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音波系男子カトリ
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草食系、肉食系、電波系などなど……俺がどの系統に属するかといえば、間違いなく音波系だ。
とある夕方、俺はコンビニに向かうと、俺と同年代と見られる高校生数人が入口の前に座っていた。
このままだとコンビニに入れない。正直邪魔だ。
俺は口を少し開いて、数秒動かない。
「うわっ! ウルセー!」
少年たちは突然耳を塞いで入り口を立ち去っていく。
俺は彼らがいなくなるのを見計らって、コンビニに入った。
コンビニから出ると、スマホからメールの着信音が。
メールを覗くと、母親から肉屋で買い物をしてほしいという指令だった。
俺は渋々肉屋に向かった。母親からのメールを覗きながら肉屋のおばちゃんに尋ねる。
『すみません、豚バラ肉300グラムください』
おばちゃんは全く反応していない。俺は一瞬首を傾げて、大きな声で尋ねた。
『豚バラ肉300グラムください!』
しかし、おばちゃんは何事もなかったのごとく佇んでいる。
俺が苛立ち始めた瞬間、左から女性の声がした。
「ちょっとおばちゃん、この少年が豚バラ肉300グラム買いたいってさ!」
「えっ?!」
女性の声に驚いたおばちゃんが慌てて、豚バラ肉を取り出す。
声の方向に振り向くと、セーラー服を着たツインテールの少女が立っていた。
『ありがとう』
「気持ち悪い」
俺が感謝の言葉を言ったら、少女がいきなり「気持ち悪い」と。
不思議なやり取りに俺は少し戸惑っている。
「あんた、蚊の鳴くような声で気持ち悪いんだけど」
俺は慌てて咳払いをする。
「ご、ごめん。これならいいかな?」
「え、なに? 声が変わった? 気持ち悪い!」
少女は突如走り去ってしまった。
俺は呆然とした。すると、肉を包み終えたおばちゃんが声をかけた。
「豚バラ肉300グラムね」
「ありがとうございます」
「えっ?!あんた、しゃべれたの?」
おばちゃんの目が見開いた。
「すみません、さっきは声が裏返りすぎちゃって。ははは」
適当に愛想笑いをして、俺は肉を受け取り、代金を支払い、そそくさと肉屋を後にした。
実は俺は声の周波数を自在に操ることができる。
これが音波系男子たる所以だ。
ちなみにコンビニや肉屋で発していたのは若者だけ聴くことのできる高周波『モスキート音』だ。
今までこの能力が役に立ったことはあまりない。
翌日の昼、俺は友人たちと教室で談笑していた。
「しょ~おん、りっき~」
友人の一人が最近流行っている耳栓のCMソングのモノマネをする。
「おい、あんまり似てないって。ははは」
「じゃ、カトリ、お前やってみろよ」
俺はCMソングを思い出しながら、声の周波数をチューニングする。
「しょ~おん、りっき~」
俺が歌うと、友人たちからどっと笑いが沸き起こった。
「ははは! カトリ、モノマネ下手すぎるよ!」
しまった! 俺は歌があまりうまくなかった……。
とある夕方、俺はコンビニに向かうと、俺と同年代と見られる高校生数人が入口の前に座っていた。
このままだとコンビニに入れない。正直邪魔だ。
俺は口を少し開いて、数秒動かない。
「うわっ! ウルセー!」
少年たちは突然耳を塞いで入り口を立ち去っていく。
俺は彼らがいなくなるのを見計らって、コンビニに入った。
コンビニから出ると、スマホからメールの着信音が。
メールを覗くと、母親から肉屋で買い物をしてほしいという指令だった。
俺は渋々肉屋に向かった。母親からのメールを覗きながら肉屋のおばちゃんに尋ねる。
『すみません、豚バラ肉300グラムください』
おばちゃんは全く反応していない。俺は一瞬首を傾げて、大きな声で尋ねた。
『豚バラ肉300グラムください!』
しかし、おばちゃんは何事もなかったのごとく佇んでいる。
俺が苛立ち始めた瞬間、左から女性の声がした。
「ちょっとおばちゃん、この少年が豚バラ肉300グラム買いたいってさ!」
「えっ?!」
女性の声に驚いたおばちゃんが慌てて、豚バラ肉を取り出す。
声の方向に振り向くと、セーラー服を着たツインテールの少女が立っていた。
『ありがとう』
「気持ち悪い」
俺が感謝の言葉を言ったら、少女がいきなり「気持ち悪い」と。
不思議なやり取りに俺は少し戸惑っている。
「あんた、蚊の鳴くような声で気持ち悪いんだけど」
俺は慌てて咳払いをする。
「ご、ごめん。これならいいかな?」
「え、なに? 声が変わった? 気持ち悪い!」
少女は突如走り去ってしまった。
俺は呆然とした。すると、肉を包み終えたおばちゃんが声をかけた。
「豚バラ肉300グラムね」
「ありがとうございます」
「えっ?!あんた、しゃべれたの?」
おばちゃんの目が見開いた。
「すみません、さっきは声が裏返りすぎちゃって。ははは」
適当に愛想笑いをして、俺は肉を受け取り、代金を支払い、そそくさと肉屋を後にした。
実は俺は声の周波数を自在に操ることができる。
これが音波系男子たる所以だ。
ちなみにコンビニや肉屋で発していたのは若者だけ聴くことのできる高周波『モスキート音』だ。
今までこの能力が役に立ったことはあまりない。
翌日の昼、俺は友人たちと教室で談笑していた。
「しょ~おん、りっき~」
友人の一人が最近流行っている耳栓のCMソングのモノマネをする。
「おい、あんまり似てないって。ははは」
「じゃ、カトリ、お前やってみろよ」
俺はCMソングを思い出しながら、声の周波数をチューニングする。
「しょ~おん、りっき~」
俺が歌うと、友人たちからどっと笑いが沸き起こった。
「ははは! カトリ、モノマネ下手すぎるよ!」
しまった! 俺は歌があまりうまくなかった……。
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