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10 「俺たち、付き合わない?」

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「美味しかったね、藤森。雰囲気も素敵だったし、値段も手頃だし。また行ってみたいなぁ」

 ゆっくりとパフェを食べた私たちは近くの公園を散歩していた。

「ランチもディナーも美味いよ。食事するテーブルはカフェラウンジと反対側で、明治神宮が見えてまた綺麗だし。今度行こうか」

 また、そんなことをサラッと言う……。きっと、あれからもずっとモテてきたんだろう。女の誘い方に慣れている感じ。

「……ねえ藤森。せっかくの休日に私なんかと会ってていいの? 彼女さんとか、いないの?」
「……気になる?」

 グッと答えに詰まったものの、素直に気持ちを話すことにした。

「うん。気になる」

 すると藤森の口元が緩む。嬉しそうに見えるのは気のせい?

「いないよ。もう三年くらいいないかな」
「そうなの? 意外……」
「意外って、何で?」
「だってすごくモテそうだもの」
「何とも思ってない人からモテたとしても、彼女にするかは別問題なんだ。やっぱ好きな人とじゃないと」

 ということは、三年前まではちゃんと好きな人がいたってことね……って、私が落ち込む資格ないのに、何考えてるの。

 話を変えよう。

「そういえば藤森、アメリカに引っ越したのは家族の都合だったの?」
「そう。親が離婚して、父親は地元に残ってるんだけど母親がアメリカに行くって言いだしてさ。そもそもの離婚原因が親父の不倫だったから、俺も母親について行く一択しか無かった。そんな理由だから友達に話す気になれなくてさ……黙って引っ越してしまったんだ」
「そうだったの……。私、あの後風邪引いて学校休んでたから、休み明けに藤森が突然いなくなっててショックだったのよ」

 藤森がひょいと屈んで私の顔を覗き込む。

「ショックだった? 寂しかったの」

 やめてほしい……塩顔イケメンの可愛い顔なんて私を殺しにかかってるとしか思えない。もしかして私の顔は赤くなってるんじゃないだろうか。恥ずかし過ぎる。

「そりゃあ……ね。友達だし」
「俺も寂しかったよ」
「え」

 藤森はもう前を向いていて、表情はよく見えなかった。やっぱ背が高い。

「アメリカの学校行ってさ、英語も出来ないのに。最初は無視されたり揶揄われたりしてたけど、俺にはバスケがあったから。バスケで頑張って黙らせて、卒業する頃には仲間がたくさんできたよ」
「そうだったの。いろいろ大変だったんだね。でも、さすが藤森。バスケで繋いだ友情かぁ。素敵」
「大学も就職もアメリカで、もうこのまま日本に帰らないのかもなあなんて思ってたんだけど。入った会社が日本支社を作ることになってさ、すぐさま手を挙げたわけ。それが三年前」

 三年前……彼女さんと別れた頃、かな。

「支社の立ち上げから軌道に乗せるまで必死だった。唯一の癒しが『無限』の定食。あれがあるから頑張れたようなもんだ」
「ふふ、あのご飯は一人暮らしにはたまんないよね。私もこれから通っちゃいそう」

 ふと、藤森が立ち止まる。

「どうしたの? 藤森」

 私が振り返って訊ねると。

「なあ南野。俺たち、付き合わないか」




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