32 / 49
時の牢獄
しおりを挟む
アイナは、街の宿屋で目が覚めた。
「……ここは? 私どうしてこんな所に? 」
部屋の中には誰もいない。
「どういうこと? 私、さっきまでハク達と市場にいて、それから……」
「あ、気がついた? お姉さん」
黒髪の少年と、背の高い緑色の髪をした女がドアを開けて入ってきた。
「あなたは確か、市場で会った少年ね? ここはどこなの?」
「ここは僕達が泊まっている宿だよ。僕、アッシュといいます、よろしく。こっちはロビン」
女はペコリと頭を下げた。
「アッシュ、私、どうしてここにいるのかしら? 私と一緒にいた人達はどうしてるの」
「さあね、たぶん今頃必死でアイナを探し回っているんじゃないかなあ?」
アイナは、おもむろに立ち上がった。
「何ですって? あなた達、私を攫ってきたのね。……ハクのところに帰るわ。どいて頂戴」
ドアを開けて出て行こうとしたが、ロビンが立ち塞がった。
(コウ! 私の所に来て)
そう呼びかけたが、反応はない。
「紅龍を呼んでも無駄だよ。今この宿は、閉ざされた空間にあるからね。届かないんだ。ロビン、見せてやりなよ」
ロビンがドアを開け、アイナを廊下へ促した。不審に思いながらも部屋を出て、玄関の方へ行ってみると、宿の主人らしき男が立っていた。
「すみません、ここはセランのどの辺りですか? 領主さんの邸宅へ行きたいんですが……」
だが、男は何も答えない。近くまで寄って顔をよく見ると、目は開いたまま、まばたきもせずじっとしていて、掃除をしようと箒を持った手がそのまま止まっている。
驚いたアイナは、他にも人がいないか探してみた。台所に何人かの女が料理を作っているのが見えたが、皆、手が止まっている。一人は鍋で炒め物をし、もう一人は包丁で野菜を切っている途中だ。
(外はどうなんだろう)
玄関から外に出ようとガラスの引き戸に手を掛けたが、全く動かない。鍵が掛かっていないのに、開かないのだ。
ガラス越しに外を見ると、外の人々は動いている。
(この宿の人だけが止まっている……)
アイナは混乱してしまった。こんな現象は、魔術以外あり得ない。だがいったいどんな魔術なのか、まったくわからなかった。
「ね、わかったでしょ」
アッシュが後ろから声を掛けてきた。
「ここは、外の世界とは切り離されているんだ。だから紅龍を呼んでも届かないんだよ」
「あなたは……いったい誰なの? 何故、私をこんな所に閉じ込めたの」
アッシュはニコっと笑って言った。
「とりあえず、部屋に戻ろうか。ゆっくり話をしよう」
部屋に戻ると、ロビンがお茶の用意をしていた。
「どうぞ」
だがアイナは手をつけなかった。
「毒なんて入ってないよ。ほら」
そう言ってアッシュはお茶を飲み、クッキーを食べた。
「ありがとう。でもやめておくわ」
「そう? じゃあ僕全部食べちゃおう」
楽しげにクッキーを頬張るアッシュに、アイナは尋ねた。
「どうしてこんな事をしたの? 私をどうしたいの」
アッシュはクッキーを食べてしまい、指を舐めながら答えた。
「アイナに興味があったからさ」
「興味?」
「うん。カストールで、黒龍の過去見をしていたでしょう。あれをやって欲しいんだ」
「過去見って言われても。あれは、ラスタ石の力よ」
「違うよ。石に力なんかないさ。石に込められた想いを読み取るのは、人間にしか出来ない能力だよ」
「無理よ。それに、もし私に過去見が出来たとして、一体何を見ようとしているの」
「これさ」
アッシュが取り出したのは、小さな貝殻のペンダントだった。
「これに、何か想いが残ってないか見て欲しいんだ」
「これは、あなたの物なの?」
「僕が両親から貰った、たった一つの物なんだ」
アイナは、部屋を見回してから訊いた。
「あなた、ご両親は……?」
「もうとっくに死んでるよ」
「ごめんなさい。辛いことを聞いてしまって」
「別に辛くもないさ。五百年も前のことだし」
「え? 五百年?」
目の前にいるのは、どう見ても十歳の子供だ。五百年とはいったいどういうことなのだろう。
「アイナさん。私は時間を司る霊亀です」
ロビンが急に話し始めた。
「黒龍たちよりもずっと長く生きてきたんです。そしていつの間にか、時間を操る事が出来るようになってました。不思議なことに私と契約した人間は何故か皆、長生きになるんです」
「ということは、アッシュ、あなたは……」
「そう。君よりだいぶ歳上だよ。生まれたのは五百ニ十年前だ」
「五百ニ十年前……」
「アッシュ様は貧しいご両親の元で生まれ、十歳の時に魔力が発現したのです。そして、前の主人を亡くしたばかりで次の主人を探していた私と偶然出会い、契約をしてもらいました」
「ひどいだろう?十歳の子供に何の説明もなく契約だぜ。おかげで僕は、永遠に年をとらない十歳児として五百年を生きる羽目になった」
「契約が、人間に影響を及ぼすことがあるの……?」
ロビンは首を傾げた。
「さあ。他の精霊のことはわかりません。ただ、私が契約した人はそうなるとだけしか。アッシュ様には、本当に申し訳ないことをしたと思っております」
「霊亀の魔術ってどんなもの? さっき、私達に何をしたの」
アッシュが嬉しそうに答えた。
「ああ、僕の演技、上手かっただろう?ジュースをこぼすところから計画に入ってたんだ。そして、全員と握手をした」
「そうだわ。あなたと握手、したわ」
「僕はね、触った人の時間を止めることが出来るんだ。あの時は王や護衛を三十秒、アイナと龍達は一分、止めたんだ。たった三十秒って思うだろう?人はね、時間が止まって再び動き出した時、何が起こったかわからない。わからないから動くことが出来ない。つまり、時間を止めたのはたった三十秒でも、二分くらいの足留めは充分出来るのさ」
ロビンも話し始めた。
「この宿は、丸ごと時間を止めて外界の時の流れからシャットアウトしています。違う時間に存在しているので、術を解かないと外に出ることは出来ません」
「ね? 最強でしょ? この魔術。アイナ、僕達と一緒にいようよ。王が来たって、絶対助けられっこないし」
「いえ、帰るわ。私はハクともうすぐ結婚するのよ。早くここから出して」
「なんだよ、結婚なんてしなくても生きていけるじゃん! そんなこと言うならもうここから出さないからな!」
アッシュはそう言い放つと乱暴にドアを閉めて部屋から出て行った。
「外に出るのかしら?」
アイナも腰を浮かしかけたが、ロビンが止めた。
「いえ、術を解いたりしないでしょうから、宿の何処かにいると思います。私達がここを出るのにも、術は解かないといけませんから」
「ねえロビン。私をみんなのところへ帰して。これは、アッシュの気まぐれなんでしょう?」
「これはアッシュ様の望みですから。私は、アッシュ様が欲しいと言うモノは全て手に入れてきたんです。時間を止めれば、手に入らないものはありません。アイナさんが諦めて私達と一緒に旅をする気になるまで、百年でも二百年でもここで待ちます」
「そんな……そんなことしたら、外にいるハク達は」
「先にお亡くなりになるでしょうね。人間の寿命は四、五十年ですから」
アイナは真っ青になった。もう二度とハクと会えないなんて絶対に嫌だ。
「ここから出るにはアッシュに術を解いてもらわないと駄目なのね」
「はい、そうです。でも、無理ですよ。アッシュ様、お寂しいんです。子供のままだから結婚も出来ず、ずっと私と二人きりで生きてきましたから。カストールで偶然あなたを見て、過去見の能力を知り興味を持ったんです。お願いですからしばらくの間一緒にいて下さい」
「しばらくって……どれくらいのことなの」
「せめて十年くらいは」
「……冗談じゃないわ。私は今すぐ帰りたいのよ」
「交渉決裂ですね。ではここで百年ほど過ごすことにしましょう。この中にいれば、あなたも歳を取りませんから」
そう言うとロビンも部屋の外へ出て行き、鍵をかけてしまった。
「嘘でしょう。お願い、出して――――」
だが、返事は聞こえてこなかった。
「……ここは? 私どうしてこんな所に? 」
部屋の中には誰もいない。
「どういうこと? 私、さっきまでハク達と市場にいて、それから……」
「あ、気がついた? お姉さん」
黒髪の少年と、背の高い緑色の髪をした女がドアを開けて入ってきた。
「あなたは確か、市場で会った少年ね? ここはどこなの?」
「ここは僕達が泊まっている宿だよ。僕、アッシュといいます、よろしく。こっちはロビン」
女はペコリと頭を下げた。
「アッシュ、私、どうしてここにいるのかしら? 私と一緒にいた人達はどうしてるの」
「さあね、たぶん今頃必死でアイナを探し回っているんじゃないかなあ?」
アイナは、おもむろに立ち上がった。
「何ですって? あなた達、私を攫ってきたのね。……ハクのところに帰るわ。どいて頂戴」
ドアを開けて出て行こうとしたが、ロビンが立ち塞がった。
(コウ! 私の所に来て)
そう呼びかけたが、反応はない。
「紅龍を呼んでも無駄だよ。今この宿は、閉ざされた空間にあるからね。届かないんだ。ロビン、見せてやりなよ」
ロビンがドアを開け、アイナを廊下へ促した。不審に思いながらも部屋を出て、玄関の方へ行ってみると、宿の主人らしき男が立っていた。
「すみません、ここはセランのどの辺りですか? 領主さんの邸宅へ行きたいんですが……」
だが、男は何も答えない。近くまで寄って顔をよく見ると、目は開いたまま、まばたきもせずじっとしていて、掃除をしようと箒を持った手がそのまま止まっている。
驚いたアイナは、他にも人がいないか探してみた。台所に何人かの女が料理を作っているのが見えたが、皆、手が止まっている。一人は鍋で炒め物をし、もう一人は包丁で野菜を切っている途中だ。
(外はどうなんだろう)
玄関から外に出ようとガラスの引き戸に手を掛けたが、全く動かない。鍵が掛かっていないのに、開かないのだ。
ガラス越しに外を見ると、外の人々は動いている。
(この宿の人だけが止まっている……)
アイナは混乱してしまった。こんな現象は、魔術以外あり得ない。だがいったいどんな魔術なのか、まったくわからなかった。
「ね、わかったでしょ」
アッシュが後ろから声を掛けてきた。
「ここは、外の世界とは切り離されているんだ。だから紅龍を呼んでも届かないんだよ」
「あなたは……いったい誰なの? 何故、私をこんな所に閉じ込めたの」
アッシュはニコっと笑って言った。
「とりあえず、部屋に戻ろうか。ゆっくり話をしよう」
部屋に戻ると、ロビンがお茶の用意をしていた。
「どうぞ」
だがアイナは手をつけなかった。
「毒なんて入ってないよ。ほら」
そう言ってアッシュはお茶を飲み、クッキーを食べた。
「ありがとう。でもやめておくわ」
「そう? じゃあ僕全部食べちゃおう」
楽しげにクッキーを頬張るアッシュに、アイナは尋ねた。
「どうしてこんな事をしたの? 私をどうしたいの」
アッシュはクッキーを食べてしまい、指を舐めながら答えた。
「アイナに興味があったからさ」
「興味?」
「うん。カストールで、黒龍の過去見をしていたでしょう。あれをやって欲しいんだ」
「過去見って言われても。あれは、ラスタ石の力よ」
「違うよ。石に力なんかないさ。石に込められた想いを読み取るのは、人間にしか出来ない能力だよ」
「無理よ。それに、もし私に過去見が出来たとして、一体何を見ようとしているの」
「これさ」
アッシュが取り出したのは、小さな貝殻のペンダントだった。
「これに、何か想いが残ってないか見て欲しいんだ」
「これは、あなたの物なの?」
「僕が両親から貰った、たった一つの物なんだ」
アイナは、部屋を見回してから訊いた。
「あなた、ご両親は……?」
「もうとっくに死んでるよ」
「ごめんなさい。辛いことを聞いてしまって」
「別に辛くもないさ。五百年も前のことだし」
「え? 五百年?」
目の前にいるのは、どう見ても十歳の子供だ。五百年とはいったいどういうことなのだろう。
「アイナさん。私は時間を司る霊亀です」
ロビンが急に話し始めた。
「黒龍たちよりもずっと長く生きてきたんです。そしていつの間にか、時間を操る事が出来るようになってました。不思議なことに私と契約した人間は何故か皆、長生きになるんです」
「ということは、アッシュ、あなたは……」
「そう。君よりだいぶ歳上だよ。生まれたのは五百ニ十年前だ」
「五百ニ十年前……」
「アッシュ様は貧しいご両親の元で生まれ、十歳の時に魔力が発現したのです。そして、前の主人を亡くしたばかりで次の主人を探していた私と偶然出会い、契約をしてもらいました」
「ひどいだろう?十歳の子供に何の説明もなく契約だぜ。おかげで僕は、永遠に年をとらない十歳児として五百年を生きる羽目になった」
「契約が、人間に影響を及ぼすことがあるの……?」
ロビンは首を傾げた。
「さあ。他の精霊のことはわかりません。ただ、私が契約した人はそうなるとだけしか。アッシュ様には、本当に申し訳ないことをしたと思っております」
「霊亀の魔術ってどんなもの? さっき、私達に何をしたの」
アッシュが嬉しそうに答えた。
「ああ、僕の演技、上手かっただろう?ジュースをこぼすところから計画に入ってたんだ。そして、全員と握手をした」
「そうだわ。あなたと握手、したわ」
「僕はね、触った人の時間を止めることが出来るんだ。あの時は王や護衛を三十秒、アイナと龍達は一分、止めたんだ。たった三十秒って思うだろう?人はね、時間が止まって再び動き出した時、何が起こったかわからない。わからないから動くことが出来ない。つまり、時間を止めたのはたった三十秒でも、二分くらいの足留めは充分出来るのさ」
ロビンも話し始めた。
「この宿は、丸ごと時間を止めて外界の時の流れからシャットアウトしています。違う時間に存在しているので、術を解かないと外に出ることは出来ません」
「ね? 最強でしょ? この魔術。アイナ、僕達と一緒にいようよ。王が来たって、絶対助けられっこないし」
「いえ、帰るわ。私はハクともうすぐ結婚するのよ。早くここから出して」
「なんだよ、結婚なんてしなくても生きていけるじゃん! そんなこと言うならもうここから出さないからな!」
アッシュはそう言い放つと乱暴にドアを閉めて部屋から出て行った。
「外に出るのかしら?」
アイナも腰を浮かしかけたが、ロビンが止めた。
「いえ、術を解いたりしないでしょうから、宿の何処かにいると思います。私達がここを出るのにも、術は解かないといけませんから」
「ねえロビン。私をみんなのところへ帰して。これは、アッシュの気まぐれなんでしょう?」
「これはアッシュ様の望みですから。私は、アッシュ様が欲しいと言うモノは全て手に入れてきたんです。時間を止めれば、手に入らないものはありません。アイナさんが諦めて私達と一緒に旅をする気になるまで、百年でも二百年でもここで待ちます」
「そんな……そんなことしたら、外にいるハク達は」
「先にお亡くなりになるでしょうね。人間の寿命は四、五十年ですから」
アイナは真っ青になった。もう二度とハクと会えないなんて絶対に嫌だ。
「ここから出るにはアッシュに術を解いてもらわないと駄目なのね」
「はい、そうです。でも、無理ですよ。アッシュ様、お寂しいんです。子供のままだから結婚も出来ず、ずっと私と二人きりで生きてきましたから。カストールで偶然あなたを見て、過去見の能力を知り興味を持ったんです。お願いですからしばらくの間一緒にいて下さい」
「しばらくって……どれくらいのことなの」
「せめて十年くらいは」
「……冗談じゃないわ。私は今すぐ帰りたいのよ」
「交渉決裂ですね。ではここで百年ほど過ごすことにしましょう。この中にいれば、あなたも歳を取りませんから」
そう言うとロビンも部屋の外へ出て行き、鍵をかけてしまった。
「嘘でしょう。お願い、出して――――」
だが、返事は聞こえてこなかった。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す
月山 歩
恋愛
舞踏会の夜、階段の踊り場である女性が階段を転げ落ちた。キャロライナは突き落としたと疑いをかけられて、牢へ入れられる。家族にも、婚約者にも見放され、一生幽閉の危機を、助けてくれたのは、見知らぬ魔法使いで、共に彼の国へ。彼の魔法とキャロライナのギフトを使い、人助けすることで、二人の仲は深まっていく。
婚約者はやさぐれ王子でした
ダイナイ
恋愛
「お前の婚約者が決まった。相手はレオン・クライトン王子殿下だ」
アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィアは、父親に勝手に婚約者を決められてしまう。
しかもその相手は、クライトン王国でやさぐれ王子と悪名高い第二王子のレオン・クライトンだった。
いつかまた、幸せな日常に戻れると信じていたシルヴィアは、突然の婚約に抵抗しようとする。
しかし父親がそれを許すはずもなく、抵抗むなしく婚約が決まってしまう。
こうしてシルヴィアは、やさぐれ王子との婚約生活が始まってしまった。
結婚前日に友人と入れ替わってしまった・・・!
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
伯爵令嬢キャンディスは、愛する婚約者パトリックとの挙式を明日に控えた朝、目覚めると同級生のキムに入れ替わっていた。屋敷に戻っても門すら入れてもらえず、なすすべなく結婚式を迎えてしまう。このままではパトリックも自分の人生も奪われてしまう! そこでキャンディスは藁にも縋る思いである場所へ向かう。
「残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました」に出てくる魔法使いゼインのシリーズですが、この話だけでも読めます。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
水の都で月下美人は
ささゆき細雪
恋愛
舞台は栖暦(せいれき)1428年、中世の都市国家ヴェネツィア。
四旬節を目前に、元首が主催する謝肉祭が連日のように行われていた。
前元首の末孫姫ディアーナに仕える少女エーヴァは、主の一生のお願いを叶えるため、彼女に変装して祭りに参加していた。そんな彼女は異国からやってきた貿易商の息子、デーヴィットと出逢う。だがふたりは互いに仮面で顔を隠し、ダヴィデとディアーナと名を偽ったまま、恋に落ちてしまった。
次の祭りの夜、二人は仮面で素性を隠したまま再会を果たす。デーヴィットはエーヴァに月下美人の鉢植えを手渡し、「ただ一度の恋」という花言葉を告げ、彼女がディアーナではないと暴きつつ、彼女と一夜限りの関係を結んでしまう。
二人は思いがけない形で再会する。
それはディアーナの結婚話。十五歳になった彼女に、両親はデーヴィットを紹介したのだ。
けれどデーヴィットは謝肉祭の夜に出逢った少女の存在が忘れられずにいた。その少女がディアーナのお気に入りの侍女、エーヴァで……
身分違いのふたりは無事に想いを貫き、遂げることができるのか?
*中世ヴェネツィアの世界観をベースにした半分架空のヒストリカルロマンスです。そのため時代考証などあえて無視している描写もあります。ムーンライトノベルズにも掲載中。Rシーンは予告なしに入ります。
婚約して半年、私の幸せは終わりを告げました。
ララ
恋愛
婚約して半年、私の幸せは終わりを告げました。
愛する彼は他の女性を選んで、彼女との理想を私に語りました。
結果慰謝料を取り婚約破棄するも、私の心は晴れないまま。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
君は私のことをよくわかっているね
鈴宮(すずみや)
恋愛
後宮の管理人である桜華は、皇帝・龍晴に叶わぬ恋をしていた。龍晴にあてがう妃を選びながら「自分ではダメなのだろうか?」と思い悩む日々。けれど龍晴は「桜華を愛している」と言いながら、決して彼女を妃にすることはなかった。
「桜華は私のことをよくわかっているね」
龍晴にそう言われるたび、桜華の心はひどく傷ついていく。
(わたくしには龍晴様のことがわからない。龍晴様も、わたくしのことをわかっていない)
妃たちへの嫉妬心にズタズタの自尊心。
思い詰めた彼女はある日、深夜、宮殿を抜け出した先で天龍という美しい男性と出会う。
「ようやく君を迎えに来れた」
天龍は桜華を抱きしめ愛をささやく。なんでも、彼と桜華は前世で夫婦だったというのだ。
戸惑いつつも、龍晴からは決して得られなかった類の愛情に、桜華の心は満たされていく。
そんななか、龍晴の態度がこれまでと変わりはじめ――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる