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篠原

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第十四章  人生の春冬劇  ~関東で暴かれてくる秘密~

第十四章 ⑩

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いろいろ考えてしまっていたのですが、
義時君がエンジンを切り、話しかけて
きました。
「じゃっ、行こう!
あと少ししたら、かなり混み出すけど、
まだ、余裕あると思うから、ゆっくり
温まってね、今日は、寒いから!」と。


私は、ドキドキしながら、義時君の後に
付いて行きました。
2階建ての大きな建物。
木造の立派な作りです。
入り口の近くには、大きな池があり、
鯉がたくさん泳いでいました。
私が近寄ると、一斉に私の方に群がって
きます。
正直、一瞬、ヒキました。
そして、気づいたら、声を上げていた
ようで、義時君が笑ってました。
恥しかった…。
でも、すぐに、真面目な表情に戻り、
義時君は教えてくれました。
「エサをくれると思ったんだな、
コイツら……。
昼には、売店でエサを売ってね、
子どもたちや外人が、ここで、
エサやり体験みたいのしてるん
だけど、もう、夕方だから、腹ペコ
なんだわ、コイツら」と。
外国の人も来るんだぁ、と私は感心
しました。


さて、入り口の方へさらに近づきます。
何か木の香りが漂ってきます。
「心地良いな」と思いました。
そして、入り口をくぐると、
琴の音と言うのでしょうか、とにかく、
心落ち着く『和』の音が、私を迎えて
くれました。
「すごいなぁ!
色々工夫されてて……。
これは、近くの人は、リピになるな」と
思いました。
後日談ですが、これらの工夫は、
社長夫人で、彼の義姉にあたる美織さん
のアイデアによるものだと知ることに
なります。





スーパー銭湯【会傘の庄】。
中は、畳でした。
最高に、気持ち良い!!
畳の良い匂い。
そして、素足で歩ける幸せ…。
「お風呂出たら、裸足で歩こう!」
そう決めました。
これは外国の人にもウケるだろうし、
ご老人にも喜ばれて当然です!



義時君が、受付の方に向かいます。
私も付いていきます。
ちょうど、受付はすいていました。
それで、私たちが、受付の前に立つと、
中にいた高校生くらいのスタッフが、
驚いた表情をして、声を上げていました。
「あれッ!?
部長!!
今日は、お休みって聞いていましたけど
……」。
その子の後ろにいた中年のスタッフも
驚いています。


そんな彼女たちに、義時君は、
「いやね。ちょっと、連れて来たい人が
いたから、ご案内したんだ」と
言いながら、財布を取り出し、
「はい、一人分ね。大人の女性で……」
と言って、千円札を渡します。


その瞬間でした!
義時君と話す、その受付の女の子、
高校生くらいで、目のパッチリした
ショートヘアの女の子が、私をチラッと
見ました。
でも、すぐに目をそらす女の子……。
そして、義時君からの千円札を受け取り、
「はい。では、350円のおつりですね」
と言いながら、小銭を取り出しています。

そして、その子は、義時君におつりと
女性更衣室のロッカーキーを渡します。
でも、その瞬間、彼女手が、意味ありげに
義時君の手に触れるのを、私は見てしまい
ました!
ハッとしました。
そんな私を一瞬見て来る彼女。
目が合いました……。
「揶揄われてる……?」、そう思いました。



そんな私と彼女のコトには気づかない様子
の彼は、いつも通りの笑顔を向けながら、
私にロッカーキーを渡してくれました。
お礼を言う私。
「じゃ、あっち、行こうか」と言う彼。
でも、彼は、歩き出す前に、気が付いて
くれました。
ハッとして、言います。
「あっ!当然、タオルとかないよね」と。
そうなのです、ここに来るとは思っても
いなかったので、持って来ていません。


義時君が、すぐに、例の女の子に、
「タオルセット、一つね」と言いながら、
小銭を取り出そうとします。
すると、その子が、「部長、いいんじゃ
ないですか?それ位は、サービスって
ことで……」と言いながら、義時君に、
目くばせ……をしました!
そして、義時君も、「そうだよな……。
第一、入館料もいらなかったかな?」と
言って、笑います。
すると、彼女が、言ったのです。
「そうですね、多分。まぁ、家族優待
みたいのにすれば良かったんじゃない
ですかね……。あッ?!
でも、ご家族ではないですよね?
もしかして、ひょっとして、彼女さん
ですか?」。
それが訊きたかったんだな、この子。
もしかして、この子、義時君に……。

何か親しげな二人を見ていると、
私は、胸がキュッとしてきました。
だから、口を挟みました。
「あの……。タオル代とかは、私が
払うから」と、彼に対して、言いました。
その子にではなく……。
正直、「私以外の女とデレデレしない
でヨ!!」という思いもありましたが、
「何この女!!」という怒りの感情の方
が大きかったです。



でも、そんな私の葛藤&『女子特有の
対抗意識』なんて、ちっとも気づかない
感じの男子・義時君。
その子から受け取ったタオルセットを
笑顔で、普通な感じで、私に渡して
くれました。
私は、思いましたね。
「私の気持ち、気づいてないなぁ、
絶対。
鈍いのかなぁ?それとも、男性って、
みんなそんなもの?」と。
まぁ、女性の皆さんには、共感して
もらえると思います。
でも、大事なのは、言わないこと、
堪えることですよね。
私も、「ありがとう」と、何にも
気にしてないかのように、彼に答え、
受け取りました、タオルを…。
それで、義時君は、すぐに、
「じゃあ、案内するね」と言って、
歩き出します。
良い雰囲気です。
館内も、何より、私たちの関係も
良い雰囲気に戻ってきました。
上がります、気分が…。
「アイツのことは忘れよう」と
思いました。
実際問題、館内を歩いているだけで
ワクワク、ドキドキ……。
まるで、昔にタイムスリップした
みたい……!!
たくさんのお客さんで賑わっています
が、どの顔も笑顔もしくはお風呂上り
で火照っていて、良い感じです。


そして…、彼は、女子風呂という暖簾
の前まで、私を連れて行ってくれました。
さすがに、そこまでです。
一緒にいたいですけど、それ以上、一緒
に前進したら大事件になりますからね。



そして、私たちは、時間を決めました、
そこで。
義時君は、1時間後の時間を言って
くれました。
「じゃあ」と暖簾の向こうに行こうと
する私に、義時君は、「うん、ゆっくり
寛いで!俺は、今から兄貴とかのところ
に顔出してくる…」と。
彼は、入らないようです、お風呂に…。
まぁ、当然ですね、自分のところの
なんて、入り飽きてるはずですから。





そして……。
脱衣場でも女湯でも、思いました。
「あれ、若い子が多い!」と。
銭湯と言えば、おじいちゃん、
おばあちゃんが多いイメージでしたが、
小学生ぐらいの女の子たちがワイワイ
楽しんでいたり、高校生ぐらいの子も
いっぱいいて、女子たちのしゃべり声
で、まさに、イッパイ。
でも、女湯は広いので、全くウルサイ
とは思いませんでしたね。
「オバサン、元気もらえるよ」って
思うくらいでした。

そうだ。
私が、脱衣場で着替えていた時に、
ちょうど小学生低学年くらいの
子たちが女湯から出てきて、
そして、コーヒー牛乳を買って、
ゴクゴク飲んでいました。
みんな頬っぺたがピンク色で、
髪の毛もまだ乾いていない…。
「可愛いなぁ」と思い、キュンって
しちゃいましたね。
それと、「後で、絶対飲もう!」と
決めました。
子どもって、本当に美味しそうに
飲みますね!


私と同時に、中学生ぐらいの子たち
がキャッキャ言いながら、女湯に向かい
ます。
みんな、どことなく恥ずかしそうに、
ソワソワ…。
タオルでピシッと前を隠して、
やや早足で、みんなシャワーの前に
向かっていきます。
そうです、恥しい年頃&周りの子が
気になる年代ですもんね…。




それで、私は、女湯に足を踏み入れて、
一瞬目を疑った&唸ってしまいました、
良い意味で……!
まさに、ヨーロッパ……!!
優雅な空間が、広がっていました。
高い丸天井。
月の光が差し込んでいて、思わず、
ワッと口から出ました。
そして、夜だけど、明るい、開放的
空間…。
そこで、老若男女…って、男は一人も
いませんけど、おばあちゃん世代も
小学生くらいの女の子たちも、
みんながリフレッシュして…幸せそう。



そして、私の目に飛び込んできたのが
『日替わり風呂』でした。
しかも、なんと、嬉しいことに、
ワイン風呂です……!
「きたー!!」、もう、テンション
上がりまくりです!!










(著作権は、篠原元にあります)
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