空は青いか?

乱川 カナト

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スカイフリューゲル

#8

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「え...」
 突然後ろから肩を叩かれた冠崎は後ろを振り向く。するとそこには鋭い目付きの見覚えのある顔が立っていた。
「秋月...先輩?」
「そうだ」
「えーと...」
「冠崎、その名前を背負う者なら分かるはずだ」
  廊下の隅から覗き見していた四阿は、肩をがっくりと落とす。先程まで念入りに作戦内容の確認をしていたにも関わらず、見事台無しにしたからだ。
「はぁ。奏はやっぱり強引だなぁ」
 廊下の壁に寄りかかり天井を見上げる。四阿はフッと笑うとあとを追いかけるようにして2人の元へ向かった。
「ごめんね奏が迷惑かけたみたいで」
「......四阿」
「奏に任せっきりだと危なっかしくてね。君が冠崎さんかな?」
「は、はい」
 どこか見覚えのあるその顔に四阿と冠崎は一瞬ハッとなるが隣で腕を組んでる秋月に気付き、続きを話す。
「奏が君の事追いかけ回してるのは理由があるんだ」
「理由って?」
「弱小高校のスカフリ部を優勝に導いた伝説の人。その人の名前が君と同じ冠崎って人でね」
「今年は必ず優勝しなきゃ意味が無い。だから僕はアンタに入ってもらいたいんだ」
 四阿が話す伝説のマネージャーである「冠崎」は、当時弱小だったくまたか高校のスカフリ部でその腕前を発揮し見事優勝に導いたとの事だった。
 口数の少ない奏に代わり丁寧に説明する四阿を見て何となく、冠崎は2人の関係を窺い知ることが出来た。
「私の名前がそんな意味のある物だったなんて」
「考えてみろ。名前に冠が入ってるだろ。それは即ち王が手にする王冠と相違ない」
「奏はだからね」
「......」
 王冠の無い王様。
 どこかで聞き覚えのあるその肩書きに彼女は考え込みやがて思い出したかのように手を叩いて言った。
「もしかして、2年前の夏の大会で─」
「無駄話はどうでもいい。入るのか入らないかだけ言え」
 遮るようにして入部するかどうするかを催促してきた秋月に冠崎はたじろぐが、2人の肩を軽く叩き四阿が言う。
「まっ、実際僕らの練習見ないとわかんないだろうし。まずは見学って事でいいんじゃないかな」
 その言葉には「焦らなくていい」という意味合いも込められていた。その意図を汲み取ったのか鋭い目付きが怯える彼女と余裕の笑みを浮かべる銀髪の彼を交互に見て、
「5分後に部室で」
 そう言って立ち去っていくのだった。
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