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篠原

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第十七章  栄真子の新婚、新居生活  ~すべてが初めてな新妻!~

第十七章 ㊴

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義姉の美織に送られて、機上の人となった
真子は、隣の席でグッスリと熟睡して
しまっている義時を見ながら思った。
「おいおい、熟年のカップルかよ」と。
 新婚ホヤホヤなら―実際新婚で、
実際新婚旅行なのだ―普通、飛行機内
でも、ずっと手をつないで、窓の外を
2人で眺めながら、「キレイ」、「君の
方が…」とかやるもんじゃないの!?
 まぁ、マンガの見過ぎかもしれない
けれど……。
 とにかく、ちょっと、不満アリだ。
でも、そんな不満も、これからの、
初・九州に対するワクワク感で、
すぐに消え去ってしまう。
なんて言ったって、真子にとっては、
人生初の九州、そして、当然だけれど、
人生初の新婚旅行―そして人生最後の
新婚旅行―なのだから!

徐々に、隣から聞こえてくる、配偶者の
いびきも、何か心地よく聞こえてくるから
不思議だ。
まぁ、これが、愛っていうものなのかな、
と思う。
 仮に、隣に座っているのが、見知らぬ
リーマンだったり、面識のない同性だったり
したら、ただ、鬱陶しいだけだろうけど。
……やっぱり、何だかんだ言っても、そう、
眠ってしまったとはいえ、最愛の人だから。
 隣にいるだけで安心感もあるし、
そう……分かった!
「いびきさえも、愛おしんだ!」
真子は合点した。で、何か、そんな自分が
面白くも、思える。


機内サービスが始まっても、彼は熟睡中だ。
真子は、彼が大嫌いで、絶対に飲まない、
コーヒーをもらって、静かに飲んだ。
もし、彼が起きてたら、「これ飲む?」
「じゃあ、俺のも?」と、なるのかも……
と、また考えてしまう。
 まぁ、そうはならなかったけど、良いか
……。

1人で、窓の外を見てみる。
壮大な風景だ。
日本人で良かったぁ……と思ってしまう、
おもわず。






そして。
月曜日の午前中。
新婚旅行初日の栄義時、真子は、
九州は長崎県。
長崎空港に、降り立った。
当然、真子は初九州。
そして、義時も、長崎は初めてだった。
噂では、坂が多いとか、雨の日が多いとか
聞くが、この日は晴天だった。
「神様のおかげだな」と、義時は思う。


で、空港を出て、バス乗り場に直行して、
2人は、バスに乗った。
白のワンピース姿の真子は、特別に
美しすぎて、隣に座った義時は、興奮した。
今度は、もう、眠れない…!


2人を乗せた大型のバスは、空港を出て、
一路、佐世保方面に向かう……。
最初の目的地は、真子が、決めた。
 そう。ガイドブックの写真を見て、
「絶対に、ここだッ!」ってピンときた。
有名な『ホームテンボス』だ!!!



童心に帰ったかのように楽しんでいる
真子を見て、義時も嬉しくて、楽しくて、
幸せだった。
その彼女の、いや、妻の、一瞬一瞬を
カメラに収めようと、必死になって
しまう。
妻の最高の笑顔、妻の最高に幸せそうな
表情を、全部、記録しておきたい…。


長崎を満喫する妻。
そして、その妻の姿を一瞬たりとも
逃すまいと、カメラを構えるのに必死な
配偶者・義時。
 どっからどう見ても、完全に、
新婚旅行に来ているカップルだ。



修学旅行か何かで来ていた制服姿の
女子学生達―多分中学生―が、
真子たちを見て、
「あれって……」
「うん、そうだね」
「新婚旅行だよね」
 と、ひそひそ話している。
女子たちは、憧れの視線で、真子を見つめて
いる。














(・著作権は、篠原元にあります


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