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婚礼
準備
しおりを挟む__翌朝。
姉妹達は公爵家の馬車に乗り、街の者に見送られながら神殿へと向かっていた。
婚礼の衣装は神殿で着るとのことで今は普段着ているドレスのままであり、まだ婚約者同士対面してもならないようで公爵と令嬢で馬車を分けて移動している。
窓の外を見れば、街の住人であろう異種族の民が花弁を投げて盛大に祝ってくれているのが見える。皆笑顔で此方に手を振り、祝福の言葉をありったけ叫んでいた。
賑やかで温かい様子に、窓を眺めていた姉妹達は自然と笑っていた。
「この国の方々は、本当に良い人達ばかりですわね」
「あ!今子供が手を振っておりましたわ!なんて可愛らしいのでしょう」
「でも、こんなに賑やかになってしまいましたが、婚礼の儀は厳かではなかったりするのでしょうか?祝ってくださるのは本当にありがたいことですけれど……」
「それはまだわからないけど、こうして賑やかでも許される気がするわ」
姉妹達はそれぞれ楽しみにしているようで、馬車の中は明るい雰囲気で満ちていた。
「到着しました。どうぞ、お足元に気を付けて」
そう言われると共に、馬車の扉が開く。
姉妹達を神殿まで送ってくれたのは、婚約破棄されてからまだ間もない頃、ベルフェナールまでの道のりを案内してくれた御者のガハルであった。
姉妹達は馬車から降りて彼に一礼すると、神殿の方へと視線を向けた。
そして、圧巻された。
広大な草原にいくつもの石畳で囲われた、真っ白な神殿がそこにあった。
床から屋根にかけて真っ白な石を積めて作られたその神殿は、アミーレアの王宮なんて比にならないほどの規模であり、昇り始めた陽に照らされて神々しく輝いている。草原に佇むその姿は蜃気楼のようにも思えた。
姉妹達はその光景に目を奪われ、口も塞がらない状態であった。
「御令嬢様、主人様達は既に着いております故、お急ぎください」
急かす様子もなく、ガハルは姉妹達を神殿へと向かわせた。姉妹達を見送る彼の顔は、柔かであった。
神殿に着くや否や、待機していた仕立て屋の女性達が姉妹達を別の部屋へと連れていくいく。
全てが白い神殿は、控えの間も白かった。そこで姉妹達は着ていたドレスやヒールなどを丁寧に脱がされ、婚礼の衣装を着させられていた。
ドレスは姉妹達それぞれ形が違うが、どれも一人で着られるようなものではないので、手伝ってくれる人がいて助かったと姉妹達は安堵していた。
しばらくかけて、姉妹達は婚礼の衣装に着替えられた。
オリビアは大胆に肩まで露出させたスレンダードレスで、体のラインがくっきり見えるものとなっているが、元々スタイルの良いオリビアにはお似合いである。首には控えめにフリルのあしらわれたチョーカーが巻かれている。髪は後ろで編み込まれ、最後に花形のシュシュでひとつに纏めていた。
ルーナもオリビア同様ラインの見えるマーメイドドレスで、胸元にはラトーニァから貰ったものと同じ花がコサージュとして飾られている。袖はないので腕は肩まで見えるが、首元は襟でしっかりと隠されており、オリビアと比べれば露出は少ない方であった。髪は左肩に下ろし、サテンリボンで綺麗に纏められていた。
エレノアはAラインのドレスでスカート部分には綺麗な刺繍が綿密に縫われている。首に飾られた赤いネックレスが目立つよう首周りだけは円く空いているが、それ以外体は全てレースで隠していた。髪は縛ることもなく自然の状態で、蝶の飾りが目立つカチューシャをかけていた。
クロエは王道にもプリンセスドレスであった。フリルやらリボンやら柔らかいものがスカート部分を埋めて全体的にモコモコとしている。しかし、上体はキャミソールを模ったシンプルなものとなっており、胸元は花のフリルがこれまた多めにあしらわれていた。髪はハーフアップで大きめのリボンが飾られている。
それぞれが個性豊かであるものの、その色は純潔の白で統一されていた。
「驚いたわ。皆こんなに綺麗になって」
自分と同じように白で包まれた姉妹達を見て、オリビアは感嘆の息を漏らした。
その声にルーナもエレノアもクロエも、嬉しそうに微笑む。
「お姉様もとても綺麗ですわ」
「このドレス、真っ白でふわふわしていますの!」
「ちょっとふわふわしすぎてる気もしますけど……なんだか嬉しい気分です」
此処にいる皆が、自然と笑っていた。
「皆様。準備が整ったようですから、そろそろ公爵様のところへ」
着替えを手伝ってくれた女性の一人が声をかけてくる。
姉妹達は女性に促され、控えの間を後にした。
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