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導入部

執事セバスティアンの独り言

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 初めましてご機嫌よう。
 わたくしの名はセバスティアン・マルティーニ。
 皆様がナーロッパと呼称しておられるような異世界に存在しているサルヴァドール筆頭ひっとう伯爵はくしゃく家に長らく務めるしがない・・・・老執事ろうしつじでございます。

 本日、私めは大変、うんざりしております。
 何故なら私の主人ドミニク・ベン・サルヴァドール伯爵の下へ一人の女性がお訪ねになられたからです。
 
 女性の名は、パトリシア・ベン・クルス様。ドミニク様の幼馴染にしてクルス男爵だんしゃく家の御令嬢にあらせられます。
 まぁ、御令嬢とは申しましても、このお方。幼いころから大層なおてんば娘でございまして、今年28歳になるというのに結婚どころか女だてらに剣を片手に現役の冒険者をなさっておられます。
 おかげでこの世界の結婚適齢期を大幅に過ぎたというのに浮いた話の一つもない。
 しかも、このパトリシア様。おてんばが過ぎるのかご両親のお気持ちが全く分かっておられません。
 ダンジョンに潜ってモンスターと戦い続ける日々を送っておられるという。
 そんな御息女を心配しなさるご両親のお気持ちを思うと、私も問題をかかえる子を持つ一人の親として胸が痛みます。

 その上、期待に満ちた目で我が主・ドミニク様にとある願い事をするために当家を訪れになられたとか。
 
 大体、このアホ娘が・・失礼。パトリシア様がこういった期待に満ちた目でドミニク様をお見つめになられるときは、幼いころからろくなお願い事をしないものです。

 「家に迷い込んできた野良犬の子を飼いたいから、一緒にお父様とお母様を説得して・・・・」と言ってドミニク様の下へ連れてきたのが「地獄の番犬」という二つ名を持つハウンドドッグの子供。あの日はドミニク様とパトリシア様を御守りしつつ、私が命懸けで親犬と戦って取り押さえてなだめることに成功。なんとか子犬を返すことできましたが、今思い返しても恐ろしい思い出です。
 
 他にも幼いころにお屋敷の裏の山にはダンジョンがあると言ってドミニク様を連れ出してダンジョン潜入したり、
 ドミニク様と一緒にお菓子屋さんを開こうと言い出して、調理の途中でボヤによる出火。台所で大火事を起こしたこともございました。
 思春期に入ったら、恋に目覚めて大人しくなるかと思いきや町に出てチンピラに喧嘩を売ったパトリシア様を御守りするためにドミニク様が6対1の喧嘩をする羽目になったり、他にも色々な問題を多数起こして当家出入り禁止処分になったこともあったほど、それはもう、おてんばなお姫様なのでございます。

 そうして、パトリシア様がそういった問題を起こすときは決まって、この期待に満ちた瞳をしておいでなのです。
 ああ・・・・今日はどのような無理難題を仰るつもりなのでしょうか?
 
 そもそも、このお二人。心の中で深く愛しあう者同士。
 その思いは周囲に隠しておられるつもりですが、気が付かぬは本人同士ばかり・・・・・
 周囲は「早くくっつけ!!」と、色々手をまわしてやって早20年。だというのに一向にくっつかずに、いつまでも付かず離れずの距離でイチャイチャと・・・・・・・。
 今日もこれからこのバカップルの歯がゆいラブコメを見せつけられると思うと・・・
 私、もう。本当にうんざりしてしまいます。
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