの?
「…お二人なら聖剣にも認められるでしょうね」
…聖剣?
「聖剣ってなんですか?」
兄様が聞いてくれた。
「聖剣エクスカリバーのことです。昔はダンジョンの中にあったのですが…およそ8年ほど前にダンジョンごと崩壊し今は地に落ちたガラスで出来た部屋の中に台座ごと置いてあります。その聖剣を引き抜けるかどうかというのを魔法科では必ず行うのですよ」
…聖剣…引き抜く…ガラスの部屋。
エルがいたところ…。
「…エル?顔色悪いよ?」
「…エルの」
「ん?」
「エルのおうち…エルの聖剣…人間になんて渡さない…絶対に…」
「…エル!!」
兄様は私の前で手をパンと合わせた。
その音で私は正気になった。
「…兄様?」
「よかった。元に戻ったね。…エルは聖剣のことになるとおかしくなるから…」
…聖剣。
「兄様…エル…聖剣のとこ行きたい」
「…先生。そこへはいつ?」
「来月です。他の子にはまだ内緒にしていてくださいね」
「…兄様」
「うん。一緒に行こうね」
兄様は私の意図を汲み取ったのか手を握って笑いかけてくれた。
にいがいる。
帰れる。
兄様と一緒に。
…父様や母様も一緒に行けたらな。
みんな一緒に住めたらな。
いいのにな。
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