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「ターシャ様。最後にこちらをお付けください」
「えっと…クリスタル?でも魔力が入ってる…」
「魔力石だそうです。毎日身につければターシャ様の無くなってしまった魔力も回復するだろうと王子様が…」

クリスタルを身につけたら魔力が回復する…
そんなことが起こるのかな…

「いえ。魔力石も高価なものでしょうし。付けられません」
「王子様からのご命令です。付けてください。私共が罰せられてしまいます」

またも攻防戦が勃発した。

私達の魔石もかなり高いものなのに…
クリスタルって高価な鉱石よね?
それに魔力をこめて魔力石にするって…

「ターシャ。付けてくれないのか?」
「殿下…私には勿体ないです」
「アムシトラスからも言われたんだ。
もし出来るのならターシャの魔力を回復させてやってくれ
とな」
「アム…が?」
「どうする?付けるか?」
「…付けます…それと…アムは今どこにいるのです!?」
「もう街を出たよ。数日後には国も出ると思う」

私はクリスタルを握りしめて走った。

アム…伝言だけ残していなくならないでよ…
私のこと拾ってくれたんでしょ?
ご主人様なんでしょ?
私はご主人様のためだけにいるのよ…

「ターシャ様。どこへお出掛けで?」
「出してください!!アム様の…ご主人様の所に行くんです!!」
「ダメです。殿下の許可をもらってきて下さい」

私は門番にそう止められた。
門は固く閉じられていて私1人じゃ開けられない気がする。

でも…猫の私なら…
私は門から少し離れて助走を付けて飛んだ。

「嘘だろ…」

私は軽々と門を超え向こう側に着地した。

お父さんから習った飛び方…上手く出来るようになった…

私はすぐに立ち上がって走った。

数分もすると見覚えのある後ろ姿を見つけた。

「アム様!!」
「…ん?ターシャか…ダメじゃないか。城にいないと」
「アム様は私のご主人様です!!連れていってください!!」
「ダメだ。どうせアンジェリーには会ったんだろ?」
「…はい」
「アンジェリーは俺と同じ転生者だ。それとお前は…2年後攫われるべき姫…猫の里のターシャ。アンジェリーと俺はこの先の未来を知っている。だから協力してターシャを城に送ったんだけどな…失敗したか」

何を言っているのか分からない…

「アム様は私がそんなに弱いと思ってるの!!」
「魔王の前では人は誰もが無力だ。勇者でもなければな…」
「勇…者…」
「…その勇者が誰だかは…名前は分かってるんだが居場所が分からない。だから今から探しに行くんだ。2年後のために一刻も早く見つけないといけないんだ」
「アム様がなさることではありません!!」
「人の話を聞いてなかったのか?未来を知っているのは俺とアンジェリーだけだ。アンジェリーはまだ7歳だろ?長旅なんて出来るわけないし俺がやるしかないんだ。俺は…本来勇者の師となる者だからな。弟子を見つけてやるのは当然だ」

アム様がいなくなるなんて嫌だ…
2度も捨てられるなんて…

「じゃそういうわけだ。じゃあな。運が良ければ会えるさ」
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