32 / 215
第五章 泡沫の葛藤
第32話 チュートリアル:ダンジョン突入
しおりを挟む
場所は移ってビーチ。日も傾き、夕暮れの光を海が反射している。
ヤマトサークルの戦闘服を借りて着こんでこれからダンジョンに入り、攻略者の本分を全うする事になる。
ダンジョンに入るという事は、未知に挑むということ。中はどうなっているのか、環境は? モンスターの原生情報は? 寒いの? 暑いの? あげたらキリがない。
俺が挑んだダンジョン、『機仙の仙山』。快適な環境だったから良かったものの、今にして思えば何の警戒も無し入ったのはいささか警戒心が無さ過ぎた。
結構な数のサークルが集結し、代表者は集会所へ。メンバーはタブレットに映る作戦会議を視聴する形をとった。
目標は以下の通りだ。
一、拉致された人たちの救出、及びダンジョンボスの討伐。
二、ダンジョンの現地調査。
三、ゲート周辺の精密調査。
他にもいろいろと言われていたが、おおまかは三つだ。
一はもちろん最優先事項。俺たち攻略者がいかに迅速に救出するかが問われる。ダンジョンの出口は最初は一つ、ボスを倒すと二つになる。
一つはゲートの事だ。機械を使った入口調査で出入りできるのは確認済み。救助したらここから出てくる。
二つ目はボス討伐時に出現する出口専用ゲート。ボスの早期討伐がなされ、かつ救助者の位置がボス出口に近かったらそこから出る方針だ。
そして今回のダンジョンは、攻略すると数時間程でで閉じるゲートと確認された。どういった調査をしてそんな事分かったのか……。いやはや、国連の仕事は早い。
一応成功報酬や、貢献報酬なんて物もあったりする。各サークルリーダーまたは代表者にそれ用のカードが支給される。原理はわからないが、そのカードに行動履歴が事細かに記録される。それを国連が回収、確認してから報酬が渡される仕組みだ。
「いよいよだな、大吾」
「ああ……。蕾を絶対に助ける」
瞳に強い意志が宿っている。大吾の調子は絶好調のようだ。
「萌、気をつけてね」
「うん。瀬那も危ないと思ったら下がって」
瀬那に上目使いで心配された。特徴的な胸部に戦闘服が合っていない。そこだけ窮屈そうだ。
「花房。お前の力は周知だが、油断するなよ」
「そっちこそ。モンスターに背負い投げかましてやれ」
腕を組む月野。体格が良いので頼りになりそうだ。
「……」
順繰りにみんなの目を見て会釈した。
「今回は初心者ダンジョンなんて目じゃない。ガチの本場だ」
ハキハキと意気込んだ声。
「……俺たちは毛の生えただけの攻略者候補、学生だ。まわりは現役の攻略者で俺たちはアウェー。だが、俺たちだって気合いでは負けてない!」
瀬那が頷く。
月野が拳を握る。
「蕾を……。捕らわれた人たちを救出する!」
大吾が拳を前に出した。
「当然だな」
月野も拳を合わした。
「モンスターをコテンパンにして絶対助ける!」
勢いよく拳を前に出し、合わせた瀬那。
「はぁ。こんなクサイ気合いの入れ方あるか?」
なぜ急に少年漫画みたいな事をしだしたのか、俺は困り果てた顔を三人に向けた。
「でもまっ」
笑顔で拳を合わせる。
「このノリは嫌いじゃない」
三人のニヤけた顔が目に映る。
「絶対に生きて帰ってくるぞ……!」
――オウ!!
俺たちの気合いは十分だ。
後は号令を待つだけだが、正面の大吾が俺の後ろを見て固まっている。
怪訝な顔をして振り向くと、目を力強く><にした西田メンバーが歩いて来るではないか。
「ど、どうしたんですか……いったい」
「お前らぁ……!」
そんなワンピースの麦わらァみたいな発音で言わんでも。
「勝手な事しすぎってクソ怒られたぁ~」
原因は明らかに俺たちが関与しているから、何とも言えない。西田メンバーが目を><になっても俺らは言葉が詰まる。
って言うか普段から勝手な行動しまくってるからアカンのでは? それが今回の俺たちで大目玉って訳か。
「あの、なんかすみません」
「謝るな。俺も男だ。一度受けた頼みは断わらない。まぁお前たちの存在もあるし状況によるが最前線って訳じゃいかない。でも俺がいるし大船に乗ったつもりでいてもいい」
「はい。がんばります!」
瀬那が発言し、月野も頷いた。
西田メンバーは頼れるアニキャラなのかもしれない。姿も声も某勇者王に似てるし……。
「じゃあ移動するか」
「「「はい!」」」
三人が声が揃った。
「花房くん。お前も頑張れよ」
「はい。西田メンバーもお気を付けて」
あいよ~、と言って背中を向けて歩き出した。それに連れられて三人も歩き出したが、一人ひとり、俺の顔を見て頷き、エールを送ってくれた。
「……。……」
なぜ。なぜ俺だけ置いて行かれたか。その理由は所持スキルによるものだ。
強制というか、義務だがヤマトサークルの集合場所でいろいろ質疑応答された。その中で、どんなスキルを持っているかも伝えるんだが、俺のスキルが引っ掛かった。
そう。ドラ○もん御用達の次元ポケットが引っ掛かった。
なんと次元ポケット所持者は世界中で十人もいないらしく、希少。ヤマトサークルにも居るには居るらしいが、今はサークルリーダーと共に日本にいないらしく、そこでちょうど俺が登場した。
「青春ッスね~」
「うお!?」
背後から不意の気配。驚いて振り向くと、西田メンバーの部下、三井さんが居た。いつの間に……。
「俺もおっぱいの大きなお友達が欲しかったなぁ」
なに言ってるんだこの人。
「三井さん。ちょうど西田メンバーがみんなを連れて行きました。微力ながら、俺も調査メンバーとして力になります。よろしくお願いします」
「頭も下げて礼儀正しいこと。まぁ俺らは攻略者でも戦闘向きじゃないから、気楽に行こう」
「はい」
俺は調査メンバーに抜擢。次元ポケットマンとして同行する。
「じゃあ俺らも行こか、勇次郎」
「俺、勇次郎じゃないです……。花房 萌です」
三井さんに連れられると、先ほどの攻略者息まく空気ではなく、にこやかな雰囲気。どこか楽観している空気が漂う場所に来た。
「はい集合! 今回の調査に同行する、学生の花房くんス」
「花房 萌です。次元ポケットマンとして微力ですが、皆さんの調査に同行させていただきます。よろしくお願いします」
「ちなみに彼は例のバーサーカーにして範○勇次郎。戦闘もこなせるタフガイっス。……はい質問は後でお願いします。国連の指示で調査する――」
小難しい説明を淡々と話す三井さん。流石というか、調査班は三井さんが言っている事を理解している様子。俺はさっぱり。
とりあえず次元ポケットで物を回収。モンスターが襲ってきたら腕の立つ調査班と共に撃退。と言ったところか。
そしていよいよダンジョン突入の時。
「いよいよッスね勇次郎」
「……そうスね」
大量の装備を拵える三井さん。全部調査用の器具だ。俺もいろいろと持たされている。次元ポケットに入れれば楽なのは明白だが、次元ポケットはあくまで回収品仮倉庫。圧迫させるのはダメらしい。
ちなみに勇次郎と調査班みんなに言われ続け、もうどうでもよくなった。
「攻略班が入って十分と六分。そろそろ合図がある筈だ……。お!」
三井さんに支給されたカードの一部が発光。それと同時に俺のメッセージ画面が表示された。
『チュートリアル:ダンジョンをクリアしよう』
『ダンジョン:泡沫の同胞』
新たなチュートリアルが発生。そろそろ来ると予想していた通りだ。
「よし! 気合い入れて行くッス!」
三井さんの後を調査班が続き、俺も三井さんの隣で頬を叩いて気合いを入れた。
荒れた砂浜を歩き、ゲートに近づくにつれ海水に足元から膝あたりまで浸かる。
ゲートに触れる。濡れた感覚、広がる波紋。
「わ~お」
ダンジョン内。そこはどこまでも広い鍾乳洞。道になっている所もあれば崖になっている所もある危険な場所。
青白い幻想的な風景は、無数にある薄く光るヒカリゴケの影響。空気も澄んでいて、人間が生命活動するには十分な環境だ。
しばらく道沿いに集団で歩くと開けた場所に到着。ここで荷物をおろして三井さんが声を大きくして口を開いた。
「当然わかっていると思うけど、調査より救助が何よりも優先! 痕跡があれば真っ先に報告するように!」
三井さんが声を張って喋っているのに対し、調査班は耳を傾きながらテキパキと装置を組み立てたり何かを展開している。慣れ加減が凄い。
「ふぅ。俺たちはこっち行こか」
「え? 皆さんちゃんと聞いてない気が……」
「俺らはプロなの。ちゃんとわかってるし、俺も一応定例文を言っただけッス」
おお~。なんかカッコいいかも。
「先には攻略班がどんどん進んでいるはずッス。ここはみんなに任せて、俺らは少し進んで調査ッス」
「はい」
少し奥まったところまで歩くと、三井さんが止まる。どうやらヒカリゴケが群生しているここを調査するようだ。
「足元気を付けて。滑りやすくなってるス」
俺の頷きを見ると膝を付き、ヒカリゴケを採取し始めた。
なるべく傷つけない様な繊細な取り方。専用のケースに入れて蓋をすると、俺に差し出してきた。
「これよろしく」
「はい。よっと」
手をかざすと電子の穴が開く。普段は名称よろしくポケットの中に展開していたから、久しぶりに見た気がする。
「……」
「……? あの、何か?」
三井さんが次元ポケットを見て固まっている。
「俺の知ってる次元ポケットより広い口だなぁって」
「そうなんですか? 俺は他の次元ポケットを知らないんで……ん?」
視界の端に異物が見えた。それを追う様に見ると、魚人型モンスターが三体向かってくるではないか。
「モンスター! 次元ポケット開けておくんで、速攻で倒してきます!」
三井さんに翻してモンスターに駆ける。まだ距離があるが先手必勝だ。
「……手の平だけに展開できるんじゃないの? 次元ポケットって空間に展開できるものだっけ……。しかも使用者めっちゃ離れてるのにまだここにある。……勇次郎何者ッスか」
俺は知らず知らずのうちにやらかしていた。
ヤマトサークルの戦闘服を借りて着こんでこれからダンジョンに入り、攻略者の本分を全うする事になる。
ダンジョンに入るという事は、未知に挑むということ。中はどうなっているのか、環境は? モンスターの原生情報は? 寒いの? 暑いの? あげたらキリがない。
俺が挑んだダンジョン、『機仙の仙山』。快適な環境だったから良かったものの、今にして思えば何の警戒も無し入ったのはいささか警戒心が無さ過ぎた。
結構な数のサークルが集結し、代表者は集会所へ。メンバーはタブレットに映る作戦会議を視聴する形をとった。
目標は以下の通りだ。
一、拉致された人たちの救出、及びダンジョンボスの討伐。
二、ダンジョンの現地調査。
三、ゲート周辺の精密調査。
他にもいろいろと言われていたが、おおまかは三つだ。
一はもちろん最優先事項。俺たち攻略者がいかに迅速に救出するかが問われる。ダンジョンの出口は最初は一つ、ボスを倒すと二つになる。
一つはゲートの事だ。機械を使った入口調査で出入りできるのは確認済み。救助したらここから出てくる。
二つ目はボス討伐時に出現する出口専用ゲート。ボスの早期討伐がなされ、かつ救助者の位置がボス出口に近かったらそこから出る方針だ。
そして今回のダンジョンは、攻略すると数時間程でで閉じるゲートと確認された。どういった調査をしてそんな事分かったのか……。いやはや、国連の仕事は早い。
一応成功報酬や、貢献報酬なんて物もあったりする。各サークルリーダーまたは代表者にそれ用のカードが支給される。原理はわからないが、そのカードに行動履歴が事細かに記録される。それを国連が回収、確認してから報酬が渡される仕組みだ。
「いよいよだな、大吾」
「ああ……。蕾を絶対に助ける」
瞳に強い意志が宿っている。大吾の調子は絶好調のようだ。
「萌、気をつけてね」
「うん。瀬那も危ないと思ったら下がって」
瀬那に上目使いで心配された。特徴的な胸部に戦闘服が合っていない。そこだけ窮屈そうだ。
「花房。お前の力は周知だが、油断するなよ」
「そっちこそ。モンスターに背負い投げかましてやれ」
腕を組む月野。体格が良いので頼りになりそうだ。
「……」
順繰りにみんなの目を見て会釈した。
「今回は初心者ダンジョンなんて目じゃない。ガチの本場だ」
ハキハキと意気込んだ声。
「……俺たちは毛の生えただけの攻略者候補、学生だ。まわりは現役の攻略者で俺たちはアウェー。だが、俺たちだって気合いでは負けてない!」
瀬那が頷く。
月野が拳を握る。
「蕾を……。捕らわれた人たちを救出する!」
大吾が拳を前に出した。
「当然だな」
月野も拳を合わした。
「モンスターをコテンパンにして絶対助ける!」
勢いよく拳を前に出し、合わせた瀬那。
「はぁ。こんなクサイ気合いの入れ方あるか?」
なぜ急に少年漫画みたいな事をしだしたのか、俺は困り果てた顔を三人に向けた。
「でもまっ」
笑顔で拳を合わせる。
「このノリは嫌いじゃない」
三人のニヤけた顔が目に映る。
「絶対に生きて帰ってくるぞ……!」
――オウ!!
俺たちの気合いは十分だ。
後は号令を待つだけだが、正面の大吾が俺の後ろを見て固まっている。
怪訝な顔をして振り向くと、目を力強く><にした西田メンバーが歩いて来るではないか。
「ど、どうしたんですか……いったい」
「お前らぁ……!」
そんなワンピースの麦わらァみたいな発音で言わんでも。
「勝手な事しすぎってクソ怒られたぁ~」
原因は明らかに俺たちが関与しているから、何とも言えない。西田メンバーが目を><になっても俺らは言葉が詰まる。
って言うか普段から勝手な行動しまくってるからアカンのでは? それが今回の俺たちで大目玉って訳か。
「あの、なんかすみません」
「謝るな。俺も男だ。一度受けた頼みは断わらない。まぁお前たちの存在もあるし状況によるが最前線って訳じゃいかない。でも俺がいるし大船に乗ったつもりでいてもいい」
「はい。がんばります!」
瀬那が発言し、月野も頷いた。
西田メンバーは頼れるアニキャラなのかもしれない。姿も声も某勇者王に似てるし……。
「じゃあ移動するか」
「「「はい!」」」
三人が声が揃った。
「花房くん。お前も頑張れよ」
「はい。西田メンバーもお気を付けて」
あいよ~、と言って背中を向けて歩き出した。それに連れられて三人も歩き出したが、一人ひとり、俺の顔を見て頷き、エールを送ってくれた。
「……。……」
なぜ。なぜ俺だけ置いて行かれたか。その理由は所持スキルによるものだ。
強制というか、義務だがヤマトサークルの集合場所でいろいろ質疑応答された。その中で、どんなスキルを持っているかも伝えるんだが、俺のスキルが引っ掛かった。
そう。ドラ○もん御用達の次元ポケットが引っ掛かった。
なんと次元ポケット所持者は世界中で十人もいないらしく、希少。ヤマトサークルにも居るには居るらしいが、今はサークルリーダーと共に日本にいないらしく、そこでちょうど俺が登場した。
「青春ッスね~」
「うお!?」
背後から不意の気配。驚いて振り向くと、西田メンバーの部下、三井さんが居た。いつの間に……。
「俺もおっぱいの大きなお友達が欲しかったなぁ」
なに言ってるんだこの人。
「三井さん。ちょうど西田メンバーがみんなを連れて行きました。微力ながら、俺も調査メンバーとして力になります。よろしくお願いします」
「頭も下げて礼儀正しいこと。まぁ俺らは攻略者でも戦闘向きじゃないから、気楽に行こう」
「はい」
俺は調査メンバーに抜擢。次元ポケットマンとして同行する。
「じゃあ俺らも行こか、勇次郎」
「俺、勇次郎じゃないです……。花房 萌です」
三井さんに連れられると、先ほどの攻略者息まく空気ではなく、にこやかな雰囲気。どこか楽観している空気が漂う場所に来た。
「はい集合! 今回の調査に同行する、学生の花房くんス」
「花房 萌です。次元ポケットマンとして微力ですが、皆さんの調査に同行させていただきます。よろしくお願いします」
「ちなみに彼は例のバーサーカーにして範○勇次郎。戦闘もこなせるタフガイっス。……はい質問は後でお願いします。国連の指示で調査する――」
小難しい説明を淡々と話す三井さん。流石というか、調査班は三井さんが言っている事を理解している様子。俺はさっぱり。
とりあえず次元ポケットで物を回収。モンスターが襲ってきたら腕の立つ調査班と共に撃退。と言ったところか。
そしていよいよダンジョン突入の時。
「いよいよッスね勇次郎」
「……そうスね」
大量の装備を拵える三井さん。全部調査用の器具だ。俺もいろいろと持たされている。次元ポケットに入れれば楽なのは明白だが、次元ポケットはあくまで回収品仮倉庫。圧迫させるのはダメらしい。
ちなみに勇次郎と調査班みんなに言われ続け、もうどうでもよくなった。
「攻略班が入って十分と六分。そろそろ合図がある筈だ……。お!」
三井さんに支給されたカードの一部が発光。それと同時に俺のメッセージ画面が表示された。
『チュートリアル:ダンジョンをクリアしよう』
『ダンジョン:泡沫の同胞』
新たなチュートリアルが発生。そろそろ来ると予想していた通りだ。
「よし! 気合い入れて行くッス!」
三井さんの後を調査班が続き、俺も三井さんの隣で頬を叩いて気合いを入れた。
荒れた砂浜を歩き、ゲートに近づくにつれ海水に足元から膝あたりまで浸かる。
ゲートに触れる。濡れた感覚、広がる波紋。
「わ~お」
ダンジョン内。そこはどこまでも広い鍾乳洞。道になっている所もあれば崖になっている所もある危険な場所。
青白い幻想的な風景は、無数にある薄く光るヒカリゴケの影響。空気も澄んでいて、人間が生命活動するには十分な環境だ。
しばらく道沿いに集団で歩くと開けた場所に到着。ここで荷物をおろして三井さんが声を大きくして口を開いた。
「当然わかっていると思うけど、調査より救助が何よりも優先! 痕跡があれば真っ先に報告するように!」
三井さんが声を張って喋っているのに対し、調査班は耳を傾きながらテキパキと装置を組み立てたり何かを展開している。慣れ加減が凄い。
「ふぅ。俺たちはこっち行こか」
「え? 皆さんちゃんと聞いてない気が……」
「俺らはプロなの。ちゃんとわかってるし、俺も一応定例文を言っただけッス」
おお~。なんかカッコいいかも。
「先には攻略班がどんどん進んでいるはずッス。ここはみんなに任せて、俺らは少し進んで調査ッス」
「はい」
少し奥まったところまで歩くと、三井さんが止まる。どうやらヒカリゴケが群生しているここを調査するようだ。
「足元気を付けて。滑りやすくなってるス」
俺の頷きを見ると膝を付き、ヒカリゴケを採取し始めた。
なるべく傷つけない様な繊細な取り方。専用のケースに入れて蓋をすると、俺に差し出してきた。
「これよろしく」
「はい。よっと」
手をかざすと電子の穴が開く。普段は名称よろしくポケットの中に展開していたから、久しぶりに見た気がする。
「……」
「……? あの、何か?」
三井さんが次元ポケットを見て固まっている。
「俺の知ってる次元ポケットより広い口だなぁって」
「そうなんですか? 俺は他の次元ポケットを知らないんで……ん?」
視界の端に異物が見えた。それを追う様に見ると、魚人型モンスターが三体向かってくるではないか。
「モンスター! 次元ポケット開けておくんで、速攻で倒してきます!」
三井さんに翻してモンスターに駆ける。まだ距離があるが先手必勝だ。
「……手の平だけに展開できるんじゃないの? 次元ポケットって空間に展開できるものだっけ……。しかも使用者めっちゃ離れてるのにまだここにある。……勇次郎何者ッスか」
俺は知らず知らずのうちにやらかしていた。
136
お気に入りに追加
430
あなたにおすすめの小説
もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~
ゆるり
ファンタジー
☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞しました!☆
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様にて先行公開しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)
朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。
「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」
生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。
十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。
そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。
魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。
※『小説家になろう』でも掲載しています。
異世界転生令嬢、出奔する
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました(2巻発売中です)
アリア・エランダル辺境伯令嬢(十才)は家族に疎まれ、使用人以下の暮らしに追いやられていた。
高熱を出して粗末な部屋で寝込んでいた時、唐突に思い出す。
自分が異世界に転生した、元日本人OLであったことを。
魂の管理人から授かったスキルを使い、思い入れも全くない、むしろ憎しみしか覚えない実家を出奔することを固く心に誓った。
この最強の『無限収納EX』スキルを使って、元々は私のものだった財産を根こそぎ奪ってやる!
外見だけは可憐な少女は逞しく異世界をサバイバルする。
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる