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24 告白

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「蒼、待って」

 離れていく蒼の服を摘み、引き留める。少し驚いた顔をする蒼。

「私、私ね……蒼のことが好き」
「……咲桜?」

 私は蒼の正面に回り、顔をじっと見つめる。もう今ここで、想いを伝えたい。もし振られたとしてもきっと後悔はしないから。

「蒼は私の初恋だったの。無限で再会できてからずっと幸せだったし、付き合おうって言われた時は凄く嬉しかった。でもそれが昔の気持ちからなのか今の気持ちなのか、ずっとわからなくて戸惑っていたの。だけど今日はっきりとわかったわ。私は今の蒼を好きなんだって」

 私を見る蒼の瞳が潤んでいるように思うのは自惚れだろうか。彼は唇をキュッと引き結び、一瞬目を閉じて。そして目を開いた時にはとてもとても甘い微笑みをくれた。

「咲桜……俺も、咲桜が初恋なんだ」
「ホントに? 蒼……」
「何も言わずにアメリカに渡った後でひどく後悔した。どうして想いを告げておかなかったんだろうって。だから一年後に咲桜を訪ねた時、絶望しかなかった。咲桜の居場所が全くわからなくなっていたから」

 ゆっくりとひと言ずつ話してくれる蒼。その顔はとても優しい。

「再会出来た時は夢のようだったよ。でもなんだか照れ臭くて、上手く喋れなかった。まるで十四の俺に戻ったみたいに」

 ……あの時、不機嫌なのかなって感じたのはそういうことだったんだ。

「咲桜が彼と別れたばかりだって聞いて、チャンスだと思った。でも無理強いしたくなかったし、弱ってるところにつけ込みたくなかったからあんな言い方になってしまった。ズルいよな、手を出さないから安心して付き合って、なんて」
「そんなことないよ。そう言ってくれたから私も一歩踏み出せたんだもの」
「――咲桜」

 不意に蒼がブランケットごと私を腕の中に包み込んだ。背の高い蒼と至近距離で見つめ合う形になる。

「改めて申し込ませて。俺と、正式に付き合ってくれないか」

 近くで見ると睫毛がとても長い。そんなことを考えていた私。
 蒼から嬉しい言葉をもらって喜びがじわじわと全身を包んでいく。奇跡のようなこのひと月を思い出して。

「はい。よろしくお願いします」

 声が少し震えてしまったのは涙を堪えていたから。

 そんな私の頬に蒼はそっとキスをして、強く抱き締めた。胸に顔を埋めていると蒼の心臓の音が聞こえる。力強く刻まれる音。

(私、蒼の彼女になれたんだ……っ、ということは、これからはもっと触れ合ってもいいってこと……よね)

 そういう関係になることを不意に想像してしまい急に恥ずかしくなる。お互いの中学時代を知ってる二人が同じベッドで――

(きゃあぁぁ)

 めちゃくちゃ恥ずかしい。私は蒼の背中に手を回し、ギュウッと力を入れた。

「咲桜、そんなに密着されると嬉しいけど辛い……」
「あっ! ごめんなさい」

 パッと離れると、蒼はニコニコして私を見ていた。

「赤い顔して何考えてたの?」
「……っ! 何でもない!」

 何で全部見透かされてるんだろう。恥ずかしくて横を向いた私の頬にまたキスをして、正面を向いたら今度は唇にキス。

「……!」

 軽い、触れるだけのものなのに足に力が入らなくなった。私はずっと蒼とこうしたかったんだと、強く強く感じた。

 それからしばらくの間私たちは抱き合ったまま海を眺めていた。
 とても満ち足りた思いで、世界中がダイヤモンドのように輝いて見えていた。
 
 
 
 
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