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篠原

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第十五章  挙式までの最終戦  ~巡り合うのは善か、悪か?~

第十五章 ㊲

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(ここでは、第五章⑧と
時間枠が一致するので、
交互に読まれることをすすめる)












「お飲み物はいかがなさいますか?」。


……女性の、優しい声で、真子は、
『現実世界』に戻った。
ハッとする。
そうだ今飛行機の中なんだ……。

真子が、声の方に顔を上げると、
JASのキャビンアテンダントが、
優しい笑顔で見つめている。
真子より若いから、まだ、新人か、
それとも訓練生か……。


真子は、即答で、ジュースを頼む。
1月の時に飲んだ、リンゴジュースが
すごく美味しかったから。
そして、隣のみどりにも声をかけようと
すると……。
みどりは、機内誌を膝にして、口をぽかん
と開けて、ぐっすりと寝ていた。
今にも、機内誌が落ちかけている……。

真子は、リンゴジュースを渡してくれた
キャビンアテンダントに言った。
「あの……。後で、ブランケットを持って
きてもらえますか?彼女に、かけて
あげたいので」。
「かしこまりました」と、微笑む彼女。



そして、真子が思っていたよりも、早く、
その客室乗務員は、ブランケットを持って
来てくれた。
それに、「おかわりは、いかがですか」と
訊いてくれた!
真子は、本当に、嬉しかった。
だって、もっと飲みたかったから……。
なので、「お願いします!」。


そして、その後すぐに、彼女が、
リンゴジュースを持って来てくれた。
立ち去る彼女の後姿を見つめながら、
真子は思った。
「やっぱり、JASは良いなぁ。
これから、絶対、JASにしよう」と。





その後も、みどりは、熟睡だった。
「刑事って、本当に、大変なんだなぁ。
警察って、一般の人からは嫌われてる
けど、こういう警察官がいるから、
国民の安全な暮しがあるんだよね」と
思う。
なので、ずっと寝させてあげることに
した。


それで……。
みどりが起きたのは、ちょうど、
シートベルト着用サインが点灯した時、
だった。
「う~ん、よく寝たぁ」と、伸びを
する親友。
真子は、言った。
「みどりちゃん。ぐっすり、寝てたね。
もう、松山空港に到着だよ、下見てみて」。

「おぉ!!」と声をあげる不動刑事。
真子も、興奮してきた!
楽しい旅の始まり……、いや、もう
始まってるか。









……真子の腕時計は、8時45分を指して
いた。
「風向きの関係とかで、予定より早く
着いたんだなぁ」と思う。

松山空港の1階到着ロビー。
真子は、1人、立っていた。
みどりが、トイレに行っているから。


さて……。
「今日は、ここから、タクシーか」。
タクシーなら、どれ位だろう時間は。
それと、料金は……。

そう。
今回は、雪子のお迎えはナシだ。
と言うより、真子が、そうさせた。
老齢の雪子にわざわざ朝早く家を出させ、
空港まで迎えに来さすのは悪いと考えて
……。
でも、雪子は、「遠慮しないでええのよ。
お友達も一緒なんでしょ。
荷物もあるだろうし、行くわ」と言う。
なので、真子は言った。
「大丈夫よ。日帰りで、荷物もないし、
それに、カレーが食べたい!!
そっちで、朝食食べたいから、カレーを
用意して待ってて!」。


それで、雪子は、なんとか納得して
くれた。
それに、真子は、本当に、雪子の
『何度でもお替りしたくなる』
カレーが食べたかった!

そう。
あのカレー!
ジャム、コーヒー、鰹節、ケチャップ、
そして、あのすじ肉の!!
最高に、美味しいカレー!!!
この機会に、みどりにも食べさせて
あげたかった……。




みどりが、女子トイレの方から駆けて
来る。
「お待たせ~」。
笑顔で、迎える真子。


そして、2人は、空港を出て、すぐの所の
タクシー乗り場に向かう…。









松山の実家-雪子宅-に着いたのは、
真子の予想通り10時前だった……。
タクシーの運転手が驚くような細い道、
狭い道を、後部座席から指示して、
真子は、文字通り、『飛ばして』
もらった。

空腹だったし、それに、早く、雪子に
会いたい…。

隣には、警察官が座っているけれど、
まぁ、今日は、休日だし、愛媛県警の
人間じゃなく、警視庁の人間だから
……。
そして、真子の思いが通じたのかどうか、
みどりは何も言わなかった。
と言うより、みどりは、初めての松山市
の風景・光景に見とれていた…。




真子にとっては、結構時間が……、
みどりにとっては、あっという間……に、
松山空港から山と山の間のような田舎の
雪子宅に到着。
2人は、タクシーを降りた。

「わぁ!!」と少女のような声を上げ
ながら、みどりが、思い切り伸びを
する。
そして、満面の笑みで、「真子ちゃん!
めっちゃさ、空気が澄んでいて、気持ち
良いね!この自然の恵みさ、最高だよぉ
!!!」。
真子は、その、みどりの興奮度が、
新鮮だった。
ちょっと自分は慣れちゃってたかな
……と思う。
でも、そうだ、この自然は、都会じゃ
全く味わえない、素晴らしい恵みなんだ。

しばらく、若い女性2人は、雪子宅の
敷地前にある山の登り口の前で、
大自然を眺めた。
「あとで、この上に、登ろう。
池があるんだよ」と、真子。
「えッ!?絶対さ、行こう!」と、
みどり。


そう。別に、道後や市駅や城山の方に
行かなくても、こっちでも、1日なら
あっという間……。
真子は、そう思った。
でも、「まぁ、道後には連れてって
あげないとね」と、隣でキラキラ目を
光らせている親友を見た。





そして……、2人が、雪子宅-2階建て-
の玄関前に立ったのは、タクシーから
降りて、10分以上経った頃だった。


真子は、取っ手に手をのばす。
すぐに、玄関ドアが開く。
開きながら鳴る、懐かしい鈴の音……。
「懐かしいなぁ。それと、変わらない
なぁ」と思う。
そう。やっぱり、カギはかかって
なかった……。


真子は、中に入る。
懐かしい匂い。
入ってすぐ、左手の畳の間。
そして、正面には、2階への階段。

後ろから、「お邪魔します」と
言いながら、みどりも入って来た。
声がいつもと違う……。
緊張してるなと、真子は察した。
「まぁ、そりゃ、そうだよね。
他人の家、しかも、会ったことない
他人の家だもんね……」。


真子は、みどりに、靴を脱ぐように
すすめる。
奥にある台所の方から、トントンと
包丁をつかう音が聞こえてくる。
それと、カレーの匂いが……!!
そう。それは、玄関前に立った時から
してたけど…。
「じゃ、あっちだから。行こう」と、
真子は、昔自分が住んでいた『実家』の
奥へと、進む。












(著作権は、篠原元にあります)
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