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共に幸せに
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訓練を終えたエドガーは私たちを見つけ、こちらへ走って来た。
「お久しぶりです、アンドリュー陛下!」
アンドリューの目の前で直立したエドガーは右手を左胸に当てて頭を下げた。アンドリューは軽く頷く。
「練習に気合がこもっていたな、エドガー。身体の調子はもう大丈夫か」
「ありがとうございます、陛下。アイリスに癒してもらったのでもうすっかり良くなりました」
実は私の聖女の力は無くなっていない。あの時、意識のないエドガーに最初で最後だと思ってキスをしたのだけれど、なぜかまだ力は健在だ。
「そうか、それは良かった。ところでエドガー」
「はい、陛下」
急に真面目な顔になったアンドリューに、エドガーも改めて姿勢を正す。
「実は私はアイリスに結婚を申し込もうと思っているんだが、構わないか?」
(ちょっ……アンドリュー?)
さっき断ったばかりだというのに、何を言い出すのだ、この人は。
だがよく見ると何やら考えがありそうな様子で、私に目配せを送ってきた。
「君さえ良ければ、早速ラルクール侯爵とホールデン伯爵に話を通そうと思うんだがね」
するとエドガーはアンドリューを真っ直ぐな目で見据えた。護衛が飛んで来そうなほど殺気を帯びたその青い瞳は、ギラリと鋭く光ったように見えた。
「申し訳ありません、陛下。アイリスは渡すわけには参りません。何があろうと、私はアイリスを離さないと決めているんです」
「私に逆らうとなると、この国では暮らせなくなるが……それでも?」
「それでも、です。アイリスに苦労をかけるかもしれませんが、国外に出て二人で暮らします」
「エドガー……」
なんと、国王に向かってキッパリと言い切ってくれたエドガー。なんて頼もしくなったのかしらと私は感動して胸がキュンと締めつけられた。
「……冗談だ、エドガー」
アンドリューは笑ってエドガーの肩を叩いた。
「君のアイリスへの気持ちがどのくらいなのか、試させてもらっただけだ。彼女は国を救ってくれた大恩人だからな。エドガー、どうかアイリスを……幸せにしてやってくれ」
アンドリューの笑顔にもエドガーは顔を崩さず、真剣な表情で答えた。
「はい、陛下。陛下のそのお言葉に恥じぬよう、必ずアイリスと共に幸せになります」
「……そういうとこだな」
小声の呟きはエドガーには聞こえていない。アンドリューは微笑み、エドガーの肩を抱いた。エドガーもつられて笑みをこぼす。そんな二人を見ている私も、幸せな気持ちになった。
(そうよ、アンドリュー。エドガーのいいところはそういうとこなの。幸せにしてやる、じゃなくて、お互いを大切にして一緒に幸せになるのよ。あなたも、そんな相手を見つけられるように祈ってるわ)
次の公務の時間だからとアンドリューは護衛と共に去って行った。それを見送ってから、エドガーは少し眉を寄せて私に聞いた。
「アイリス、陛下は本当にアイリスと結婚したいと思っているんじゃないかな……絶対に君を渡したくなくてすぐに断ってしまったけど……君が王妃になるチャンスを潰してしまったのかもしれない……」
エドガーは急に不安になったみたいでシュンとしている。さっきはあんなに強い目をしてアンドリューと対峙してくれていたのに! そんなギャップがまた愛おしい。
「いいえ、私は陛下じゃなくてあなたと結婚したいのよ? あんな風に堂々と言ってくれてとても嬉しかったわ」
「アイリス……」
エドガーは目尻を下げて私の大好きな笑顔になった。そんな彼に私は手を伸ばす。
「さあ、エドガー。一緒に帰りましょ」
そっと手を繋ぎ、私たちは歩き出した。
「お久しぶりです、アンドリュー陛下!」
アンドリューの目の前で直立したエドガーは右手を左胸に当てて頭を下げた。アンドリューは軽く頷く。
「練習に気合がこもっていたな、エドガー。身体の調子はもう大丈夫か」
「ありがとうございます、陛下。アイリスに癒してもらったのでもうすっかり良くなりました」
実は私の聖女の力は無くなっていない。あの時、意識のないエドガーに最初で最後だと思ってキスをしたのだけれど、なぜかまだ力は健在だ。
「そうか、それは良かった。ところでエドガー」
「はい、陛下」
急に真面目な顔になったアンドリューに、エドガーも改めて姿勢を正す。
「実は私はアイリスに結婚を申し込もうと思っているんだが、構わないか?」
(ちょっ……アンドリュー?)
さっき断ったばかりだというのに、何を言い出すのだ、この人は。
だがよく見ると何やら考えがありそうな様子で、私に目配せを送ってきた。
「君さえ良ければ、早速ラルクール侯爵とホールデン伯爵に話を通そうと思うんだがね」
するとエドガーはアンドリューを真っ直ぐな目で見据えた。護衛が飛んで来そうなほど殺気を帯びたその青い瞳は、ギラリと鋭く光ったように見えた。
「申し訳ありません、陛下。アイリスは渡すわけには参りません。何があろうと、私はアイリスを離さないと決めているんです」
「私に逆らうとなると、この国では暮らせなくなるが……それでも?」
「それでも、です。アイリスに苦労をかけるかもしれませんが、国外に出て二人で暮らします」
「エドガー……」
なんと、国王に向かってキッパリと言い切ってくれたエドガー。なんて頼もしくなったのかしらと私は感動して胸がキュンと締めつけられた。
「……冗談だ、エドガー」
アンドリューは笑ってエドガーの肩を叩いた。
「君のアイリスへの気持ちがどのくらいなのか、試させてもらっただけだ。彼女は国を救ってくれた大恩人だからな。エドガー、どうかアイリスを……幸せにしてやってくれ」
アンドリューの笑顔にもエドガーは顔を崩さず、真剣な表情で答えた。
「はい、陛下。陛下のそのお言葉に恥じぬよう、必ずアイリスと共に幸せになります」
「……そういうとこだな」
小声の呟きはエドガーには聞こえていない。アンドリューは微笑み、エドガーの肩を抱いた。エドガーもつられて笑みをこぼす。そんな二人を見ている私も、幸せな気持ちになった。
(そうよ、アンドリュー。エドガーのいいところはそういうとこなの。幸せにしてやる、じゃなくて、お互いを大切にして一緒に幸せになるのよ。あなたも、そんな相手を見つけられるように祈ってるわ)
次の公務の時間だからとアンドリューは護衛と共に去って行った。それを見送ってから、エドガーは少し眉を寄せて私に聞いた。
「アイリス、陛下は本当にアイリスと結婚したいと思っているんじゃないかな……絶対に君を渡したくなくてすぐに断ってしまったけど……君が王妃になるチャンスを潰してしまったのかもしれない……」
エドガーは急に不安になったみたいでシュンとしている。さっきはあんなに強い目をしてアンドリューと対峙してくれていたのに! そんなギャップがまた愛おしい。
「いいえ、私は陛下じゃなくてあなたと結婚したいのよ? あんな風に堂々と言ってくれてとても嬉しかったわ」
「アイリス……」
エドガーは目尻を下げて私の大好きな笑顔になった。そんな彼に私は手を伸ばす。
「さあ、エドガー。一緒に帰りましょ」
そっと手を繋ぎ、私たちは歩き出した。
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