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まだ幼児
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クラウドが上手くやってくれて、護衛たちはポーションを飲んだそうです。二人ほど麻痺が全身に回りかけていて、もう少し遅ければ呼吸が出来なくなっていただろう、とのこと。
お金を渡されそうになったようですが、貰い物だからと断ったそうです。
「それでいいですよ。お金を払っていないほうが、申し訳なさから、より強く記憶に残るでしょう」
夕食を終え、自室でくつろぎながら報告を受けます。
クラウドだけに行ってもらったのは、直接行くよりカーライルに興味を持ってくれるだろうと思ったからです。
それに母から夕食前の散歩に誘われていたのもあります。案の定、異国の兄妹をどこで拾ったか聞かれましたが、必殺3歳児スマイルで誤魔化しておきました。
そういえばこの兄妹、セバス族と言って文武両道で、仕える主を決めると一生忠誠を誓うという、有名な部族らしい。茜色の瞳が特徴で、彼らを侍らせるのは、一種のステータスなんだとか。いい拾い物をしましたが、初見で一生とか重すぎます。
母が怯えていると、オニキスに心配されてしました。悲しくないと言えば嘘になりますが、実際に怯えられる事をしている自覚があるので、仕方ありません。
「カーラ様」
クラウドが跪き、真剣な顔で私を見上げました。視線で、質問する許可を与えます。
「カーラ様は私と同じ、闇の精霊の加護を受けているとお見受けしました。私にも、あなたのように力が使えるのでしょうか?」
私はその答えを持っていませんので、オニキスを見ます。
『力の強弱はあるが、契約すれば可能であろう。ただし、精霊が承諾すれば、だ』
ふむ。嫌がる精霊もいるということですね。なにか害があるのでしょうか。
オニキスは大丈夫なのかと見つめたままでいると、私の足元にすり寄ってきました。
『我に害はない。ただ契約を了承する精霊は少ないというだけだ』
契約を嫌がる精霊の方が多いのですね。オニキスはここでも規格外だったようです。
クラウドに視線を移して、彼の質問に答えます。
「精霊と契約すれば可能だそうです。ただし、精霊が承諾すればですが」
「かまわないそうです」
早っ! クラウドの精霊も規格外のようですね。
契約は私とオニキスの時のように、名付ければよいのでしょうか。足元のオニキスを見下ろすと、彼は頷きました。
「では精霊に名前を付けてください。それが契約となります」
クラウドが少し考えて口に出しました。
「クラウドの・・・」
『その名は却下だそうだ』
まさかとは思いますが、太郎の1番目的な感じではないでしょうね?
クラウドが憮然として言いました。
「何が気に入らないんだ?」
あぁ・・・私も人のことは言えませんが、クラウドの名付けセンスはゼロようです。私はチェリに視線を向けました。
「兄の・・・」
『却下だそうだ』
ダメです。この兄妹は名付けセンスが皆無のようです。というか村の人間も名付けセンスが皆無だから、契約主に名付けてもらうとかいう慣わしだったりしませんかね。
ため息が出そうなのをこらえていたら、兄妹とオニキスの視線を感じました。いやな予感がして、明後日の方向を向きます。
「カーラ様」
「嫌です」
もう責任は十分です。名付けて欲しいと簡単に言いますが、名前というのは一生ものなんですよ!
わざと視線をそらしたままでいると、オニキスが私の膝に顎を乗せ上目使いで見つめてきました。
『クラウドの黒が嘆いていて、うるさくてかなわない。我からも頼む』
くっっ! あざとい。でもかわいい! 誘惑に負けてオニキスに視線を向けました。その頭を撫でると、嬉しそうに目を閉じます。仕方ない。考えてみますか。
カッコいい車の名前とか覚えていればよかったのですが、残念ながら興味がなかったので知識として存在しません。歯医者で使う薬剤名や病名は覚えていますが、呼び名としては向いていませんし。
やはり色シリーズですかね。クラウドの精霊は黒・・・なのかな? クラウドの髪は鈍色ですけど。オニキスが黒と言うのですから、黒でいきましょう。黒、黒・・・カラス。だめです。黒いものが思いつきません。昆虫は却下。
あ。そういえばオニキスはパワーストーンでした。黒い石・・・元アラサー喪女のストーン知識をなめるなよ!
「シュンガイト、ヘマタイト、モリオン、スピネル。さあ、どうですか?」
半ばやけくそです。選択性にすれば、私の責任も軽くなったような気がしました。これが気に入らないなら、クラウドが時間をかけて考えればいいのです!
「モリオン」
決まったようです。クラウドがひきつった顔で、自分の足元を見ています。どうやら見えるようになったようですね。
『主の主様、感謝っす! よろしくっす』
頭に直接響く声と共に、クラウドの足元に黒い塊が現れました。真黒な・・・柴犬? みたいな愛らしい姿です。しっぽは巻いていませんけど。
「小さい?」
クラウドがやや落胆しています。確かに、オニキスと比べると小さいですね。
『僕と主の主の黒様では格が違い過ぎるっす。比べないで欲しいっす!』
モリオンが消えてしまいました。私に見えなくなっただけみたいですね。クラウドが何もいない後ろを振り返りました。
「あのっ!私も契約できますか?」
チェリが祈るように両手を胸の前で組んでいます。
『無理だな』
オニキスがバッサリ切り捨てました。嫌そうにチェリの方へ視線を向けています。彼女の精霊に何か言われたのでしょうか。膝に乗ったままの頭をまたそっと撫でます。
「チェリの精霊は契約したくないようです」
がっくりとチェリが肩を落としましたが、こればかりはなんともなりませんからね。諦めるしかありません。
お金を渡されそうになったようですが、貰い物だからと断ったそうです。
「それでいいですよ。お金を払っていないほうが、申し訳なさから、より強く記憶に残るでしょう」
夕食を終え、自室でくつろぎながら報告を受けます。
クラウドだけに行ってもらったのは、直接行くよりカーライルに興味を持ってくれるだろうと思ったからです。
それに母から夕食前の散歩に誘われていたのもあります。案の定、異国の兄妹をどこで拾ったか聞かれましたが、必殺3歳児スマイルで誤魔化しておきました。
そういえばこの兄妹、セバス族と言って文武両道で、仕える主を決めると一生忠誠を誓うという、有名な部族らしい。茜色の瞳が特徴で、彼らを侍らせるのは、一種のステータスなんだとか。いい拾い物をしましたが、初見で一生とか重すぎます。
母が怯えていると、オニキスに心配されてしました。悲しくないと言えば嘘になりますが、実際に怯えられる事をしている自覚があるので、仕方ありません。
「カーラ様」
クラウドが跪き、真剣な顔で私を見上げました。視線で、質問する許可を与えます。
「カーラ様は私と同じ、闇の精霊の加護を受けているとお見受けしました。私にも、あなたのように力が使えるのでしょうか?」
私はその答えを持っていませんので、オニキスを見ます。
『力の強弱はあるが、契約すれば可能であろう。ただし、精霊が承諾すれば、だ』
ふむ。嫌がる精霊もいるということですね。なにか害があるのでしょうか。
オニキスは大丈夫なのかと見つめたままでいると、私の足元にすり寄ってきました。
『我に害はない。ただ契約を了承する精霊は少ないというだけだ』
契約を嫌がる精霊の方が多いのですね。オニキスはここでも規格外だったようです。
クラウドに視線を移して、彼の質問に答えます。
「精霊と契約すれば可能だそうです。ただし、精霊が承諾すればですが」
「かまわないそうです」
早っ! クラウドの精霊も規格外のようですね。
契約は私とオニキスの時のように、名付ければよいのでしょうか。足元のオニキスを見下ろすと、彼は頷きました。
「では精霊に名前を付けてください。それが契約となります」
クラウドが少し考えて口に出しました。
「クラウドの・・・」
『その名は却下だそうだ』
まさかとは思いますが、太郎の1番目的な感じではないでしょうね?
クラウドが憮然として言いました。
「何が気に入らないんだ?」
あぁ・・・私も人のことは言えませんが、クラウドの名付けセンスはゼロようです。私はチェリに視線を向けました。
「兄の・・・」
『却下だそうだ』
ダメです。この兄妹は名付けセンスが皆無のようです。というか村の人間も名付けセンスが皆無だから、契約主に名付けてもらうとかいう慣わしだったりしませんかね。
ため息が出そうなのをこらえていたら、兄妹とオニキスの視線を感じました。いやな予感がして、明後日の方向を向きます。
「カーラ様」
「嫌です」
もう責任は十分です。名付けて欲しいと簡単に言いますが、名前というのは一生ものなんですよ!
わざと視線をそらしたままでいると、オニキスが私の膝に顎を乗せ上目使いで見つめてきました。
『クラウドの黒が嘆いていて、うるさくてかなわない。我からも頼む』
くっっ! あざとい。でもかわいい! 誘惑に負けてオニキスに視線を向けました。その頭を撫でると、嬉しそうに目を閉じます。仕方ない。考えてみますか。
カッコいい車の名前とか覚えていればよかったのですが、残念ながら興味がなかったので知識として存在しません。歯医者で使う薬剤名や病名は覚えていますが、呼び名としては向いていませんし。
やはり色シリーズですかね。クラウドの精霊は黒・・・なのかな? クラウドの髪は鈍色ですけど。オニキスが黒と言うのですから、黒でいきましょう。黒、黒・・・カラス。だめです。黒いものが思いつきません。昆虫は却下。
あ。そういえばオニキスはパワーストーンでした。黒い石・・・元アラサー喪女のストーン知識をなめるなよ!
「シュンガイト、ヘマタイト、モリオン、スピネル。さあ、どうですか?」
半ばやけくそです。選択性にすれば、私の責任も軽くなったような気がしました。これが気に入らないなら、クラウドが時間をかけて考えればいいのです!
「モリオン」
決まったようです。クラウドがひきつった顔で、自分の足元を見ています。どうやら見えるようになったようですね。
『主の主様、感謝っす! よろしくっす』
頭に直接響く声と共に、クラウドの足元に黒い塊が現れました。真黒な・・・柴犬? みたいな愛らしい姿です。しっぽは巻いていませんけど。
「小さい?」
クラウドがやや落胆しています。確かに、オニキスと比べると小さいですね。
『僕と主の主の黒様では格が違い過ぎるっす。比べないで欲しいっす!』
モリオンが消えてしまいました。私に見えなくなっただけみたいですね。クラウドが何もいない後ろを振り返りました。
「あのっ!私も契約できますか?」
チェリが祈るように両手を胸の前で組んでいます。
『無理だな』
オニキスがバッサリ切り捨てました。嫌そうにチェリの方へ視線を向けています。彼女の精霊に何か言われたのでしょうか。膝に乗ったままの頭をまたそっと撫でます。
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