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やっと6歳
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国王陛下のお言葉が終わると、居心地の悪いパーティーが始まりました。
張りつめた空気の中、順に王太子へお祝いを述べていきます。相変わらずの痛いような視線の中、攻略対象の姿を探しました。間違っても接触しないように、です。
じっと王太子の前に並ぶ人々を見ていたら、父が解説してくれました。
まず初めに挨拶したのが、レイモンド・グランツ・ジスティリア大公閣下。ゲーム主人公レイチェルの父ですね。まだ独身のはずですが、立場的に出席しているのでしょうか。
『違うな。カーラを見に来たのだ』
相変わらず不機嫌そうにオニキスが言いました。
なるほど。大公家は初代モノクロード王と共に、この国を立ち上げた立役者ですからね。「王家の剣」と称される立場から、私を品定めしに来たのでしょう。
次にトリステン公爵と、その御令息であるアレクシス。攻略対象ですね。彼は私と同じ6歳ですが、すでにツンの気配を醸し出しています。そして彼の姉上が王太子の婚約者で、王太子の側に並んで祝辞を受けています。
あと2家、公爵の位を賜っていますが、どちらも御令嬢で8歳、10歳と年齢的にも関係なさそうなので省略。さらに上に御令息もいますが、そちらはもう婚約者がいますし大丈夫でしょう。
侯爵の位を賜っているのはテトラディル、テンペスト、ティーバム、テクスノズ、テスラの「テ」で始まる5家です。いや、覚えやすいですけど。
大公家、公爵家が王都守護なら、侯爵家は国境守護です。
北の守りテスラ、北西の守りテクスノズ、西の守りテンペスト、南の守りテトラディル、東の守りティーバム。ぐるりとモノクロード国を囲んでいます。
テクスノズ侯爵、テンペスト侯爵のところには、今回の対象年齢の子供がいないので、省略。大公同様、見物に来たようです。
テスラ侯爵のところには私と同じ年の6歳になる御令嬢と、8歳になる御令息がいます。あれ?ゲームで同級生にカーラ以外の侯爵令嬢いたかな。
ティーバム侯爵のところには10歳の御令息が一人。省略で。
「カーラ、行くよ」
「はい、お父様」
侯爵の中では一番若いですし、力関係的に父は侯爵家では最後に挨拶をします。
「ヒースクリフ殿下、おめでとうございます」
「ありがとう、テトラディル侯爵。そちらの可愛らしいご令嬢を紹介いただいてもよろしいか?」
白々しい。棒読みですよ、殿下。
「こちらは私の娘でございます」
「おめでとうございます、殿下。お初にお目にかかります。カーラ・テトラディルと申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
1月の準備中に徹底的に矯正された、淑女の礼をとります。我ながら完璧! 誰もほめてくれないので、自画自賛しておきます。
「あぁ。ありがとう」
殿下、声が震えておりますよ。そんなに怯えなくても、とって食べたりしません。
ちらりと王太子殿下の後ろにいた、攻略対象の第三王子ヘンリー殿下を盗み見ます。王太子殿下ほど引きつってはいませんが、緊張した面持ちでこちらを見ていました。まだ6歳だからか中性的な美少年ですが、ここで一目ぼれしたわけでもないと思います。この後、好きになるような出来事があるのでしょうか。
後ろが控えてますし、特に話すべきこともないので、もう一度礼をとって下がります。
『畏怖、興味、期待。予想通りだな』
オニキスがつまらなそうに言いました。
まあね。会場のほとんどの人が抱いている感情でしょう。
『そうだ。つまらん』
私もつまらないので帰りたいです。私が視線を向けた周辺の人々が、不自然に目をそらしますので、目のやり場にも困ます。モーゼかという勢いで、歩くと人が避けていきますし。父を見上げると、視線に気づいて小さくため息をつきました。
「伯爵家あたりの挨拶がすむまで、我慢してくれ。その後なら帰るのは許されないが、庭園で散歩するくらいなら許されるだろう」
「わかりました」
では攻略対象ウォッチングを続けましょう。
伯爵の爵位を賜っているのは7家。
攻略対象のレオンハルト・ペンタクロムはすぐわかりました。深紅の髪が目立ちますからね。私より一つ年下の少年です。
まだ5歳とはいえ、なんだか落ち着きのない子ですね。きょろきょろと目線が動いています。大人びた、遊び人風だったはずなのですが。これから彼に何かが起こるのでしょうか?
『あれは・・・』
オニキスが言いよどみます。なんですか?
『おそらくだが・・・』
いいですよ。間違っていてもいいですから、教えてください。
『こうも稀な存在がそろうとは、考えづらいのだが・・・あの者は精霊の声が聞こえている』
えぇ?! 思わずオニキスに視線を向けそうになって、慌ててレオンハルト伯爵令息に視線を戻しました。二度見したみたいになってしまいました。
あー、びっくりした。というか、今も驚きすぎて手が震えています。
「カーラ、大丈夫かい? 花摘みに行くフリをして、庭園へ行ってもいいよ。私は一緒に行けないが」
震える私を心配して、父がそっと耳打ちしました。
「申し訳ありません、お父様。そうさせていただきます」
これ幸いと、会場を後にします。カモフラージュの為にちゃんとトイレへ行ってから、庭園で人気のない場所を探しましょう。
張りつめた空気の中、順に王太子へお祝いを述べていきます。相変わらずの痛いような視線の中、攻略対象の姿を探しました。間違っても接触しないように、です。
じっと王太子の前に並ぶ人々を見ていたら、父が解説してくれました。
まず初めに挨拶したのが、レイモンド・グランツ・ジスティリア大公閣下。ゲーム主人公レイチェルの父ですね。まだ独身のはずですが、立場的に出席しているのでしょうか。
『違うな。カーラを見に来たのだ』
相変わらず不機嫌そうにオニキスが言いました。
なるほど。大公家は初代モノクロード王と共に、この国を立ち上げた立役者ですからね。「王家の剣」と称される立場から、私を品定めしに来たのでしょう。
次にトリステン公爵と、その御令息であるアレクシス。攻略対象ですね。彼は私と同じ6歳ですが、すでにツンの気配を醸し出しています。そして彼の姉上が王太子の婚約者で、王太子の側に並んで祝辞を受けています。
あと2家、公爵の位を賜っていますが、どちらも御令嬢で8歳、10歳と年齢的にも関係なさそうなので省略。さらに上に御令息もいますが、そちらはもう婚約者がいますし大丈夫でしょう。
侯爵の位を賜っているのはテトラディル、テンペスト、ティーバム、テクスノズ、テスラの「テ」で始まる5家です。いや、覚えやすいですけど。
大公家、公爵家が王都守護なら、侯爵家は国境守護です。
北の守りテスラ、北西の守りテクスノズ、西の守りテンペスト、南の守りテトラディル、東の守りティーバム。ぐるりとモノクロード国を囲んでいます。
テクスノズ侯爵、テンペスト侯爵のところには、今回の対象年齢の子供がいないので、省略。大公同様、見物に来たようです。
テスラ侯爵のところには私と同じ年の6歳になる御令嬢と、8歳になる御令息がいます。あれ?ゲームで同級生にカーラ以外の侯爵令嬢いたかな。
ティーバム侯爵のところには10歳の御令息が一人。省略で。
「カーラ、行くよ」
「はい、お父様」
侯爵の中では一番若いですし、力関係的に父は侯爵家では最後に挨拶をします。
「ヒースクリフ殿下、おめでとうございます」
「ありがとう、テトラディル侯爵。そちらの可愛らしいご令嬢を紹介いただいてもよろしいか?」
白々しい。棒読みですよ、殿下。
「こちらは私の娘でございます」
「おめでとうございます、殿下。お初にお目にかかります。カーラ・テトラディルと申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
1月の準備中に徹底的に矯正された、淑女の礼をとります。我ながら完璧! 誰もほめてくれないので、自画自賛しておきます。
「あぁ。ありがとう」
殿下、声が震えておりますよ。そんなに怯えなくても、とって食べたりしません。
ちらりと王太子殿下の後ろにいた、攻略対象の第三王子ヘンリー殿下を盗み見ます。王太子殿下ほど引きつってはいませんが、緊張した面持ちでこちらを見ていました。まだ6歳だからか中性的な美少年ですが、ここで一目ぼれしたわけでもないと思います。この後、好きになるような出来事があるのでしょうか。
後ろが控えてますし、特に話すべきこともないので、もう一度礼をとって下がります。
『畏怖、興味、期待。予想通りだな』
オニキスがつまらなそうに言いました。
まあね。会場のほとんどの人が抱いている感情でしょう。
『そうだ。つまらん』
私もつまらないので帰りたいです。私が視線を向けた周辺の人々が、不自然に目をそらしますので、目のやり場にも困ます。モーゼかという勢いで、歩くと人が避けていきますし。父を見上げると、視線に気づいて小さくため息をつきました。
「伯爵家あたりの挨拶がすむまで、我慢してくれ。その後なら帰るのは許されないが、庭園で散歩するくらいなら許されるだろう」
「わかりました」
では攻略対象ウォッチングを続けましょう。
伯爵の爵位を賜っているのは7家。
攻略対象のレオンハルト・ペンタクロムはすぐわかりました。深紅の髪が目立ちますからね。私より一つ年下の少年です。
まだ5歳とはいえ、なんだか落ち着きのない子ですね。きょろきょろと目線が動いています。大人びた、遊び人風だったはずなのですが。これから彼に何かが起こるのでしょうか?
『あれは・・・』
オニキスが言いよどみます。なんですか?
『おそらくだが・・・』
いいですよ。間違っていてもいいですから、教えてください。
『こうも稀な存在がそろうとは、考えづらいのだが・・・あの者は精霊の声が聞こえている』
えぇ?! 思わずオニキスに視線を向けそうになって、慌ててレオンハルト伯爵令息に視線を戻しました。二度見したみたいになってしまいました。
あー、びっくりした。というか、今も驚きすぎて手が震えています。
「カーラ、大丈夫かい? 花摘みに行くフリをして、庭園へ行ってもいいよ。私は一緒に行けないが」
震える私を心配して、父がそっと耳打ちしました。
「申し訳ありません、お父様。そうさせていただきます」
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