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花の髪飾り
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トーヤ一座がペスカに滞在して十日が経った。公演は終わり、明日には次の町へ向けてまた出発する。
アイナは衣装や小道具の片付けをしながら、行商人の男が来るかどうか、ソワソワして待っていた。
(ハクはその後どうなったんだろう。話の続きが知りたい)
「アイナ、剣舞に加わりたいんだって?」
剣舞リーダーのカイが、アイナに声を掛けてきた。
「あ、うん。難しいから今までやらなかったんだけど、そろそろチャレンジしようと思って」
「わかった。じゃあ片付けが終わったらおいで。サナに教えてもらうといい」
「わかった。ありがとう、カイ」
カイはニコっと笑うとテントの片付けに戻って行った。
昔のアイナなら、憧れのカイに笑いかけられたなら舞い上がってしまうところだが、今はまったくの平常心だ。
(サナは剣舞の女性チームのリーダーだったものね。今は、カイと結婚して育児中なのでお休みしてるけど)
出来ることを一つずつ増やす。それを目標に毎日を頑張っていくつもりだ。
「あ、来た」
行商人が荷物を抱えて中庭に入って来るのが見えたので、アイナは走り寄って行った。
「おじさん!」
「おお、アイナちゃん。エマはいるかね?」
「ええ、呼んでくるわ。そしたら、こないだの続き教えてちょうだい」
「こないだ?何だったっけな。ああ、そうか、アルトゥーラの話か」
「そう。王子様が無事王都に入れたかどうか」
「わかったわかった。じゃあここに商品を広げておくからエマを呼んできておくれ」
アイナは急いでエマを呼んできた。行商人は、広げた品々をエマがじっくり見ている間に、アイナに話をしてくれた。
「王子は無事に王都に入って、王様になったってさ」
「ほんと?!」
「ああ。死人をまったく出さずに政権を取り戻したんだってさ。そりゃあ、龍に乗って天候も操るような方なんだし、そもそも王になるべきお方だったんだものなあ」
「よかったあ……。アルトゥーラは、これで元通りになるかな?」
「うーん、まだ、雨がどんどん降って作物が採れるようになるまでは元通りとはいかんだろうなあ。でも元々豊かな土地だったんだ。数年で回復するだろ」
「悪い人達は捕まった?」
「ああ、悪い将軍は捕まってすぐに裁判で裁かれてね。家族もろとも国外追放が決まったってよ。軍も解体されて新たに作り直すってね。ワシが知ってるのはこれくらいだよ、アイナちゃん」
「ううん、充分よ。ありがとう、おじさん」
(良かった、全て上手くいってるみたい)
アイナは片付けに戻って手早く仕事を終えると、サナのところへ向かった。
「ああ、疲れた」
アイナは風呂に入った後、ベッドに倒れ込んだ。
「剣舞、ホント難しいなあ。出来るようになるのかしら」
サナは、筋がいいと褒めてくれた。これなら、三か月頑張れば公演に出られるようになるし、いずれはリーダーになれるだろう、と。
(今まで父さん母さんの一座だからって甘えて過ごしてきたから、これからはちゃんと芸を磨いて、みんなの役に立てるようにしなくちゃ。私の力でお客さんを呼べるくらいに)
一座が評判になれば、いつかまたアルトゥーラの祭りに呼ばれることがあるかもしれない。そうしたら、ハクの姿を遠くからでも見る事が出来るだろう。
(すっかり、違う世界の人になっちゃったもんね、ハク……。王様と踊り子だもの。きっともう、会うことは無いだろうな)
アイナは枕元に大事に置いてある花の髪飾りを手に取って見つめた。
(これがある限り、ハクとの思い出は現実のものだって感じられる。一生、大切に持っていよう)
アイナは髪飾りを布にくるんで大事に箱に収めると、時間はかかったがなんとか眠りにおちていった。
アイナは衣装や小道具の片付けをしながら、行商人の男が来るかどうか、ソワソワして待っていた。
(ハクはその後どうなったんだろう。話の続きが知りたい)
「アイナ、剣舞に加わりたいんだって?」
剣舞リーダーのカイが、アイナに声を掛けてきた。
「あ、うん。難しいから今までやらなかったんだけど、そろそろチャレンジしようと思って」
「わかった。じゃあ片付けが終わったらおいで。サナに教えてもらうといい」
「わかった。ありがとう、カイ」
カイはニコっと笑うとテントの片付けに戻って行った。
昔のアイナなら、憧れのカイに笑いかけられたなら舞い上がってしまうところだが、今はまったくの平常心だ。
(サナは剣舞の女性チームのリーダーだったものね。今は、カイと結婚して育児中なのでお休みしてるけど)
出来ることを一つずつ増やす。それを目標に毎日を頑張っていくつもりだ。
「あ、来た」
行商人が荷物を抱えて中庭に入って来るのが見えたので、アイナは走り寄って行った。
「おじさん!」
「おお、アイナちゃん。エマはいるかね?」
「ええ、呼んでくるわ。そしたら、こないだの続き教えてちょうだい」
「こないだ?何だったっけな。ああ、そうか、アルトゥーラの話か」
「そう。王子様が無事王都に入れたかどうか」
「わかったわかった。じゃあここに商品を広げておくからエマを呼んできておくれ」
アイナは急いでエマを呼んできた。行商人は、広げた品々をエマがじっくり見ている間に、アイナに話をしてくれた。
「王子は無事に王都に入って、王様になったってさ」
「ほんと?!」
「ああ。死人をまったく出さずに政権を取り戻したんだってさ。そりゃあ、龍に乗って天候も操るような方なんだし、そもそも王になるべきお方だったんだものなあ」
「よかったあ……。アルトゥーラは、これで元通りになるかな?」
「うーん、まだ、雨がどんどん降って作物が採れるようになるまでは元通りとはいかんだろうなあ。でも元々豊かな土地だったんだ。数年で回復するだろ」
「悪い人達は捕まった?」
「ああ、悪い将軍は捕まってすぐに裁判で裁かれてね。家族もろとも国外追放が決まったってよ。軍も解体されて新たに作り直すってね。ワシが知ってるのはこれくらいだよ、アイナちゃん」
「ううん、充分よ。ありがとう、おじさん」
(良かった、全て上手くいってるみたい)
アイナは片付けに戻って手早く仕事を終えると、サナのところへ向かった。
「ああ、疲れた」
アイナは風呂に入った後、ベッドに倒れ込んだ。
「剣舞、ホント難しいなあ。出来るようになるのかしら」
サナは、筋がいいと褒めてくれた。これなら、三か月頑張れば公演に出られるようになるし、いずれはリーダーになれるだろう、と。
(今まで父さん母さんの一座だからって甘えて過ごしてきたから、これからはちゃんと芸を磨いて、みんなの役に立てるようにしなくちゃ。私の力でお客さんを呼べるくらいに)
一座が評判になれば、いつかまたアルトゥーラの祭りに呼ばれることがあるかもしれない。そうしたら、ハクの姿を遠くからでも見る事が出来るだろう。
(すっかり、違う世界の人になっちゃったもんね、ハク……。王様と踊り子だもの。きっともう、会うことは無いだろうな)
アイナは枕元に大事に置いてある花の髪飾りを手に取って見つめた。
(これがある限り、ハクとの思い出は現実のものだって感じられる。一生、大切に持っていよう)
アイナは髪飾りを布にくるんで大事に箱に収めると、時間はかかったがなんとか眠りにおちていった。
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