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篠原

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第十六章 義時と真子の挙式 ~純白のドレスと運動靴!?~

第十六章 ㊼

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そして……。あの愛媛旅行、弾丸日帰り旅行
から、二か月以上経った今、私は、
妊娠しています。
あんな生き方を続けていた私が、妊娠中の
妊婦なのです。
憂いと苛立ちでいっぱいだった、あの頃には
考えられないような、毎日を送っています。

全ては……と、私は思うんです。
そうです。
「全ては、雪子さんのお祈りのおかげ
だなぁ」と。



それまで完全に無縁だった、何より、
自分自身「一生縁がないだろうなぁ」と
考えていた、産婦人科の病院に行き、
正式に、「妊娠していますね」と言われる
まで、ずっと思いめぐらしていました。
「大丈夫!あの、雪子さんが、お祈りして
くれたんだから、絶対、妊娠できる」と。
そして、夫がいない時には、家の中で、
口ずさみました。
「お祈りしてもらったんだから!
絶対、すぐに、結果が出る」と、いつも
……。


まぁ、常識的にはムリだと分かって
いました。
調べて、それを知った時は、絶望的に
感じましたね。
それまでの自分を殴ってやりたくなり
ました。
ずっと、長い間、経口避妊薬を服用して
いると、服用をやめても、すぐには、
妊娠はない……と知って。



だからこそ、とにかく、不安になること、
そして、後悔することを防ぐために、
毎日、そういうことを思い考え、一人に
なれたら、告白して……。
そして、実際、経口避妊薬との縁を
断ち切って、夫に抱かれて……。






でも、力強いものです。
味方の存在は……。
ちょっと、揺るぎそうになっても、
思い出すんです。
あの雪子さんのことを……。
それまでに出会ってきたどの人物よりも
偉大と言っても、決して過言ではない、
あの人のことを。
「雪子さんが、お祈りしてくれたん
だから!
それに、今日も、愛媛でお祈りして
くれているんだ!」って。
それに、自分でも、雪子さんに教わった
ように、毎日、小さな十字架を見上げ
ながら、祈願していました、ずっと……。
「キリストの神様。どうか、こんな私
ですが、憐れんでください。子どもを
お与えください」と。


……私は、本当に、『こんな私』と言う
表現がピッタリな女なのです。
夫を、両親を、義父母を、騙し続けて
いた。
一人の女性として、家庭人として最低
です。妻、娘、嫁としても!!

それに、警察手帳を所持していると
言っても…。
子どもたちの憧れの警察官だとは
言っても…。

時に、被疑者に対し、非人間的な
対応をしてしまっている一面は、
否めません。
補導対象の青少年を前に、
「こんなクズ野郎を産んだアホ両親の
顔が見たいわ!!」とか「こんなクソ、
いっそ事件に巻き込まれりゃ良いんだ!」
って思うことも、多々あります。
本気で、「殺してやりたいッ!」って、
殺意を抱いてしまうことも少しじゃない。
まぁ、これらは、職務上しょうがないとか
『熱心に任務にあたっているから』と
言い訳がきくかもしれないですが…。
何度も刑事としての身分を「使った」
こともある
情報をながしたこともある。
それに、「もみけし」も……。

確かに、真子ちゃんを平戸から助けた
あの時には、純粋な正義心等から、規定や
法を無視する結果になりましたが、
利己的な感情や保身のために、一線を
超えることも度々、です…。


交通課にいる同僚に、頼んではいけない
ことを、それを分かっていながら頼んだ
ことを、今でも思い出します。
昔、ちょっと憧れていた、母方の従兄。
彼から久しぶりに電話がかかってきて…。
私は、彼が、阿佐ヶ谷中央署管内で、
駐車違反の件で揉めていることを知って、
同僚に裏から頼んだわけです。

あと、私自身も……。
独身時代、非番の日。
車を運転していて、気づいたら速度超過。
停止命令。
ハッとした時には、もう遅い。
交機の制服警官が、駆け寄って来て…。
車を止めて、車の窓を開けながら、
私は、再度ハッとしました。
私の車に近づいてくる警官は、警察学校
時代の同期……。
あっちも、私に気づいたようで。
私は、一瞬、「これ、いけるかな?」と
思ってしまったのです、事実。
それを……期待したのです。
とりあえず、彼に声をかけようとする
私に、彼は目配せし、手で「行け!」
と……。



私は、あの時、ちゃんと、切符の処理を
させるべきだったのに!
ホッとして、安心して、何より、
「うまくいったぁ!」、「アイツで
良かったぁ」と心の中でガッツポーズして、
その場を走り去ったのです。
彼が、私に好意を持っていたのを知って
いた狡賢い私は……。
もともと、免許証を彼に提示する意思も
なかったし、そうならないと踏んでいた
……。



他にも、生安課に配属されてからして
きた、規定違反やら地公法違反を全部
曝け出されたら、とんでもないことに
なるのです、絶対。
私は、本当に、本当に、そういう意味でも
『こんな女』なわけです。




















(著作権は、篠原元にあります)
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