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失恋ループ

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 その後、ローズマリーは2回目の恋を出会いからやり直して積極的にアプローチし続け頑張った結果、鬱陶しく思われ振られてしまった。


(やり過ぎもダメなのね…次は、友達として仲良くなる方向で行こう)


 そして3回目のループで、クリスの友人であるネイサンが登場してきたのだ。


「でもホントに、ネイサンに声をかけられた時はびっくりしたなぁ」

 三杯目のお茶を飲みながらローズマリーは呟いた。

「僕だって驚いたさ。ある日突然、12月から9月に戻ってしまったんだから」

 そう、このループの中でローズマリーだけでなく何故かネイサンも、記憶を持ったまま時が戻っているのだ。

「時が戻ってみんな前と同じ行動をしているのに、君だけが違った行動を取っていたから注目していたんだよ。1回目はまったく僕たちに絡んでこなかったけど、2回目ではしょっちゅう目の前に現れていたでしょう。しかもクリスを好きなことはダダ漏れで」

「う……うるさいっ。必死だったのよ、あの時は」

「3回目でさすがにこのループの意味に気付いて、協力しようと話しかけてみたんだよ。このままじゃ、君が想いを成就するまで何度でも時間が繰り返されてしまうから」
 
ネイサンは笑いを堪えた声で言った。

「はいはい、ごめんなさいね。ありがとうございます!」
 
ローズマリーはふくれっ面をしてみせたが、本気ではないようだった。

「でも、本当に協力してくれて助かったのよね。ネイサンのおかげで、3回目は男女のグループになってワイワイと友情を育むことが出来たんですもの。あの時はとっても楽しかった」

「そうだね。でも、それが災いして……」

「君のことは友達としか思えないって、言われちゃった」

 ローズマリーは肩をすくめて舌をペロッと出してみせた。

 先程から、とてもスタンレー伯爵家のご令嬢とは思えない仕草ばかりしている彼女であるが、それはつまり、リラックスしている証拠であろう。
本当はきちんとレディらしく振る舞うことが出来るのだから。

 ローズマリー・スタンレーは、大人になればストロベリーブロンドになるであろう艶のある赤毛をふわふわとカールして背中に下ろし、サイドはハーフアップにして顔をスッキリと見せている。
 大きなエメラルドグリーンの瞳はクルクルとよく動いて、とても愛らしい。
 だが、まだまだ子供っぽさが残るところが多く、女性としての魅力は未知数だ。

「4回目の作戦、僕は、止めたよ?」

 少し意地悪な口調でネイサンが言った。

「大人の女風に迫ってみるなんて、君には無理だと思ったからね。そしたら案の定」

「もう、それは言わないで……」

 ローズマリーは真っ赤になってテーブルに突っ伏した。

「ちょっとお色気を出してみようとしただけよ? まぁでも、無いものを出そうとしてもダメだったわ。違和感しかなかったでしょうね、クリストファーは……。結局、『君にはそういうのは似合わないと思う』ってハッキリ言われたし、『私はエリザベートのような凛とした女性ひとが好きなんだ』とまで言われて、完全に玉砕したのよね……」

 思わず遠い目になったのも無理はない。
 クリスにこっぴどく振られた上に、はしたないご令嬢という嫁入り前には致命的なレッテルを学園内で貼られてしまったのだから。

「あの時、それがショックで取り乱してしまったけれど、あなたがここでお茶を振る舞ってくれて、もう一度ループすればこんな噂も消えてしまうよって言ってくれたおかげで落ち着くことが出来たわ」

 そしてネイサンのアドバイスのもと、5回目は一緒に委員会活動をやって仲を深めていく作戦にしようと決めたのだ。
 途中までは上手くいっているように思われた。しかしローズマリーが風邪を引いて休んだその日に、クリスとエリザベートは心を通わせてしまった。

「ねぇネイサン、私思うんだけど、クリスの運命の相手ってやっぱりエリザベートよね」

 ローズマリーはしみじみと呟いた。

「だって、何回ループを繰り返しても2人は恋仲になってしまうのよ。これはもう、覆らない気がするわ」

 エリザベートは美しい真っ直ぐな黒髪にブルーグレイの瞳、落ち着いた聡明な雰囲気を漂わせた少女だ。2人が並ぶとそれはそれは美しい。お互い穏やかな性格同士、お似合いなのは間違いない。

「じゃあもう、諦めるのかい?」

「ええ。それにね……今回、振られてみてわかったの。一回目は確かに失恋がショックで家に帰ってからワンワン泣いたけど、5回目となるとさすがにもう、悲しい気持ちが欠片かけらも残ってなかったわ」

 ネイサンは、僅かに微笑んだように思えた。が、目を隠すほど伸ばした前髪のせいであまり感情は読み取れなかった。


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