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4章
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長瀬さんは通話ボタンを押すと、そのままスピーカーにした。
「もしもし」
『おう、俺だ』
「え?」
『いや、俺だ』
「……え?」
長瀬さんはニヤニヤした顔で楽しそうにふざけている。割といつもの長瀬さんに見える。もしかしたら無理してるいかもしれないけど。
『いや、だから、神城だ』
「知ってますよ?」
『じゃあ今の時間返せ』
「何だったんですか、今の?」
僕はフフッと笑いながら言った。
「え、何となくしてみただけ。前ドラマでこういうシーンあって、いつかやってみようって……」
長瀬さんはフフッと笑いながら言った。
『ったく……、それで、どうだった?』
神城さんは呆れたように少し笑った。
「1件目に殺された遠藤夏希と3件目に殺された中堂詩織の証言はほとんど一致しました。目元だけの証言でしたけど、切れ目で、遠藤夏希は茶髪、中堂詩織は明るい髪色だったと証言しました。あと、中堂詩織殺害の時は眼鏡をかけていたそうです」
『それだけか……。今時の大学生とかなら結構似たような奴ばっかだしなぁ……』
「あと、もう1つ。2人とも匂いが気になったと言っていて……」
『匂い?香水とかか?』
「はい、それで……」
『香水も似たようなもんだろ……。今時の大学生なら結構つけてる奴多いだろ……』
神城さんは長瀬さんの言葉を遮るように言った。
「え、そうなんですか?」
僕は長瀬さんのスマホに向かって言った。
『違うのか?たまにすれ違う時きっつい匂いのやつとかいるだろ?』
「僕はつけてなかったですけどね……」
「とりあえず、その話は置いといて。あと、神城さん!最後まで話聞いてくださいよ!」
長瀬さんは不満げな声で言った。
『あー、それはわるいわるい』
神城さんは全く悪びれる様子はない。
「……はぁ、現世行ったら鉄板焼きですからね?」
『何でだよ!』
「話最後まで聞かなかった罰です」
長瀬さんはそう言ってスマホに向かって舌をべーと出した。ちなみにテレビ電話ではない。
『……お前今絶対舌出しただろ?』
「……え、出してませんけど?」
神城さんは実は能力者なのかもしれない。
『鈴木!出してたか?』
「出してました」
「ちょっと!太郎君?」
長瀬さんからの視線から顔を逸らしながら言った。
『嘘ついたから、焼肉な』
「何でですか!?」
電話の向こうの神城さんはケラケラ笑った。
「あと、太郎君も正直に言わないの?罰として、今度お菓子買ってきてね」
「えぇー……」
長瀬さんは悪そうに笑った。
『で……、話の続きは何なんだよ?』
「焼肉ですか?」
「鉄板焼きじゃないですか?」
『匂いだよ!遠藤夏希と中堂詩織が嗅いだ匂い!』
「あぁ、そっち……。遠藤夏希の証言だと、香水の奥の方に変な匂いがしたって……」
『変な匂い?』
「多分、犯人はその変な匂いを隠すために香水を使ったんじゃないかってさっき太郎君と話してて……」
『変な匂い……。なるほどな……。あと1人の被害者は?』
「籠池さんは用事で来られなかったようです」
『そうか……』
僕の言葉に神城さんはそう言うだけだった。
『……それで、痣はどうだった?』
電話の向こうから聞こえた神城さんの言葉に長瀬さんは少し苦い顔をした。
「……なかったようです……」
『そうか……。どうする?こっち来て捜査するか?』
「……そうします。良い、太郎君?」
長瀬さんはそう言って僕の方を見た。
「僕は全然いいですけど……」
「じゃあ明日行こっか。そういうことなんで、よろしくお願いします」
『あぁ、分かった。じゃあな』
そう言って電話は切れた。
「今度って言ったけど……、太郎君!」
「……何ですか?」
僕の言葉に長瀬さんはまた悪そうに笑った。
「プリン食べたいからプリン買ってきて!3つ!」
長瀬さんは人差し指、中指、薬指を立てて僕に見せた。
「え、マジで行くんですか?」
「当たり前でしょ?裏切ったんだから」
長瀬さんは不満げに頬を膨らませた。
「えぇ……、じゃあ分かりましたよ。買ってきたら許してくれるんですね?」
「それはどうかな?」
「え……」
「はい、いってらっしゃーい!」
長瀬さんはそう言って手を振った。僕は仕方ないので長瀬さんに背を向けて究明課の扉をくぐった。
「もしもし」
『おう、俺だ』
「え?」
『いや、俺だ』
「……え?」
長瀬さんはニヤニヤした顔で楽しそうにふざけている。割といつもの長瀬さんに見える。もしかしたら無理してるいかもしれないけど。
『いや、だから、神城だ』
「知ってますよ?」
『じゃあ今の時間返せ』
「何だったんですか、今の?」
僕はフフッと笑いながら言った。
「え、何となくしてみただけ。前ドラマでこういうシーンあって、いつかやってみようって……」
長瀬さんはフフッと笑いながら言った。
『ったく……、それで、どうだった?』
神城さんは呆れたように少し笑った。
「1件目に殺された遠藤夏希と3件目に殺された中堂詩織の証言はほとんど一致しました。目元だけの証言でしたけど、切れ目で、遠藤夏希は茶髪、中堂詩織は明るい髪色だったと証言しました。あと、中堂詩織殺害の時は眼鏡をかけていたそうです」
『それだけか……。今時の大学生とかなら結構似たような奴ばっかだしなぁ……』
「あと、もう1つ。2人とも匂いが気になったと言っていて……」
『匂い?香水とかか?』
「はい、それで……」
『香水も似たようなもんだろ……。今時の大学生なら結構つけてる奴多いだろ……』
神城さんは長瀬さんの言葉を遮るように言った。
「え、そうなんですか?」
僕は長瀬さんのスマホに向かって言った。
『違うのか?たまにすれ違う時きっつい匂いのやつとかいるだろ?』
「僕はつけてなかったですけどね……」
「とりあえず、その話は置いといて。あと、神城さん!最後まで話聞いてくださいよ!」
長瀬さんは不満げな声で言った。
『あー、それはわるいわるい』
神城さんは全く悪びれる様子はない。
「……はぁ、現世行ったら鉄板焼きですからね?」
『何でだよ!』
「話最後まで聞かなかった罰です」
長瀬さんはそう言ってスマホに向かって舌をべーと出した。ちなみにテレビ電話ではない。
『……お前今絶対舌出しただろ?』
「……え、出してませんけど?」
神城さんは実は能力者なのかもしれない。
『鈴木!出してたか?』
「出してました」
「ちょっと!太郎君?」
長瀬さんからの視線から顔を逸らしながら言った。
『嘘ついたから、焼肉な』
「何でですか!?」
電話の向こうの神城さんはケラケラ笑った。
「あと、太郎君も正直に言わないの?罰として、今度お菓子買ってきてね」
「えぇー……」
長瀬さんは悪そうに笑った。
『で……、話の続きは何なんだよ?』
「焼肉ですか?」
「鉄板焼きじゃないですか?」
『匂いだよ!遠藤夏希と中堂詩織が嗅いだ匂い!』
「あぁ、そっち……。遠藤夏希の証言だと、香水の奥の方に変な匂いがしたって……」
『変な匂い?』
「多分、犯人はその変な匂いを隠すために香水を使ったんじゃないかってさっき太郎君と話してて……」
『変な匂い……。なるほどな……。あと1人の被害者は?』
「籠池さんは用事で来られなかったようです」
『そうか……』
僕の言葉に神城さんはそう言うだけだった。
『……それで、痣はどうだった?』
電話の向こうから聞こえた神城さんの言葉に長瀬さんは少し苦い顔をした。
「……なかったようです……」
『そうか……。どうする?こっち来て捜査するか?』
「……そうします。良い、太郎君?」
長瀬さんはそう言って僕の方を見た。
「僕は全然いいですけど……」
「じゃあ明日行こっか。そういうことなんで、よろしくお願いします」
『あぁ、分かった。じゃあな』
そう言って電話は切れた。
「今度って言ったけど……、太郎君!」
「……何ですか?」
僕の言葉に長瀬さんはまた悪そうに笑った。
「プリン食べたいからプリン買ってきて!3つ!」
長瀬さんは人差し指、中指、薬指を立てて僕に見せた。
「え、マジで行くんですか?」
「当たり前でしょ?裏切ったんだから」
長瀬さんは不満げに頬を膨らませた。
「えぇ……、じゃあ分かりましたよ。買ってきたら許してくれるんですね?」
「それはどうかな?」
「え……」
「はい、いってらっしゃーい!」
長瀬さんはそう言って手を振った。僕は仕方ないので長瀬さんに背を向けて究明課の扉をくぐった。
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