56 / 174
第56話 仲間のジョブ
しおりを挟むパチパチと焚き火の音が響きわたるセーフエリア。
眠りから目が覚めゆっくりと目を開き、フッと横を見るといつの間にか皆も喋るのを止めていた。
話をしていたリッコとプルンはお互いに体を支え合うように寝ているし。
リッケは火の番と起きてはいるが頭が少し船をこいでいる。
リックはショートランスを腕に巻き目をつむり休んでいた。
(皆疲れてるんだよな……。一度外へ帰った方が良いかな……)
「あっ、ミツ君。起きられましたか」
「リッケ。うん、ごめんね少し寝てたみたい」
「いえ、良いんですよ。皆も初めての洞窟探索で色々とありましたからね。今じゃ昼でも疲れて寝てしまう程です。とくにミツ君は僕達より頑張ってますから」
「そんな……。皆だって凄いくらい頑張ってると思うよ」
「ありがとうございます。でも此処までこれたのもミツ君が居てこそですから。僕達だけでは元々2階層までしか来れない場所ですし」
「そうだぜ。俺達だけなら恐らくとっくに引き上げてるかも知れねえしな」
「リック。ごめん、起こしちゃったかな」
「いや、構わねえよ。そこの二人みたいにヨダレ垂らしてまで深くは寝てねえからな」
「えっ……」
「んっ~ん」
「すニャー」
リックの言葉にまさかと思い、寝ている女の子二人を見ると言葉は冗談だったのか、二人はヨダレを垂らして寝ている訳ではなかった。
「あっ。そうだ、二人とも休憩の間にジョブを変えとかない? これからも戦い続けるならジョブは変えちゃおうよ」
「はぁ?」
「えっ?」
自分の言葉に二人は鳩が豆鉄砲を食らったかのようにその表情はキョトンとしていた。
「えーと、あのよ。ジョブ変更には普通判別晶が必要でな」
「うん、知ってる」
「確かミツ君は自身でジョブを変えれるんでしたよね? 残念ですけど僕達はそれは出来ないので一度判別晶がある場所へと行かないと……」
「大丈夫。判別晶ならあるから。ほらっ」
「ブッ!」
「うゎ! リック汚いです!」
アイテムボックスに腕を入れ、シャロット様から先程もらった判別晶をリッケ達の前にごく普通に出す。
するといきなりの出来事に驚きに、お茶を飲んでいたリックが口に含んだ飲み物を焚き火越しのリッケヘと吹きかけてしまった。
「ゴホッゴホッゴホッ……わっ、悪い。ゴホッ! ゴホッ!」
「大丈夫リック?」
「ゴホッ、へっ、変な所に入った……。ゴホッ……ゴホッ」
「リック、ほら落ち着いて」
「はー……はー……」
「ごめんね、リックの飲む時に狙って出したわけじゃ無いんだけど」
「いや、気にしなくて良いから。はーはー……。そんな事より何でお前がそれ持ってるんだよ!」
「そうですよミツ君。判別晶自体は珍しい物ではありませんが個人での所有なんて僕は聞いた事ありませんよ?」
「俺もだ」
「えーと。プレゼントで貰ったから?」
「なんで疑問形なんだよ!」
流石に夢の中で神様に貰ったと本当の事を言ったとしても信じられないだろうし。
「それより何ですかその判別晶。色といい作りといい、貴族が持つような芸術品ですか? そんな物を贈り物ってどんな人ですか?」
「お前、本当は何処かの貴族じゃねえだろうな……」
「いえ、リック。貴族以上かもしれません……。こんな物を贈られる程ですから、もしかしたら何処かの王族とか……」
「ないない。自分は普通の旅人だよ」
そんな言葉を聞いた二人は訝しげな視線を自分に送りながらも、内心本当に貴族か王族なんじゃないかと疑っていた。
「「……」」
「えーっと……。ジョブ変えない?」
「おう……」
「そうですね……。せっかくなので使わせて頂きましょう」
「二人はどうする?」
寝ているプルンとリッコを見ながら聞くが、直ぐにリックが起こす事を止めてきた。
「先に俺達の変更を先にしちまおうぜ。こいつらに選ばせると時間食っちまいそうだし」
「ははっ。リッコが初めて判別晶使った時は選ぶのに時間かかりましたからね。あの時は結局リックは先に決めて帰っちゃいましたし」
「俺は前衛職の2つしか出て無かったからな」
「じゃ、二人を先にしようか」
「おう! サンキューなミツ!」
「ありがとうございますミツ君」
(でさ、ユイシス。この判別晶って覗けばいいの?)
《ミツ。ご主人様から受け取ったのは判別晶ではありません(森羅の鏡)と言う名の〖神器〗ですよ》
(……はっ? 神器? what?)
ユイシスの言葉に一瞬時間が止まる。
自分も元ゲーマーである、神器と付く名前の物の凄さを知っているだけに、現実として今自身の手に持つ物がその凄い神器の道具だとは思っていなかった為にじわじわと手汗が出てくる程だ。
(そっ、それは判別晶としては使っても大丈夫なの?)
《はい。森羅の鏡はジョブを変更するにも使用できます》
(そうなんだ……。取り敢えず詳しい説明は後で教えて貰おうかな)
《解りました》
「ミツ君?」
「んっ? おい。大丈夫か?」
鏡を見つめたまま表情を固めた自分を心配し声をかける二人。
「あっ、ごめん。えーと、どっちから使う?」
「リック先にどうぞ。僕は後でも構いませんから」
「そうか? なら先に使わせてもらうぜ。さて何になれるかワクワクすんな」
「どれどれ……」
リックが森羅の鏡を覗き込む覗と、その姿を映していた。
すると、ブワッと虹色の淡い光を表面から出し始めると、その鏡の表面を流れる様に光が走り、光自体が文字と変わっていった。
【ソードマン】
【ライダー】
【アーチャー】
【ウォーリアー】
【ファランクス】
ユラユラとゆれ表示されたのは5つのジョブの項目だった
(ファランクス? 見た事無いジョブだ)
《【ファランクス】身を鎧で硬め槍術と盾術を得意とするジョブです》
(今リックのランサーと違いはあるの?)
《【ファランクス】と【ランサー】の違いは槍術の技量の違いと扱える槍の種類が増える事。また、戦闘技量の上昇です。ショートランスをメインとする【ランサー】ですが【ファランクス】は槍に関しては制限はありません。さらに【ファランクス】は盾術を使いこなす事もできます》
(なるほどね、槍と盾使いか)
「凄いですねリック! 5つもジョブが表示されてますよ」
「おっ、おう……。俺もビックリだわ」
リックの表示されたジョブの数を見て珍しく弟のリッケのテンション我高い。
「リック、以前と比べてどれが増えたの?」
「えーっと確か。前はソードマンとランサーの2つだけだったかな」
(ねぇ、ユイシス。この表示されてるジョブで上位になれるのってある?)
《御座います【ランサー】を極めました今のリックは【ウォーリアー】を極めますと上位の【ブラックウォーリアー】また【ファランクス】を極めると上位の【カタフラクト】のジョブが表示されます》
(どっちも聞いた事無いなー)
《【ブラックウォーリアー】は攻撃特化型のジョブ【カタフラクト】は守備特化型のジョブとなります》
(なるほど……攻撃か守備か)
「ねぇ、リック。リックは今後どう強くなりたい?」
「えっ? そうだな……。お前の言った通り色々なジョブを経験して強くはなりたいかな」
「そう、ならライダーは選択から外されるかな」
「おう。後出来れば戦い方を変えたくないんだけど、そんなの無理だよな?」
「戦い方って。前で戦うって事?」
「まぁ。お前の勧めで確かに他のジョブで色々な位置やるのも良いかもしれねえがな。俺はどうも誰かの後ろで戦うってのが我慢できそうもねえし」
リックはその様に言ってはいるが、内心では弟妹を守る位置から離れたくないと言う兄としての気持ちがあるのだろう。
「フフッ。優しいねリックは」
「はっ! 莫迦ちがっ! 勘違いするならよ、俺は前で戦いたいだけだ。それにお前みたいな器用さは俺にはねえんだよ!」
自分の短い言葉の意味を理解したのか、リックは悪態を吐くも慌てる様に言葉を返す姿は嘘を隠しきれないのがバレバレである。
「はいはい、ならアーチャーもなしだね」
「ではソードマンかウォーリアーと後はこれ、僕は知りませんがファランクスですか? この3つから選ぶんですか」
「ソードマンはねえわ。俺は親父と同じ物は使いたくねえし」
「親父? リック達のお父さんって冒険者なの?」
「元な。お袋と結婚してからは引退したんだよ。冒険者じゃ生活は安定しないからって」
「今は冒険者の経験で街の衛兵の仕事をやってますよ」
「だから俺は親父とは別の物で戦いたいんだ」
「ははっ……。父さんリックの為に剣用意してくれてたのに、可愛そうに」
「馬鹿野郎! 親父の剣なんか受け取ってみろ! 自分が剣が得意なだけに、とことん修行だ~訓練だ~とかで鍛えられさせられるに決まってる!」
「あはは……。 僕もそう思います。僕もクレリックになってからも何度も剣を勧められましたから……」
「あの親父……聖職者に剣とかアホだろ……」
「流石に母さんが止めてくれましたけどね」
「面白いお父さんだね」
「フンッ。面倒くせえだけだ。それより話がそれちまったな」
「なら、ウォーリアーかファランクスかな。両方とも次のジョブはリックを強くしてくれるジョブだよ」
「おっ、そうか! ……っておい!」
「んっ? どうしたのリック?」
自分の何気ない返答に少し疑問に思ったのか、リックは驚きと声を上げた。
それに合わせた様にリッケも驚き顔で自分を見ている。
「ミツ君……。まさかジョブの先が解るんですか?」
「えーっと……。なんとなく?」
「だから何で疑問形なんだよ!」
「は~、まあまあ良いじゃないですかリック。それよりもどっちにするんですか?」
「そうだなー。ウォーリアーにすると今の武器って継続して使えねぇーのかな?」
「どうだろうね。ランサーと同じ前衛職に変わりはないけど扱う武器が先ず違うのは確かだろうし」
「ウォーリアーって何装備してましたっけ?」
「えーと、確か冒険者ギルドで見たことあるな。何だったか……ハンマー? いや剣っぽいのを背負ってた気が……」
「ウォーリアーは斧と大剣よ」
三人で話し込んでいる中、一人の声が後ろから聞こえてきた。
「そうそう、斧と大剣だ。ってあれ? お前ら起きてたのか」
「起きるに決まってるでしょ。あんな大きな声出しといて……ふぁ、あ~」
「そうニャ、リックの声は大きすぎるニャ……。ニャ~、ムニャムニャ」
自分が後ろを振り向くと先程まで寝ていたリッコとプルンが起きている。
二人はまだ寝起きで眠いのか、あくびを手で隠し座った状態で手足を伸ばしていた。
「二人ともまだ眠そうだね。お茶でも出そうか?」
「ん~、お願いするわ」
「ウチもよろしくニャ~」
「はいはい、ちょっと待っててね」
寝起きという事でまたココアでも出そうと思ったがホットミルクの方が疲れには優しいのでそちらを出す事にした。
そんな事が無意識に解ってしまうのは【料理人】の料理スキルの効果なのだろうかと考えながらミルクを温めていた。
「ふ~。美味しいー」
「プハッーうまいニャー! ありがとうニャ、ミツ」
「はい、お粗末さまですよ」
「ところでアンタそんなの持ってたのね」
「うっ、うん、まーね」
「本当、判別晶なんて持ち歩く奴が居るとはね~。リックちょっとそれ貸して」
「おいおい、先に俺が使ってんだろ、見たらわかるだろう」
「良いじゃない、あんたレディーファーストって言葉知らないの?」
「知らん!」
「フンッ! 良いから貸しなさいよ!」
「お前は選ぶのが遅いんだよ! 先に俺達が選んだ方が後でゆっくり選べるだろうが! 痛え! 足! 足踏むんじゃねーよ!」
「……。それもそうね」
「ふー。 くそっ、ゆっくりと選べもできねえのかよ」
森羅の鏡を求めて少々兄妹喧嘩が起きてしまった、だがもうこのパーティーではお馴染みの光景だけに誰も止めるようなことはしなかった。
「まぁまぁ。僕は最後でも良いですから、先にリックのジョブを選んでしまいましょうよ」
「あぁ。ウォーリアーが斧と大剣だったよな。ファランクスの武器はなんだ?」
「ウチは知らないニャよ」
「私も知らないわよ」
「リック、ファランクスの武器は槍と盾だよ」
「まじかよ!」
プルンもリッコも【ファランクス】自体を知らないので扱う武器が何なのかを知る訳がない。
先程ユイシスから教えてもらった内容を皆に伝えた。
「うん。ちなみにウォーリアーになるとリックの戦闘スタイルが変わって攻撃型になるから武器や防具は変えないとね。ファランクスなら今の装備使い回して守備型で維持できるよ」
「おっ、ラッキー。ならファランクスにするかな」
「うん、じゃー決まりだね」
自分の説明に納得したのかリックの次のジョブは【ファランクス】に決定した。
「安い男ね~、そんなので決めていいの?」
「五月蝿え、使い慣れた武器が良いんだよ!」
「フフッ」
「どうしたのリッケ?」
また言い合いを始める二人を見てくすりと笑うリッケ。
そんなリッケに何があったのかと質問してみた。
「いえ。リッコは忘れてるかもしれませんがね、あの武器は僕達が初めての依頼をこなして貰った報酬で買った武器なんですよ。リックはそれ以来武器を買い変えて無いんです、恐らくお気に入りと言うか思い入れがあるんですよきっと。フフッ、この事はナイショですよ。」
「そうなんだ……」
「全く! 自分の身長に合った奴買いなさいよ! いつまで同じ武器使ってんのよ」
「バ~カ! 武器は使い込んでこそ味が出るんだよ」
「はいはい、二人ともリックのジョブを変えますよ」
「おっ、おう。そうだった」
「さっさとしなさいよ」
「おまっ」
「はいはい。リック選んでください」
「フンッ!」
リックはジョブを変える為にと鏡の表面光の文字を指で触れる。
すると選ばれたジョブ【ファランクス】の文字を残して他のジョブはスッと光の文字を消した。
【ファランクス】を選んだ事で中央にあった光の文字は上へと移動、するとまた新たな文字がジョブの下に次々と表示されてきたのだ。
「おぉ!」
「えっ!」
「こ、これって……」
「何ニャ!」
(あれ? ユイシスこれは……)
森羅の鏡を覗き込む面々。
新たに出た光の文字を見ると皆が驚きの声を上げていたが、ただ自分だけがその表記に見覚えがあったのだ。
《はい。森羅の鏡でのジョブ変更時にはミツと同じ様に習得可能スキルが表示されます》
(あーやっぱり)
いつも見慣れているウインドウ画面。
それと似たように森羅の鏡には数個のスキル名が表示されていた。
「おい、ミツ……。これってスキルの名前だよな?」
「えーっと。そうだね、リックのファランクスのスキルだね」
自分から見ると表示された文字は日本語表示だが、リック達から見るとやはりこの世界の人達の言語文字なのだろうか? リッコが隣で表示された文字を順番に読み上げているが確かにスキルの名前である。
「これは選ぶのか?」
「みたいだね」
「そっ、そうか……」
恐る恐るとリックの選んだスキルは〈槍術上昇〉〈盾術上昇〉〈カウンターシールド〉〈シールドアタック〉等の盾のスキルをメインとして複数選んだ。
突然の事で少し混乱気味のリック。
スキルの取り間違えを防ぐために、隣で自分は見た事あるスキルの説明を入れながら選ぶスキルを選択し、ユイシスからは見たことの無いスキルと限定スキルを教えてもらい、さりげなくリックへとオススメとして助言を入れた。
そして数個のスキルを選び終わったと同時にまた森羅の鏡は淡い光を出すとゆっくりと光は消えた。
そして表面は普通の鏡へと戻ったのだ。
「これで変わったの?」
「見た目変わんないニャ」
「そりゃ変わったのはジョブだからね、見た目変わったら怖いでしょ」
「どうです、リック?」
「……。 あぁ。凄え! 槍と盾が手に馴染むみてえだ! しかもさっき選んだスキルが使える感じもする! 凄え! 凄えぜミツ!」
ジョブを変更後、森羅の鏡を自分に返したリックは直ぐに自身の得物である槍と盾を構えた。
すると驚き顔に槍を握りしめ、盾を前に構えた途端リックは新スキルの〈シールドアタック〉を発動させた。
盾は少し前突き出しただけだが、鞭が空気を叩く時と同じ様な衝撃音を出したのだ。スキルを使った本人だけではなく周りの皆まで驚きの表情を浮かべていた。
そんな兄のリックが出した新スキルを見たリッコが座っていた岩場から降り、急ぎ足に自分の持つ森羅の鏡の腕をガシッと掴んできた。
「ミツ、次は私に貸して!」
「はい。勿論どうぞ」
「凄え! 凄え!」
連続で〈シールドアタック〉を使用し、バンッバンッと衝撃音を連続出だしながら歓喜の声を出すリック。
「リック五月蝿いわよ!」
「リッコ、早く! 早くウチも使わせてニャ」
「ちょっと待ってよプルン。次に渡すから」
自分から森羅の鏡を受け取るリッコ。プルンと少し取り合いになったがここは早いもの勝ちとしてリッコが先に使う事になった。
リック同様に鏡を覗き込むリッコ。
その顔を映し出すと鏡の面にはリッコのジョブ候補が次々と並んでいた。
【クレリック】
【ハイウィザード】
【アーチャー】
【サマナー】
【ブレイズナイト】
【ヴァルキリー】
リッコに表示されたのは6つのジョブ。
「凄い! 見て見てミツ! 私6つもジョブなれるわよ!」
「うん、凄いねリッコ。しかも自分も見た事無いジョブもある」
「凄いニャリッコ!」
「リッコも最初は確かリックと同じ2つだけでしたよね」
(ユイシス、ハイウィザードはウィザードの次になれるジョブだよね? これは自分には表示されてなかったんだけど。後、他のブレイズナイトとヴァルキリーって何?)
《はい、先ず【ハイウィザード】ですが一定数のモンスターを魔法攻撃にて討伐と一定の魔力数が必要とします。ミツのステータスでは魔力条件はクリアーしておりますが魔法攻撃での討伐数が不足の為まだジョブ変更は出来ません》
(あれっ? 自分も結構モンスター倒してたつもりだけど……。あっ、バルモンキーの群れもスケルトンの群れも倒したのは忍術のスキルだったか)
《肯定です。次に【ブレイズナイト】と【ヴァルキリー】此方は両方とも女性限定スキルとなります。【ブレイズナイト】は剣と槍、又はエストック等の剣術に優れたジョブとなります。【ヴァルキリー】は剣と槍と魔法を兼ね備えその能力によって成長が変わります》
(女性限定の剣士と魔法剣士見たいな物かな? リッコは上位ジョブになれるのはある?)
《御座います【ウィッチ】を極めました今のリッコは【サマナー】を極めますと上位の【セイレーン】また【ヴァルキリー】を極めますと【フレイア】若しくは【アマゾーン】が表示されます。また【アーチャー】を極めますと【マジックハンター】も表示されます》
(そっか。ありがとう)
元々魔力の高いリッコ【ウィッチ】を極めた後に次のジョブを極めると多くの上位ジョブになれるとか、リッコは天才肌なのではないのか?
「んー。どれにしようかしら」
「どれを悩んでるの?」
「んっ? いや、私もこのまま魔術士で行くか、あんたと同じアーチャーか、リッケのクレリックを経験するか悩んでるのよ」
「えーっとね……」
自分はリッコに先程ユイシスから教えてもらった事を説明した。
「そうなんだ、って。何で男のあんたが女性のジョブにそんなに詳しいのよ」
「何となく?」
「はぁ……。何で疑問文なのよ。まぁ良いわ、私も戦いのスタイルを変える気は無かったからね、クレリックは無いかしら」
「ならアーチャーやってみるかニャ?」
プルンが左腕を伸ば右手で弓を引くモーションを見せている。
「ん~、的に狙うって事を考えたらそれもありよね。でもヤッパリこれが気になるかしら」
「これってヴァルキリー?」
リッコの気になるジョブ【ヴァルキリー】を指を指してこちらに質問してきた。
「そうっ! これ相当強くなれるんでしょ!」
「んー、強くなるかはリッコ次第じゃないかな。でも他と比べたら確かにこれは自分から見てもオススメだと思うよ」
「そっ。ならこれでいいわ」
「決断が軽いニャ~」
「良いの良いの。私元から接近戦とか苦手だし。リックを壁に後ろから魔法撃ってたほうが楽だもん」
「お前そんな事考えてたのかよ……」
リッコの言葉にジト目で返すリック。
「あら? 可愛い妹を守る為なら兄なら喜んで守るでしょ」
少し小悪魔っぽく笑うリッコを見てリックは目を閉じて眉間に指を当て言葉を返してきた。
「はぁー。俺、初めてのモンスターの戦闘でお前から背中に火玉受けたんだけどな……」
「あははは……。ゴメンゴメン、あの時は私も緊張しちゃって手元が狂っちゃったのよ」
「そんな事が……」
「ウチ、今度から後ろにも注意して戦うニャ……」
「あの時は本気で死ぬかと思ったぜ……」
「解ります。見てた僕でもかなり焦りましたからね」
「もう。今はそんなヘマしないわよ。それよりジョブ選ぶわよ」
リッコが森羅の鏡をまた覗き込みジョブの【ヴァルキリー】を選択。
先程同様に選択された【ヴァルキリー】以外のジョブの名前は消え選択された【ヴァルキリー】が上に移動すると下には選択できるスキルが表示されていく。
表示されたスキルの中に〈魔法攻撃上昇〉や〈ライトニング〉等など自分が教えれるものはオススメとして教えて見たことの無い〈二頭の杖〉や〈魔法短縮〉気になる物はユイシスに聞いてみた。
《〈二頭の杖〉は杖を武器として戦うことのできるようになるスキルです〈魔法短縮〉は発動魔法後のディキャストタイムを50%減らすことができます、ちなみにヴァルキリーの限定スキルは〈魔法攻撃上昇〉と〈魔法短縮〉です》
(ありがとうね)
「リッコ、選ぶならこれとこれはオススメだよ、魔法関係の2つだけにリッコには使えるスキルだからね」
「えーっと、魔法攻撃上昇と魔法短縮ね、解ったわ。後は? なんか後2つ選べる感じするの」
(ふむ、無意識に取得数が解るのかな?)
「なら後はね……」
リッコも数個のスキルを選び終わったと同時にまた森羅の鏡は淡い光を出すとゆっくりと光は消えた。
そして表面はまた普通の鏡へと戻ったのだ。
「わぁー」
「リッコ、どうニャ? どうニャ?」
「うっ、うん……。 凄い、リックが驚くのも解るわ……」
〈魔法攻撃上昇〉と〈魔法短縮〉この2つを新たに手にしたリッコの戦いが楽しみだ。
「ミツ! ウチ、次はウチだニャ!」
そんなリッコを見てプルンが私もと早く使いたいとリッコから手渡された森羅の鏡を貸して貸してと両手を突き出してきている。
「はいはい、焦らなくても大丈夫だから」
「ニャー、本当綺麗だニャ……」
受け取った森羅の鏡を撫でるように触るプルン。
この世界の一般的な鏡は少し黄ばみがはいり、日本で当たり前のように使っている鏡ほど綺麗に姿を写してはくれない。
プルンがジッと見ていると虹色の文字が浮かび上がってきた。
「出てきたね、どれどれ」
「ちょっと二人とも少し離れなさいよ、私が見えないでしょ」
「ニッニャニャ! そうニャ! ちっ、近いニャよ! 皆が見えないニャよ」
「おっと。ゴメンねプルン」
「~~~」
自分も他の人のジョブは気になる物、少しプルンに近すぎたのかリッコの言葉に反応したのか、プルンは恥ずかしさのあまりに自身の手のひらを目隠しのように自分の顔に押し当て押し返した。
そして、表示されたプルンの転職可能ジョブの一覧。
【ソードマン】
【シーフ】
【武道家】
【ヴァルキリー】
プルンに表示されたのは4つのジョブだった。
「ニャー。ウチは4つニャ」
「でも私と同じ物もあるじゃない。数があってもなれなきゃ意味ないわよ」
(ぐはっ! リッコさん、その言葉は胸に刺さるな)
「なぁ。プルンって今はモンクだよな?」
「そうニャ?」
「武道家とモンクって同じなんじゃね?」
「あんた莫迦ねー。モンクと武道家が同じな訳ないじゃないの。いい? モンクは修行僧、武道家とは全然違うじゃない」
「そうなのか?」
「そうですね。同じ格闘のジョブですけど中身は違うはずです」
「ふ~ん」
「なら、モンクの次が武道家なのかな」
「ニャらウチはこれ以外にするニャ」
「じゃあ私と同じにする? 前のヴァルキリーと後ろのヴァルキリーでカッコイイじゃない!」
「そうにゃ~」
「同じパーティーに同じジョブの奴が二人も必要か?」
「いいじゃない」
(ユイシス、プルンもヴァルキリーになったら上位が出るのかな?)
《いえ。残念ですが魔力を持たないプルンは【ヴァルキリー】を極めたとしても上位の【フレイア】と【アマゾーン】は表示されません》
(あーそうなんだ……。魔力か……。なら上位ってプルンには無いのかな……?)
《いえ、御座います。【モンク】を極めたプルンが【シーフ】を極めますと【アドベンチャラー】が表示されます》
(良かった、プルンにも上位があった。しかし、アドベンチャラー? えーっと、冒険家?)
《肯定です。【アドベンチャラー】身軽な運動能力を持ち合わせ、敵の探査能力の方、戦闘スキルを多彩に持ち合わせてます》
(身軽な運動能力か。プルンにはピッタリなジョブだね)
「んー。ニャらウチもヴァルキリーかニャ」
「待ってプルン!」
「ニャ?」
「どうしたのよミツ」
プルンが【ヴァルキリー】のジョブを選択しようとする腕を掴み止め、直ぐにユイシスに教えてもらった事を伝える。
「あっ、いや。プルンはモンクの経験はヴァルキリーじゃあんまり使えないと思うんだよね」
「そうニャ? でもスキル増やせば戦えるニャよ?」
「うっ、うん。そうなんだけど……プルンにはこっちがいいんじゃないかなと……」
「シーフ?」
「ニャ! 何でニャ!? シーフの方が強いニャ?」
「いや、プルンの場合こっちの方が強くなる~、ような気がする」
「ニャー」
「また疑問文」
訝しげな視線を送ってくるリッコ、プルンは自分がオススメとしたシーフの虹色に輝く項目を見つめていた。
「プルンさん、ミツ君を信じてみましょうよ。確かにジョブの選択は大切ですけど、仲間の言葉も大切ですよ」
リッケの言葉にジッと項目を見つめるプルン、そして自身が次になるジョブを決めたのかコクリと頷いた。
「……。 解ったニャ! ウチはミツを信じるニャ! ごめんニャリッコ、同じジョブになれなくて」
気持ちが決まったのか、プルンの選んだジョブは【シーフ】のようだ。
「いいのよプルン。ミツを信じて見ましょうよ」
「そうだぜプルン、もし駄目だったらミツに責任取ってもらえば良いさ」
「せっ、責任ニャ……」
「何莫迦言ってんのよ!」
リックの何気ない一言がプルンの顔を赤くし、またリッコの顔も赤くした。
この場合プルンは恥ずかしさで、リッコは怒りで顔色を変えてるのだろう。
リッコが怒っているのが何故わかったと? それは簡単にリッコの目つきが怖かった、うんそれはそれは怖かった。
リックに関しては怖かったよりも痛かったの方が正しいかもしれない、いきなり妹の肘鉄を自身の腹に受けたのだから。
「痛ってー!」
「まあまあ。それよりプルンさん選んじゃいましょう」
リッコからの攻撃にリックがダメージを受けてもリッケはスルーとそのままに話を進めた。
「そっ、そうニャ。ウチはシーフになるニャ!」
プルンが【シーフ】を選んだ後に出てきたスキル項目は以前自分が見たことのあるスキル一覧と同じだった。これならユイシスに聞かなくても自分がオススメと言えるものを教えることができる。
以前聞いたが【シーフ】の限定スキルは〈ロックピック〉と〈アンロックドア〉この2つだ。だが自分はこのスキルを手に入れたが使いどころが未だにない……。ならば使いどころが必要なスキルを選ぶべきだろう。
そしてプルンが選んだのは〈交渉術〉〈ポイズントラップ〉〈トラップ探知〉〈解毒〉の4つだった。
「ん~。あんまり実感ないニャ」
「二人と違って能力上げるスキルはシーフには無いからね。でもスピードは上がると思うよ、後でポイズントラップとトラップ探知そして解毒を試してみようか」
「そうニャそうするニャ。それとミツ、後で組手の相手を頼むニャ」
「いいよ」
「ニャ」
プルンは満足そうに森羅の鏡を返してきた。
「では最後は僕ですね。ミツ君、判別晶お借りしても良いですか?」
「はい、どうぞ」
そして今度はリッケに鏡を渡す、もう次に使うのがリッケだとわかってるんだからそのままバトンの様に渡してもいいのに律儀に毎回皆は返してくれる。
「ありがとうございます」
「なんだか私自分の見る時より他の人の見る方が楽しくなるわ」
「解る! その人がどうなるか気になるのもあるもんね」
「そうそう!」
「僕は見られて緊張しますけど……」
「何言ってんのよ、あんたも私達の見たんだからおあいこよ」
「出たニャ!」
「どれどれ」
表示された文字を覗き込む面々。
【ソードマン】
【プリースト】
【ヒーラー】
【ウィザード】
森羅の鏡に表示されたのは4つのジョブだった。
「僕もプルンさんと同じで4つですね」
(多分リッコは女性限定ジョブがあったから6つも表示されたんだろうな。だとしたら、平均で4~5個のジョブが変更の時に表示されるのかな?)
「前衛が1、支援が2、後衛が1ですね。結果を見たら僕らしいかもしれません」
「でも凄いよ、ヒーラーが表示されてる」
「これって凄いんですか?」
「うん、自分がリッケとリッコに使った魔力を渡すスキルはこれから取得できるんだよ」
「へー、そうなんですね」
「ん?……。ねぇ、今の言葉だとミツもヒーラーになった様に私には聞こえたんだけど……」
「俺もだ……」
「ウチもニャ……」
「うん、確かにヒーラーはやってたよ」
「しかも過去形だぜ!」
自分の言葉にキレのあるツッコミを入れてくるリック、またかと呆れるリッコ、あははともう笑うしかないプルン。
「はぁ、まぁ良いわ。ところでリッケどれにするの?」
「……」
「リッケ?」
「あっ、すみません」
「いや、別に良いのよ。私達は終わっちゃったからゆっくり決めてもらっても」
「はい。ところでミツ君、僕にあった……。いえ、この中で僕が強くなれるジョブってありますか?」
(強く……。ジョブ変更して逆に弱くなるってことあるのかな? まぁリッケの言いたいことは解るけど)
(ねぇ、ユイシス。この中だとソードマン極めて【パラディン】くらいかな?)
《はい、それもありますが【クレリック】を極めたリッケが【ソードマン】を極めると追加として条件を満たせば【センチュリオ】が表示されます》
(センチュリオ? それって強いの?)
《【センチュリオ】高い剣術と高い戦術を取得でき、統率力を高く持つ条件上位ジョブです》
(条件上位ジョブ、初めて聞いたよ。ところでその条件って何?)
《はい、先ず治療士にて一定数の治療を行った後に、転職し剣士になり治療した数以上のモンスター討伐を自身の力で成す事。更には一定以上の人からの信頼を必要とします》
(難しくないそれ……。回復した人の数って、ある意味今まで食べてきたパンの数を言い当てる物と同じじゃん、無理だよね)
《リッケの今までの治療した人数は86人です》
(はい直ぐに解りましたー。流石ユイシス)
(まぁ、取り敢えずその数をリッケに倒させれば【センチュリオ】が表示されるのね、ありがとうユイシス)
「リッケ、もし強くなりたいならソードマンになるのが良いよ。」
「ソードマンですか……」
「うん、そう。ソードマンを極めれば一旦パラディンってのが出るよ」
「パラディン……。何だか強そうですね!」
「うん、でもまだだよ……」
先程のユイシスの言葉を細かく説明すると条件が皆もそれは面倒くさいと思ったのだろう、聞いている皆の表情は呆れ顔や難しい顔または引きつったような顔と三者三様のように皆の表情はバラバラだった。だがそれを聞いたリッケだけは真面目に説明を聞いて最後は嬉しそうに自分に迫ってきた、いや男に迫られても嬉しくないからね。
「えっ……。それを! それをすれば僕は強くなれるんですか!」
「うっ、うん……たぶんね」
「そうですか……」
「どうするかはリッケが決めると良いよ」
「いえ、ミツ君のオススメでもありますからね。僕はソードマンになります!」
「まぁ……。お前が決めた事だ。お袋は何か言ってくるだろうが、親父は確実に喜ぶだろうな」
「あっ……」
「そうね、毎日剣の練習に付き合わされるでしょうけど怪我してもリッケ自身治療できるんだから問題ないし、それに加えて余計にお父さん張り切りそうよね」
「はぁ~」
「どうするリッケ……。止めとくかい?」
「いえ。止めません! 絶対僕は強くなるんです!」
「……なあ。こいつのこの勢いは何処から来てるんだ?」
「さぁ~。リッケってこんなに熱い男だったかしら?」
「多分マネさんがきっかけじゃないかな?」
「ニャ? マネ?」
「みみっ、ミツ君! なっ何、何を言い出すんですか! 僕は純粋に強くなりたいだけで……そんな強さとジョブとマネさんとは関係ないんですよ!」
マネと言う言葉に反応したリッケ。
ってか明らかに動揺しすぎだしそんな反応したら女の子達が喜ぶだけだよ。ってかそんな激しく身体を揺らさないで、ってか何でそんな力あるの? リッケさんあなた支援職だよね?
「解った、解ったから。リッケ落ち着いて。リック達も解ったと思うから」
「おっ、おう……。あれだ、男なら強さを求めるのは普通……だしな……」
弟の見たことない姿に兄もどう接すれば良いのか、またどう言葉を返せば良いのか悩むリック。
「ニヤニヤ~」
「ニヤニヤニャ~」
「はい! もうこの話はもういいですから! もうジョブ変えますよ」
「ニヤニヤ~」
「ニヤニヤニャ~」
「二人ともしつこいですよ!」
珍しくリッケが怒った。
それは顔を真っ赤にしてだ、初々しいねリッケさんや。
「これで僕もソードマンですね」
「うん、おめでとう」
「おめでとうニャ」
「おめでとさん」
リッケの選んだスキルは〈剣術上昇〉や基本的には必要最低限のスキルだけだ。
自分とはちがい追加でスキルを後々モンスターから取得できるわけでは無い。
ならばと無理に攻撃スキルで固めるより本当に必要なスキルを選ぶことに、すると選んだスキルはそれほどに目立つ物ではない。
「と言っても武器も今は無いからな。洞窟出るまではリックは支援位置のままだからな」
「一応スケルトンから拾った武器はあるけど、これで戦うのは危ないよねー」
アイテムボックスから取り出す一本の剣、それはスケルトンが使っていたボロボロの武器だ。
「そうですね。いざという時に剣が折れたりしたら危険ですし」
少し残念そうなリッケ。
元々支援職から前衛職に変わる予定もなかったのだから、手元にあるのはスタナーの鈍器であり剣ではない。
剣と言える武器がないのはあたりまえだ。
そんなリッケに自分はある言葉をかけた。
「なら、リッケの武器を買いに行こうか」
「ん? 買い物って洞窟から出るの? あんたがそう言うなら私達は構わないけど」
「ミツ、ナックルの材料のエイバルの素材はいいニャ?」
「いや、一旦戻るだけだよ」
「ん~。戻るにしてもまたここまで来るんだろ? 時間かからねえか?」
「そうですね。ゼリさん達との約束も考えるとまた洞窟に入る時間もないですし……」
「大丈夫、直ぐに戻ってこれるから。ほらっ」
言葉の後、自分はシャロットがくじ箱で決めたスキルの〈トリップゲート〉を発動させた。すると何もなかった空間、そこに二本の白い線が現れそれが左右にブォンっとおとを鳴らしながら分かれる、線の周りをキラキラと星を散りばめた光と黒い靄が出ている。
「ニャッ!」
「あがっ!」
「ええっ!」
「うそっ!」
声をあげて驚く面々。皆口を開けて驚きだがプルンとリッコは女の子なんだからそんな顔はしない方がいいと思う。まぁ、原因は自分なんだけど。
「えーっと。あのお店からしてガンガさんのお店だね……。と言うことは裏手の材木屋さんの前かな、武器屋さんは近くだし成功だ。ってあれ? 皆行かないの?」
「あっああ、あん、あんた……。ちょちょっちょっと待って、ちょっと待って……」
「おいおいおいおい! 流石にちょっと、おいおい!」
「ニャ……ニャ……ニャ……」
「皆さん、ちゅょっとと、落ち、落ちつきましょしょ」
「ふむ……。えい(コーティングベール)」
〈トリップゲート〉を見て驚いている皆の後ろにたち、このままでは買い物にも行けないので一人一人に〈コーティングベール〉をかけて気分を再起動させる。
「ふー……。俺は夢を見てるのか? だとしたら何処から夢だったんだ? 」
「リック、皆が同じ夢を見るとかありえませんからね、しっかりして下さい、いや気持ちは凄く凄く凄ーく解りますよ」
「ニャー。流石にこれにはウチも驚いたニャ……」
「皆もう大丈夫?」
「いや、あんたが原因だからね! なに普通に皆大丈夫? よっ! 莫迦にしてんの? ねえ怒るわよ、もう怒っていい?」
自分のおでこに指をコンコンと何度も当てるリッコ。
「ごっ、ごめん……。取り敢えず買い物行こうか?」
「はぁ~。さっきの判別晶には驚きを耐えたのに。流石にこれは反則だわ」
大きなため息と共に頭を抱えるリッコ。
「えーっと。ミツ君質問良いでしょうか……。そのスキルは転移の扉と同じでしょうか?」
「違うよ。これはトリップゲートって言うスキルで自分が行った事ある処なら移動できるみたいだね。だからさっき見えたのはライアングルの街の露店外近くだったかな」
「はっ、はぁー……。なぜ自身のスキルに疑問文があったのかはもうスルーします」
「まぁ、お前ら取り敢えず装備を変えに行こうぜ。リッケに関しては自身で相当な数のモンスター倒さなきゃいけねぇみてえだしよ」
「すー……はー……すー……はー……よし! 行くわよ!」
「リッコ、気合い入れてるけど行くのは街ニャ。何を意気込んでるニャ?」
「解ってるわよ。気持ちよ、気持ちの問題」
「じゃ、皆一旦戻りで。」
「ニャ!」
(思ったんだけどさ、結局街に帰るのならシャロット様から最初からトリップゲートだけ貰えば良かったんじゃないかな……。いや、それは結局は結果論だし、気にしても意味はないか)
1
お気に入りに追加
706
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる