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篠原

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第一章 あの日以前 ~13年前の奥中真子の日常~

第一章 あの日以前 ~13年前の奥中真子の日常~ ①

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あたしの名前は奥中真子!
小学3年生。
千葉県のいすみ市に住んでいて、
第一小に通ってるの。
クラスは3年2組で、先生の名前は
管原綾子先生。
優しくて、スゴイ美人で、良い匂い。
でも、怒ると、怖いんだ。

ママの名前は奥中峯子。
他の人に年齢を言うと怒られるけど、
今は、いないから……、ママは、
30歳です。

それでね、パパは、いないの。
ママは、「真子ちゃんが生まれる前に
死んじゃったのよ。」って、言ってた。

あっ、真子っていう名前はね、
お母さんがつけてくれたんだ。
2年生の時に、赤ちゃんの頃の写真を
もってくる、あと、
自分の名前は誰が決めて、何でその名前に
なったのか調べてくるって
いう宿題があったの。

その時にね、ママに、
あたしの名前のこと訊いてみた。
そうしたら、ママは言ってくれたの。
「真子ちゃんの名前はね、正直な子に
なってほしいと言う願いをこめて
つけたのよ。
真子のマは、真実のシンだから……。
ウソをつかないで、いつも、真実……
本当のことを言える女の子に
育ってほしいなぁって、つけたの。」
そう言って、あたしをギュって
抱きしめてくれたんだ。
あたし、ママを悲しませたくないの。
だから、正直な大人になりたい。

あたしは、優しいママと
一緒に寝て、一緒に起きて、
一緒に歯ブラシして、一緒にご飯食べて、
一緒に出かけるの。

ママは、家の近くのスーパーで
お仕事してるの。
それでね、学校から帰って、宿題やって、
お風呂のお掃除とかが終った頃に、
いつも、ママ帰ってくるの。
ママのご飯は、すごく美味しいんだ。
あとね、ママは、あとで見てみて。
すごくすごく美人だよ!
それに、物知りだしね‼
あたしの一番の自慢は、ママなんだ!
そうだ。
クラシックも聴いたりりするんだよ、
あたしのママは。
クラスの女の子たちのママの中で、
クラシックの音楽を聴いているのは、
あたしのママだけだよ。
「ママは、音楽聞いているとね、
落ち着くのよ。」って言う、
素敵な大人なんだ、ママは。
ママみたいな、大人になりたい!

でも、ママにはおもしろいところが、
3つあるんだ。

ひとつめはね、いつも長袖の洋服を
着てるとこ。
今日みたいに、暑い日でも、
長袖を着てるの。
「暑いね。暑いねぇ。」って
言ってんのに、長袖の洋服なんだから、
変でしょ。
「こういう服だとママは落ち着くの。
真子ちゃんみたいな服だと、
ママは、嫌なのよ。」って、前に言ってた。

ふたつめ。ママはスーパーに行く時も、
何かの用事でおでかけする時も、
いつも、伊達メガネって言うのを
かけていくんだ。
ママは「おしゃれのためよ。」と
言ってるけど、あたしは、残念!
だって、似合ってないんだもん‼
あ、これママには、秘密ね!
こう思ってると、ママが分ったら、
ショック受けちゃうかもだから。

あと、ママはでかける時、
いつもマスクをして行くの、絶対。
病気にかからないように
予防してるんだって。
前ね、「真子ちゃんのために
ママは一生懸命働いて、頑張る。
そのためにね、風邪ひいたらダメなの。
だから、ママは、
いつもマスクしてるのよ。」って、
言ってた。

でも、あたし、スゴイ残念なの‼
ママの自慢が、したいの‼
だって、ママはクラスの子のママたちの中で
本当は一番キレイなの‼
あたし、分かってる。絶対に、一番!

でも、授業参観の時も遠足の時も、
マスクして、それと、あの伊達メガネで
来るでしょ。
だから、クラスの子みんな
おかしく思ってる。
あぁー、ちゃんと、ママの顔を見れれば、
みんな分かるし、あたしも、
どんなもんだいなのにぃ‼

あとねぇ、ママはおでかけが
きらいな人なの。
クラスのみんなは、お休みの日、家族で
遠くに車で遊びに行ったり、
遊園地行ったり、動物園行ったりしてる。
でも、うちは、ママが『でぶしょう。』
だから……。
お休みの日とかは、あたしとママは
いつも家の中で色々やるんだ。
近くのビデオ屋さんに、あたしが行って、
ビデオ借りてきて、それを二人で見たりね。
うん、その時はね、よくピザ食べる!
チーズがとろけて、すごく美味しいピザ!

ママは、〔あいのん〕が大好きなの。
だからね、あたしが、お店に行く時ね、
「あいのんが出てるから、これとこれね。」
って、メモをわたしてくる。
あたしは、そういう〔あいのん〕が出てる
大人向けの映画とかドラマ、
本当は好きじゃないけど、
ママが嬉しそうに、見てるから、
良いんだ。
嬉しそうな、ママの顔を、
ヒョイって見るのが、幸せ。
ママ、本当に、嬉しそうで、
楽しそうだから。

ということで、あたしは、あまり遠くに
行ったことないし、ママと遊園地行ったり、
デパート行ったりしたことはないけど、
別に、あたしは悲しくないし、
幸せだって思うよ。

あっ、そうだ!一度だけね、ママと遠くに
おでかけしたことがあったんだ
1年生の時、ママと一緒に、
飛行機のってね、遠~くに住んでる
雪子おばさんに会いに行ったの。
その時ね、あたし、
はじめて飛行機のったの‼
すごかったぁ、大きかったし、
本当に雲の上を飛ぶんだから、驚き!

それでね、おばさん家で、
美味しいカレーを食べて、
おばさんと一緒に山に行って
キレイなお花とってきたり、
おばさん家の犬と散歩したり、
楽しかった!
あとね、みんなで大きな美術館にも行って、
いろんな絵を見たよ。
あたしは、つまんなかったけど、
おばさんとママは楽しそうだった。
でもね、そのあとに、おばさんが
海の目の前にある遊園地に
連れてってくれたの。
観覧車にも乗せてくれたし、
ママが怖いって言ったから、おばさんが
一緒にジェットコースターに
乗ってくれた。
スッゴイ、楽しかた‼

それとね、帰る日ね、おばさん、
おもちゃ屋さんに連れてってくれて、
いっぱいお人形さんとか、
買ってくれたんだ!
あたし、おばさんが大好き。

1年に何回も、おばさんは、
プレゼントを送ってくれるの。
あたしの誕生日、夏休みの時、
あとは、お正月に、おばさんからの
プレゼントが届くんだよ。 
図鑑もらったり、
きれいな洋服もらったり、
素敵な鉛筆入れとかもあったなぁ。

最近はね、「真子ちゃんの足も
大きくなったでしょうから新しい靴を
送るわね。」って書いてるお手紙と、
すご~いおしゃれな靴をおばさんが
くれたの!

ピンク色の靴で、星とか太陽とか
いろんなマークも素敵!
私の宝物なの‼

みどりちゃんも、この靴が欲しくなって、
同じのをママに買ってきてもらったって。
だから、今、あたしとみどりちゃん、
おそろだよ、靴が!
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