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21 琴美視点①
しおりを挟む「女性の婚期はクリスマスケーキと同じ」
このクリスマスケーキ理論はだいぶ昔、ママが若かった頃に言われていたことだって。
23日(二十三歳)は大事に予約されての結婚。
24日(二十四歳)は美味しくて新鮮で、予約した人たちが受け取りに来る定価販売商品。需要がピークでケーキがたくさん売れる。
25日(二十五歳)はクリスマス当日。この日買う人もたくさんいるけど、最後になると値引きが始まる。
そして26日(二十六歳)は売れ残ったケーキが安売りされている。
そして日が経つにつれてどんどん売れなくなり、29日にもなると消費期限が来てしまう……というもの。
ママは二十三歳で結婚した。そして私にも若いうちに結婚するようにってずっとずっと言い聞かせてきた。
「女は若いうちに結婚するのが幸せなの」
「相手を選べるうちにしなさい。売れ残ってからでは妥協するしかないわ」
「どうせ女が仕事続けたって先が知れてるのよ。それよりも、稼ぎのいい男を捕まえて養ってもらうのが一番」
でもママは、パパがあまり稼ぎがよくないことをいつも愚痴っていた。
「ママはちょっと相手選びを失敗しちゃった。パパは顔はとっても良かったんだけどね、あまり出世しなかったの。おかげでママはパートして働かなきゃいけなくなって。でも琴美、あなたはとっても可愛い。あなたなら、もっと最高の男性に選ばれるはず。頑張るのよ」
ママが言う通り、私は可愛い。中学の頃から彼氏がいなかったことはない。ずっとモテてきたから最高の男性くらいすぐに捕まえられるだろうと思っていた。
でも歴代の彼氏はみんな、普通の人ばかり。お金持ちってなかなか出会えない。
「そりゃあセレブはセレブと結婚するでしょ」
女子大の友人、真紀が言う。
「お医者さんとか弁護士とか、そういう人は実家が金持ちで可愛い子と結婚するのよ。高望みはやめときなさいって」
有名でもない、偏差値も低い女子大に通う私たちにはそんな人たちとの合コン話は舞い込んでこないのだった。
ならば就職先でいい人を見つけよう。幸い、男性はそこそこ給料のいい会社に就職できたので、ここで選ぼうと決意した。配属されたのは営業。男性はたくさんいる。この中から顔が良くて優しくて仕事の出来る人を選べばいいと思った。
若くて可愛い私にはいろんな人がモーションをかけてきた。既婚者もいたのには驚いたけど。でも私はその中で、武田亮太を選んだ。
顔は可愛くて好みだし、仕事も頑張ってる。彼の担当が私だったので話す機会も多く、いい人だというのもわかっていた。
思い切ってご飯に誘うとすぐにOKしてくれた。そして交際が始まった。
亮くんは私にメロメロだ。この調子なら遅くても二十四歳で結婚できるだろう。
ところが、彼に他の女の影があることに気がついた。日曜日は夜まで一緒にいてくれないのだ。もしかして二股かも?
そう怪しんでいた頃に彼はその女と別れたらしく、日曜もデートできるようになった。
私は選ばれたんだと優越感に浸った。選ばれなかった相手は、どんな女だったんだろう?
彼の部屋に行くと、片付けきれてない女物があちこち残されていた。亮くんを追求すると、前の彼女のものだとわかった。
総務部の南野咲桜。同期ということは二十九歳だ。
(二十九歳なんて、売れ残りで消費期限切れのケーキじゃない。結婚を迫って振られたなんて可哀想に(笑)。でももしかして亮くんに未練タラタラでストーカーになったりするかも。きちんと釘刺しておかなきゃね。亮くんにはもう若い彼女がいるんだって)
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