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年上のひと

誘惑

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「じゃあ、こんどはこっちをお願いね」
 うずたかく詰まれたさまざまな雑誌に囲まれながら、それらを選別し、ダンボールに押し込んでゆく。返品宛名ラベルに日付を書き込むと、ダンボール側面に貼り付けた。
「一君は覚えが早くて助かるな」
「……そうですか?」
「うん。すっごく早い。若さよね」
 束ねた髪をオフショルダーのサマーセーターから覗く白い肩にしどけなく垂らしたニカイドウさんは囁くようにいう。
「これは……書籍扱いですか」
「どーれ」
 ニカイドウさんが顔を寄せてくる。
「うん、それは書籍ね」
 上四元クシナの紹介で始めた大型複合店のアルバイトは書籍コーナー、返本作業がメインであった。
 ひと口に返すといっても本には種別があって全部まとめて返せないとか雑誌には期限があるとかいろいろと初めて知ることが多く、それらにまず驚いた。
 コミックスも雑誌扱いと書籍扱いに分かれていて、もちろん一緒には返せない。さらに文庫もそれらとは別に梱包する必要があったりして煩雑なことこの上ない。
 もっとも、以前は雑誌コードと呼ばれる裏表紙に記載された書籍ごとの数字をいちいち専用伝票に書き写していたというから、これでもずいぶん簡略されたらしい。
 バックルームはしんとしてニカウドウさんと僕以外は誰もいない。店内からは営業中ずっとヒット曲らしき歌が延々と流れているおかげで、今の流行とやらをうっすらと知ることができた。
 ちょうど一週間前。僕の教育係として紹介されたニカイドウさんを見たとき、どこかで会ったことがある人だと思ったら、また会ったわねと向こうから話かけられた。
 その笑顔、口元のほくろは紛れもない、十鳥さんを探して瓊紅保市立図書館に向かう途中で入ったコンビニ、そして姉の見合いの日に十鳥さんと入ったファミレスで働いていた人妻店員さんのものであった。
「これって運命かなあ」
 そんなことを濡れた瞳で首を傾げながらいうニカイドウさんにいろんなところで働いているんですねとごまかすように訊いたら、じっとしているのが嫌いだからと答えてくれた。
 夕方までコンビニで働き、夜はここ。休日はファミレスということらしい。お金が欲しいとかではなく、あくまでも働きたいからということで一週間ほぼ働き尽くめのニカイドウさんは新婚一年にも満たない新婚さんだという。

「休憩しよっか」
 まとまった休憩はちゃんとあるのだけれど、ニカイドウさんは何かというと、五分、十分と休憩を誘ってくる。
「僕はまだ」
「ふふふ、若いんだ」
 タバコ――ショートホープというらしい――を取り出すとくわえてマッチを擦る。
 意外なところでの邂逅以上に衝撃的だったのは、清楚な人妻の印象が強いニカイドウさんが愛煙家ということであった。
「ああ、この人タバコ吸うんだ、って顔してる」
 最初、顔に出したつもりはなかったけれど、まるで上四元クシナみたいな感じでそう笑うニカイドウさんに幻滅を覚えたのは嘘ではなかった。
 身近に喫煙者がいないので喫煙事情はよく分からないけれど、女性はスリムなメンソールとかいうものを好むんじゃないのだろうかとか、火はおしゃれなライターを使うんじゃないのだろうかとか、そんなことも思ったりしたけれど、ニカイドウさんはこのホープを昔ながらの馬が描かれた小箱のマッチでというスタイルが気に入ってるみたいだった。
「でも旦那は吸わないのよ」
 フォローにすらならないことをいうニカイドウさんはさらに続けて、
「最近セックスのとき、旦那ってキスしてくれないんだ。ヤニの匂いがイヤだって」
 と赤裸々な夫婦生活のことまで語り出して、僕の反応を楽しんでいた。
「入れて、動いて、出すだけ」
 自嘲するように鼻から煙を吐き出すと、イッたあとは自分だけ満足しちゃってさっさと寝ちゃうのよと寂しそうにつぶやく。
 ……これは立派なセクハラではないのだろうか。
「幻滅しちゃった?」
 いえ、と言葉を押し出そうと試みるも、なかなか上手くいかず、けっきょくニカイドウさんに戯れのきっかけを与えることになるのだった。
 そんなことを思い返しながら未だに慣れないニカイドウさんの喫煙姿を見つめていたら、ふと目が合ってしまう。慌てて逸らすけれど、手遅れであった。
「ここ一週間ね、ご無沙汰なの。……ねえ、一君。新婚一年足らずでセックスレスの兆候なんておかしいでしょう」
 正直、よく分からない。
「タバコ吸う女なんてやっぱり嫌い?」
 いいえ、ときっぱりいえば丸く収まるのだろう。でも。
「個人的にあまり好ましいとは思えません。すみません」
「ううん、そういう一君の正直なところ好きよ。私がいうのもなんだけれど、タバコを吸う女が好きとかいう男は信用できないもの」
 こういうことで褒められた場合、素直に受け取っていいものか判然としない。
 ニカイドウさんはいつもみたく半分くらい吸ってから空き缶に吸殻を放った。
 小休止に満足した彼女は残りの返本をやっつけるべく、アダルト雑誌の山に取りかかり始めた。女性のニカイドウさんがそれらを処理するのはどうだろうと思いはしたけれど、学生の僕に配慮したみたいだった。
 返本作業時に軍手をはめた方がいいとアドバイスをしてくれたのはニカイドウさんだったけれど、そのニカイドウさんは馴れなのか素手だったりする。
 返本詰めが済んだダンボールを風除室まで台車で運び終えた頃、店内に閉店を知らせる音楽が流れた。十時以降は働けないので閉店の後片付けは免除されている。
 パートのニカイドウさんと一緒にタイムカードを押して着替えると、まだ働いている人たちに挨拶をしてお先に失礼した。
「どこかに寄っていく?」
 アルバイトにあたって問題の一つは帰りの心配であった。この辺りは駅から若干離れているので終電はかなりあやしい。それを救ってくれたのは誰であろう、マイカー持ちのニカイドウさんであった。
「いえ、まっすぐお願いします」
「真面目ね」
 今はもう生産されていないという黒のスポーツカーのドアロックが解除されるのを待って乗り込む。四つ目とかいわれている車高の低めなそれは乗り心地はお世辞にもよくない。段差のある箇所ではお約束のようにアンダーボディをガリガリと擦るので、そのたびに不吉な予兆を思わせる不均等で神経質な音や振動に意味もなく怯え、例えようのない不安に駆られるのであった。
 瓊紅保市民であるニカイドウさんからすれば車とはいえ、面倒をかけていることもあって何かお礼をしなければと何度か口にしたけれど、子供はそういうことは考えなくていいのとその度に叱られた。
 せめて家でお茶でもといいたいけれど、姉に内緒で働いている手前、どう説明すればいいのか分からないし、上げたら上げたで人妻さんにそういうことをしていいのかというモラル面でも問題がありそうで悩ましい。
 念には念を入れて、下ろしてもらうのは毎回、近所にある児童公園前のコンビニ脇でお願いしている。
「いつもすみません」
「どういたしまして」
 ニカイドウさんはそう返すと、車を降りてきた。
「ちょっとお話しない?」
 そう言い残すとコンビニに入っていった。やはりこれは帰っちゃいけないのだろう。
 ほどなく飲み物を持ったニカイドウさんが出てきた。
「はい、一君」
 働いているときとは違い、髪を下ろした今年で二十五歳になるというニカイドウさんは大人っぽくみえる。
「ふけて見えるってことでしょう」
 下ろした髪に対する感想を求められたアルバイト初日にそう笑われたけれど、目は笑っていなかった。年齢に関する話題はデリケートだから取り扱いには注意が必要だというのは感覚的に知ってはいたけれど、社会経験不足が出たカタチになってしまってかなり焦った。
 慌てて何度も謝る僕に、ニカイドウさんは怒ってないわよといってくれたけれど、やはり目には陰がうっすら浮かんでいた。
「髪痛んじゃってるからねー」
 確かに結っていたときにはよく分からなかったけれど、髪質は荒れていた。結婚前は染めたりパーマをあてたりで酷使してきたツケらしい。
 ニカイドウさんからオレンジジュースを渡され、礼をいうと一君とゆっくりお話したかったんだと缶コーヒーのプルタブを開けた。
 タバコに衝撃を受けたその日に缶コーヒーを飲むことも判明したニカイドウさんはまるで女っぽくないでしょうと苦笑したけれど、身近に愛飲している姉がいるので違和感はないですよと返すと嬉しそうにしていた。ただ姉と違って微糖やブラックなどこだわらずになんでも飲んでいてそこは違っていた。
「一君とお話したくても勤め先じゃ他の人の目もあるし、落ち着かないでしょ」
 落ち着く必要があるのかなと不思議に思っていると、初めて一君に会った日のことを覚えている? と訊かれた。
「コンビニで道を尋ねた日のことですよね」
「そう。図書館の場所を訊いてきたでしょ。すぐそこなのに」
 くすくす笑うニカイドウさんにあの日のことが甦り、頬が熱くなる。
「道を訊くのが目的だったでしょうに、あれじゃ意味なかったんじゃない?」
「あ、でも、喉も渇いていたし、そんなこともなかったですよ」
 そうなの? と新商品らしい缶コーヒーを飲むニカイドウさんの指には湾曲したデザインのプラチナリングが光る。独りじゃない証。
「あのとき慌てていたように見えたけれど、何かあったの?」
「友人を探していたんです」
 あのとき、その友人である十鳥さんがトラブルに巻き込まれていたことまではいうこともないであろう。
「友人ってお店に連れてきた女の子?」
 これが女の勘というやつだろうか。頷くと、大事な友人みたいねと含みを持たせた笑みを浮かべる。
「コンビニで一君を初めて見たとき、可愛い子だなって思ってたの」
 その言葉に秘匿しておきたいものを見られたような気まずさを覚える。
 あのときのニカイドウさんはバレッタで髪を押さえていて、店を出るときは笑顔で手を振ってくれていた。そういう風に思われていたのかと嬉しい反面、そんなことを感じる自分の卑しさにうんざりもする。
「だから、レストランで再会できたときは本当に嬉しかった」
「そ、そうなんですか」
 ええ、と力強く頷くニカイドウさんからは嘘偽りはないといった宣誓にも似た、厳かさを感じた。
「そうしたら、今度は働いてるところにアルバイトでやって来るとか運命じゃなかったら何なのって感じなんだもん」
 初日に挨拶したあと、濡れた瞳で首を傾げながらそんなことを口にしたニカイドウさんは冗談をいっているようには見えず、ちょっと気圧されたし、それは今現在も同じ。
 こちらの思惑など構うことなく、攻める一方のニカイドウさんにどう接していいのか考えあぐねて足元のローファーを眺めていると、口元のほくろが色っぽい結婚一年にも満たない新妻さんはそっと声音を落とした。
「一君って、彼女いるの?」
 短いのに、重いひと言だった。
 気がつくと、本当にすぐそこ、覗き込むようにこちらをうかがっているニカイドウさんの顔があった。
 いないです、といったつもりだったけれど、上手く言葉にならない。ごまかしているように取られたのか、結婚してる女にいうことじゃないかとこぼすけれど、どこか楽しんでいるようにも感じる。
「きっと一君に軽い女って思われてるよね。でも、自分に正直にいたんだ、私」
 僕の胸に寄りかかるようにアタマを乗せると、ネクタイを弄びはじめる。
 胸の鼓動がいかがわしいリズムを刻み、軽いめまいを覚えた。
 上四元クシナにも似たようなことはされたけれど、同世代の彼女とは違い、ニカイドウさんは年上でさらに冗談では済まされない立場人妻のせいで不穏さが常につきまとう分、困惑よりも恐怖の方が圧倒的に精神を支配している。
「私ね、仕事が終わったあとに一君を送っていくのが今いちばんの楽しみなの」
 それを裏づけるようにニカイドウさんは自分が休日でも僕を送るために迎えに来てくれているけれど、そういう思惑が働いていたとは。
 如何ともしがたい時間の中、進退を決めかねていると、あんまり遅くなっちゃうとご両親に申し訳ないわねとニカイドウさんはあっさり離れて車に乗り込んだ。
「じゃあね、一君。おやすみなさい」
 ジュースの礼をいい、挨拶を返すとクラクションを一つ鳴らして、ニカイドウさんの繰る四つ目は轟音と共に去っていった。
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