追う者

篠原

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第十五章  挙式までの最終戦  ~巡り合うのは善か、悪か?~

第十五章 ㊴

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大きな大きな新品ランドセルを背負う
小さくて、かいわいらしい、
新小学1年生と、その両親と言うような
組み合わせが多い。
両親もみんな正装だ……。

どこの家族も、お父さんらしき男性が
カメラを構えて、いっぱいカシャカシャ
している。
微笑ましい……。
それと、ぎこちない感じの制服姿の
女の子達のグループもちらほらと……。
携帯で、桜をバックに写真を撮り合って
いる。
「新中学1年生だなぁ。可愛いなぁ」と、
真子は思った。


真子もみどりと一緒に駆けていく。
良い場所をおさえないといけない。

雪子も後ろからついてくる。
年の割に、しっかりとした足取りだ。


桜の木を見上げる、真子とみどりに、
雪子が声をかける。
「2人の写真、撮ってあげる。
カメラ貸して」。
「ありがとう!」。
真子は、携帯を預けた。




その日、真子とみどりの約束が、
やっと果たされた。

もう中学生ではない、それと、制服姿
ではない、大人になった2人……、
柳沼真子と不動みどり-両方とも姓が
かわっている-は、満開の桜の下で
並んだ。
2人の上から風に舞い桜の葉が
ひらひらと……。


真子の目からも涙が、はらはらと
零れ落ちていく。








4月上旬、紅阪泉の桜は満開だった
……。

















(著作権は、篠原元にあります)
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