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32 日曜日
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蒼との初めてのあと、シャワーを浴びながら私はベッドでのことを思い出しては真っ赤になっていた。
鏡を見ると、あちこちにキスマーク……でもちゃんと服で隠れるところにしかつけてないけど。
(めちゃくちゃ優しくて、たくさん奉仕してくれて、しかもかなり大っきい……よね? 私は蒼が三人目だけど、今までのは何だったのっていうくらい良かった。人によってこんなに違うんだ……)
一人目の彼氏は大学生の時。お互い初めてでぎこちなくて、半年で別れたからそんなにはしていない。
次が亮太。最初の頃は毎週身体を合わせていたけど一年も経たないうちに月に一回くらいになっていった。それに、亮太は自分本位でそんなに気持ち良くなかったから、回数が少なくても私も平気になっていっちゃって。旅行の時くらいしかしていなかったかも。
(どうしよう。こんなの経験しちゃったらもう他の人なんて無理……)
また顔が赤くなる。ホントに、蒼はどこにも欠点がないみたい。
(愛想尽かされないように、頑張らないと)
何を頑張ればいいのかはよくわからないけれど。蒼と楽しく毎日を過ごしていけるように、お互い我慢したり不満が溜まらないように、その都度話し合いながら仲良くしていこう。
バスルームを出ると、蒼もシャワーを浴びるために立ち上がった。
「ごめんね、またお待たせしちゃって」
「全然。さっきの可愛い咲桜を思い出してたらあっという間だったよ」
そんなことをサラッと言って、私に軽くキスをしてバスルームへ向かう。
口では「もう……!」と言いながらも私は幸せで。ずっとこのまま一緒にいたいってそう思えた。
翌朝。蒼の隣でぐっすりと眠った私が目を覚ますともう十時を過ぎていた。蒼もまだ眠っている。
頬をツンとつつくと片目を少し開けてにこっと笑い、腕を上げて私を包み込んだ。
「……つかまえた」
鼻の頭を私の鼻に擦り付ける蒼。
「つかまっちゃった」
私は蒼の唇にチュッ、と口づける。
「……もう、朝から可愛いんだって」
蒼がギュッと私を抱き締めてくる。
「ねえ蒼、近くのカフェで朝ご飯にしようよ」
日曜日のブランチにはちょうどいい時間だ。
「んー、そうだなぁー、でも……」
「きゃっ」
蒼はくるりと身体を反転させて私に覆い被さった。
「こっちが先でもいい?」
「えっ、ちょ、やんっ、蒼……!」
その後、私たちがカフェに出かけたのは二時間後になったのだった。
夜は、買い物に行って私がご飯を作ってみた。大した料理は作れないけれど、一人暮らし歴は長いので。
とりあえず失敗のない豚の生姜焼きと、豆腐とワカメのお味噌汁。それと里芋とベーコンのポテトサラダ。
「へえ、里芋で?」
「そう。ねっとりしてて美味しいのよ。太めに切ったベーコンが食べ応えあるしね。最後にチーズと黒胡椒、オリーブオイルをかけたら出来上がり」
蒼は、どれも美味しいと褒めてくれた。褒めてもらえると作った甲斐があるし、また作ってあげたいと思う。片付けも、二人で一緒にやった。
「一緒にやれば早く終わるし、その分イチャつけるだろ」
「またそんなことを……」
でも私もそうしたいと思ってるんだから、ま、いいか。
ソファに並んで蒼が作ってくれた白のホットワインを飲む。蜂蜜や生姜、レモンも入ってとってもフルーティーで飲みやすい。身体がぽかぽかに温まる。
「あのさ、咲桜」
「なぁに、蒼?」
「あの男のことなんだけど。多分、鍵が変わったことを知ったら帰りに待ち伏せすると思うんだ」
すっかり忘れていた。そうだ、私がここに来たのは亮太が家にやってきたからだった。
「だからしばらく、俺が退社時間に迎えに行くよ」
「ダメよ、蒼! あなただって仕事があるのにそんなこと」
「だって心配なんだ」
「大丈夫よ。留里さん……総務の先輩なんだけど、留里さんに事情を話して一緒に帰ってもらうようにするわ。それに、営業は終業時間も総務より遅いのよ。私のほうが先に帰るからきっと大丈夫」
「……じゃあ防犯ブザー。これだけは持っておいて。それと、俺が迎えに行ける時は連絡するから。その時は一緒に帰ろう」
「わかった。心配してくれてありがとう」
あの時、亮太は結婚するならお前と、って言っていた。川上琴美はどうなったんだろう。もう関係ない人だけど、今の私たちを邪魔するのだけはやめてほしい。
蒼が私の手を取り、じっと見つめている。そっと目を閉じると唇が重ねられ、その口づけはだんだんと激しくなっていく。
(愛してる、蒼……)
私は安心して蒼に身体を委ねた。
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