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第6話
ヒロイン揃い踏み 11
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「あ、足手まといだってぇ~?」
ナタリアの逆鱗にレジーナは触れてしまった。席を立ちあがりながら購入したばかりの長剣に手をかけた瞬間、レジーナも鷹のような目つきに変わり腰の長剣に手を伸ばした。
その瞬間だった・・・。
俺も含めレジーナもナタリアも恐怖ですくみ上った。
アルバートの体から恐ろしいほどの殺気が爆発的に巻き上がったからだ。
その殺気は、ねっとりと体にまとわりつき真綿で首を締められているかのような錯覚に陥ってしまうほど濃厚だった。
そんな暴力的なアルバートの殺気の濃さから彼がこれまでにどれほどの修羅場を乗り越えてきたのかが分かった。
3人とも恐怖の虜で全く身動きが取れなかった。
「いい加減にしろ。剣を抜いたら生きるか死ぬかの戦いになる。
はっきり断っておくが、仲間は家族だ。信頼できないようなならず者は私が容赦なくたたき出すぞ。」
刺すような目と言葉が俺達に注がれる。
その殺気は恐怖のあまり腰を抜かしたナタリアとレジーナがストンと椅子に落ちるまで注がれた。
二人にはもう戦意など残っていなかった。
「それでいい。では、今後の事を話しあおうか。」
そこで初めてアルバートは殺気を収めて、にっこりと笑った。
その笑顔が俺は怖かった。
(ああっ・・・アルバート様。ステキっ!!
あの殺気で私も殺して欲しかったわっ!!)
チャームがウットリとした表情でそう呟いた。
子は親に似る。どうやらチャームもMの扉を開いてしまったようだった。
「さて、我々は2日後にここを出発して闇の勢力が建てた神殿を調査、攻撃する。
ところが人員は冒険者30名、それに我々だ。
少なすぎる。
多大な犠牲を出して敗走することは目に見えている。
そこで私は大衆浴場に行く前にレジーナに教会への応援要請を伝えるよう命令した。要請は受理され20名ほどの応援部隊が10日後に我々と合流する。
さらに教会にケツを叩かれたこの国の騎士団も動くだろう。
つまり、我々はそれまで持ちこたえればいいという事だ。」
アルバートはそこまで説明すると、「もう怒ってはいないから、食事をしながら聞いてくれたまえ。」と言いながらパンを手に持ち、俺に渡してくれた。
「斥候に関しては冒険者ギルドの野伏に頼む。無理をさせなければ、この任務を十分に果たせそうな者が3名いる。
ただ、彼らが持ち帰った情報次第では、奇襲攻撃の仕掛け方が変わる。
30名の冒険者をフルに使って突撃するか、少数の精鋭部隊を組んで行動するかのどちらかだ。
その少数部隊については、今ここにいる我々とヒューゴ。それから優秀な弓兵のレイモンドを加えた6名の部隊になる。」
アルバートは、そこまで一気に話すと両手をポンと叩いて「だから、仲良くしてくれたまえ」と笑顔を見せて言った。
この明るい笑顔の真意は安心ではなく、逆にこの任務の厳しさを俺たちに伝えているのだ。
俺は気が引きしまる思いがしたが、店を出るときにアルバートが俺の耳元で
「その髪型は君に似合ってる。可愛いよ、ローニャ。」なんて言ってくれたせいで一気に気が緩んでしまう。
「・・・もう、ばかぁっ・・・」(大好きっ!)
俺は心の本音を隠すために口ではバカと言うのだけれでも、高鳴る胸の鼓動と頬の紅潮。そして顔がニヤニヤと緩んでしまうのを止められなかった。
(男だった時はこんな関係になるなんて思わなかったけれど・・・アルバートに可愛いなんて言ってもらえるなんて・・・幸せっ!!)
この胸の高鳴りは恋の証。
それがとても心地いい。
今日、俺は初めて「女の子になれて良かった!」と、心の底から思ったのだった。
ナタリアの逆鱗にレジーナは触れてしまった。席を立ちあがりながら購入したばかりの長剣に手をかけた瞬間、レジーナも鷹のような目つきに変わり腰の長剣に手を伸ばした。
その瞬間だった・・・。
俺も含めレジーナもナタリアも恐怖ですくみ上った。
アルバートの体から恐ろしいほどの殺気が爆発的に巻き上がったからだ。
その殺気は、ねっとりと体にまとわりつき真綿で首を締められているかのような錯覚に陥ってしまうほど濃厚だった。
そんな暴力的なアルバートの殺気の濃さから彼がこれまでにどれほどの修羅場を乗り越えてきたのかが分かった。
3人とも恐怖の虜で全く身動きが取れなかった。
「いい加減にしろ。剣を抜いたら生きるか死ぬかの戦いになる。
はっきり断っておくが、仲間は家族だ。信頼できないようなならず者は私が容赦なくたたき出すぞ。」
刺すような目と言葉が俺達に注がれる。
その殺気は恐怖のあまり腰を抜かしたナタリアとレジーナがストンと椅子に落ちるまで注がれた。
二人にはもう戦意など残っていなかった。
「それでいい。では、今後の事を話しあおうか。」
そこで初めてアルバートは殺気を収めて、にっこりと笑った。
その笑顔が俺は怖かった。
(ああっ・・・アルバート様。ステキっ!!
あの殺気で私も殺して欲しかったわっ!!)
チャームがウットリとした表情でそう呟いた。
子は親に似る。どうやらチャームもMの扉を開いてしまったようだった。
「さて、我々は2日後にここを出発して闇の勢力が建てた神殿を調査、攻撃する。
ところが人員は冒険者30名、それに我々だ。
少なすぎる。
多大な犠牲を出して敗走することは目に見えている。
そこで私は大衆浴場に行く前にレジーナに教会への応援要請を伝えるよう命令した。要請は受理され20名ほどの応援部隊が10日後に我々と合流する。
さらに教会にケツを叩かれたこの国の騎士団も動くだろう。
つまり、我々はそれまで持ちこたえればいいという事だ。」
アルバートはそこまで説明すると、「もう怒ってはいないから、食事をしながら聞いてくれたまえ。」と言いながらパンを手に持ち、俺に渡してくれた。
「斥候に関しては冒険者ギルドの野伏に頼む。無理をさせなければ、この任務を十分に果たせそうな者が3名いる。
ただ、彼らが持ち帰った情報次第では、奇襲攻撃の仕掛け方が変わる。
30名の冒険者をフルに使って突撃するか、少数の精鋭部隊を組んで行動するかのどちらかだ。
その少数部隊については、今ここにいる我々とヒューゴ。それから優秀な弓兵のレイモンドを加えた6名の部隊になる。」
アルバートは、そこまで一気に話すと両手をポンと叩いて「だから、仲良くしてくれたまえ」と笑顔を見せて言った。
この明るい笑顔の真意は安心ではなく、逆にこの任務の厳しさを俺たちに伝えているのだ。
俺は気が引きしまる思いがしたが、店を出るときにアルバートが俺の耳元で
「その髪型は君に似合ってる。可愛いよ、ローニャ。」なんて言ってくれたせいで一気に気が緩んでしまう。
「・・・もう、ばかぁっ・・・」(大好きっ!)
俺は心の本音を隠すために口ではバカと言うのだけれでも、高鳴る胸の鼓動と頬の紅潮。そして顔がニヤニヤと緩んでしまうのを止められなかった。
(男だった時はこんな関係になるなんて思わなかったけれど・・・アルバートに可愛いなんて言ってもらえるなんて・・・幸せっ!!)
この胸の高鳴りは恋の証。
それがとても心地いい。
今日、俺は初めて「女の子になれて良かった!」と、心の底から思ったのだった。
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