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第2章 新国家「エデン」
第18話 開戦の火種
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翌日から明けの明星様のご命令通り、私の結婚商法が本格的にスタートいたしました。
すなわち「この国のために最も多く貢献していただいたお方の下へ御輿入れいたします。」という内容が各諸侯の下へ文書として配られたのでした。
一番最初に反応したのはアンドレア様でした。それもそのはず、アンドレア様は当王家と親戚関係にあることもあって城下町に別荘がご用意されていて、アンドレア様は私が新国王になった知らせを受けた時、本国から当国においでなされまして、それからはずっと別荘に住み込んでおられたのです。
ですから私の外交文書を読まれるとすぐにお城にやってこられたのでした。
「ラーマっ!! これは一体どういう事なんだい?
君がまさかこんないかがわしいことを思いつくとは思えない。一体、誰の入れ知恵なんだ?」
アンドレア様は、勝手知ったる他人の家とばかりになんの約束も取り付けずに堂々と私のいる執務室まで入ってきたかと思うと、私にそう言って詰め寄るのでした。私も自分がやっていることがいかがわしいことは重々承知であったので心苦しい部分もあり、アンドレア様に詰め寄られたら言い淀んでしまうのでした。
「あ、ああ、あの・・・。アンドレアお兄様。
わ、私・・・。その・・・・・・。」
しどろもどろで返答さえできなくなってしまった私をヴァレリオ男爵がサポートしてくれました。
「お静かにアンドレア様。
アンドレア様はドラァーゴ王国の皇太子に在らせられるお方です。その皇太子さまがこのように他国の宮殿に我が物顔で押し入り、我らが女王を詰問するとはなんとも常識はずれな所業と言わざるをえません。
どうぞ、お静まり下さい。」
「なんだ、貴様っ!! 見かけぬ顔だが、何処の者だっ!!」
少し苛立っておられたアンドレア様がそう言ってヴァレリオの胸倉をつかんだ時の事でした。
「お黙りなさい!! それが皇太子のなされようですか?
お控えなさい。外交問題になりましてよ?」
と、凛とした声が執務室に響いたかと思うとお姉様がチャイナドレス姿で入室されたのでした。
「・・・・・・。美しい・・・。」
アンドレア様は魔神フー・フー・ロー様が魔王様の手によって女性にされたことは当然ご存じなく、入室してきた女性がまさか魔神ギーン・ギーン・ラー様だとは夢にも思われないでしょう。そして、お姉様のこの世の者とは思われぬ美貌に呆然としてしまい、先ほどまで激昂なさっておられたのに、水を掛けられた焚火のように一瞬で大人しくなられてしまいました・・・。
「と、とてもこの世の御方とは思えない・・・。
それに見かけたことのない異国の衣装・・・。
ラーマ。この恐ろしく高貴なお方はどなただ?」
そしてアンドレア様は大人しくなるとお姉様の事をお尋ねになられました。それはただ単にお姉様の美貌に骨抜きにされただけではありません。お姉様が放つ高位に位置する魂が発するオドに恐れおののいての事。それはそうでしょう。だって、お姉様は魔神ギーン・ギーン・ラー様なのですから・・・・・・。
ただ、問題は一つ。私は魔王様の指示によってお姉様の正体を少しの間、他国に対して隠せとの厳命を実は受けていたのです。隠す理由については聞かされてはおりませんでしたが、どうせろくでもない理由なのはわかり切った事なので私も敢えて尋ねはしませんでした。ですが、例えお身内のアンドレア様とて他国の皇太子。お姉様の素性を明らかにすることは出来ず、魔王様に教えられたとおりの情報をアンドレア様にお伝えするしかありません。
「こちらのご婦人は遠い海の向こうより来られたアンナ・ラー様でございます。
龍の血脈のご婦人ですので、アンドレアお兄様もどうぞご無礼無きようにお気を付け下さいませ。」
と、私がアンドレア様にお姉様をご紹介いたしますと、アンドレア様は畏まってご挨拶なさいました。
「これは、アンナ様。知らぬこととはいえ、ご無礼仕りました。
それにしてもアンナ様がこの部屋に入ってこられた瞬間にこの部屋には一瞬でアンナ様の高貴なオドで満ちました。とても我らでは真似できぬ事と思いましたが、龍の血を引く御方でした。道理で・・・。」
アンドレア様がそう言って深々と頭を下げてご挨拶なされると、お姉様はアンドレア様に挨拶を返します。
「はい。アンドレア。これからよろしくお願いしますね。
私は旦那様のご用命でこの国に来ました。その御用命が何なのかは教えるわけには参まいりませんが、用件片付くまではよろしく頼みましたわよ。」
お姉様はそう言ってアンドレア様が下げた頭に対してまるで幼子をあやすかのようにポンポンと軽く叩くと私の元までやってきて
「ラーマ。今日は私とお話があるはずですよ? 男はこの部屋には必要なくって?」
と、仰いました。
私はもう、アンドレア様がお怒りにならないかと心配になるほど見下した仕打ちに戦慄を覚えましたが、当のアンドレア様はお姉様の高貴な出自をきちんと把握されておられるのか、お怒りになるどころか「これはご無礼致しました。邪魔者は直ぐに退散いたします。」と丁寧に御挨拶の上に執務室を出て行くのでした。
そして、そんなアンドレア様に対してお姉様はまるで追い打ちをかけるかのように冷たく声をおかけになったのでした。
「アンドレア。あなたは他国の皇太子とはいえ、このラーマは私の事を姉と呼ぶほど慕い、私も妹のように思っている存在。無礼は許しませんよ?
次は、必ず事前に約束を取り付けてからおいでなさい。」
とても厳しい口調でしたが、アンドレア様は「ははっ」と素直に返事をして他の男達と共に執務室から退室していかれました。アンドレア様はきっと怒る怒らない以前にお姉様のオドからお姉様が只者ではないことを悟られたのでしょう。それで大人しく引き下がられたのでしょうが・・・。
「お姉様っ!! いくらなんでもあの対応は酷いんじゃありませんか?」
私は厳しすぎるお姉様の対応に苦情を言います。あれではアンドレア様がお可哀想・・・。
でも、お姉様は顔を真っ赤にしながら私の耳元でこう仰ったのです。
「旦那様に肌着を奪われてしまいました。
こんなスリットのきついドレスだと何かの拍子で下が見えてしまいます。
ラーマ。お願い。肌着を貸してっ!!」
・・・・・・。
「ええええええ~~~っ!?
はだぎをとられたぁ~~~っ!!?」
「きゃあああああっ!! こ、声が大きいいいっ!!」
信じられません。信じられません。
なんという事をするんですか? あの魔王様は。
「昨晩、あなたを慰めるために乳房を弄んだときの感触をご報告したら、
『己は、俺も揉んだことのないあの乳を弄びやがったんかいっ!!
ええ根性しとるのワレっ!! 今日は一日、素っ裸でおれっ!!』
と、大層お怒りになられて・・・・・・服の方は何とか・・・とても口では言えないようなプレイをしたご褒美に返してもらえたのですが・・・肌着の方は返していただけなくて・・・。
そんな事情だから、ラーマっ!! 貸してくれない?」
・・・・・お二人ともアホたれですか・・・。
・・・と。あらいやだ。魔王様とお付き合いさせていただいてから、私言葉遣いが悪くなっている気がしますわ。
しかし、まぁ。同じ女として今の状況は見過ごせません。お貸しせねばっ!
私はお姉様をドレスルームにご案内して、失礼のない様に新品の肌着をお渡しします。私の新品の衣装なのですから、間違いなく我が国で一番高級な肌着です。
そうして、お着替えをなさっている姿を拝見させていただくと、お姉様の御体は本当にお美しい。
「いやん、そんなに見つめないで。ラーマ。
・・・・・・それとも、あなた。そっちの素質があるのかもしれないわね。」
私がお姉様の着替えをあまりに見つめていたので、お姉様は恥ずかしそうに両手でお体をお隠しになられました。
わ、私。そんな女性に警戒されるほどに見つめていましたでしょうか?
慌てて私は弁解いたします。
「ああっ、こ、これはご無礼をいたしました。
あまりの御美しさに見惚れてしまったのです。」
「・・・貴方も綺麗だわ。」
私が正直に感想を言うとお姉様も私を褒めてくださいました。
それでも、やはり私はお姉様には程遠いと感じたのです。
「でも、お姉様はそうおっしゃってくださってもアンドレアお兄様は、やはりお姉様の御美しさに一目で心を奪われていたかのように見えます。
きっと。女性の目と男性の目では違って見えるのでしょうね。」
私がそう言って落ち込む姿を見て、お姉様は「しょうがない子ね。」と言ってから教えてくださいました。
「貴方は気が付いていなかったかもしれないけど、あのアンドレアとか言う若者。
私とあなたのお胸を交互にチラチラ見比べていたのよ?
そしてその上で悔しいけれど、あの男は貴方を選んでいる・・・。
彼は本気よ。本気でアナタを狙っているわ。」
「・・・・え?」
お姉様のお言葉は私にとって意外でした。
・・・本当に・・・?
お兄様、お兄様と幼いころから呼ぶ私に優しくしてくださったアンドレア様・・・。
・・・・・・本気って・・・。もしかして、ずっと私の事を・・・?
そう思った瞬間、私の胸は高鳴り、顔が紅潮していくのが自分でもわかりました。
正直、嬉しかったです。
魔族と人間の混血の私をアンドレア様が選んでくれていたなんて。愛される喜びを女として私は初めて知ったのですから・・・。
しかし、お姉様はその後にとても不吉なことを仰ったのです。
「可哀相なラーマ。よくお聞きなさい。
あの男はダメです。
あの男は貴方に確かに本気です、ですが本気すぎるのです。
きっと旦那様の戦術にハマって大勢を犠牲にしながら泥沼に沈んでいくでしょう。」
私にはそれが予言に聞こえました。とても不吉な予言に・・・。
「どういう意味ですか? お姉様。
明けの明星様が何かなさるというのですか?」
「あなたは・・・まだわかっていません。旦那様の恐ろしさを。
あのお方は何もなされません。
しかし、なにもなされなくても池の鯉を根絶やしにする毒を一滴溢すように人心をかき乱すことができる御方なのです。」
「いいですね。ラーマ。
あの男の事は諦めなさい。」
私はお姉様にそのお言葉の真意を確かめたかったのですが、その真実を知ることが何だか恐ろしすぎて聞けずにいました。
そうして、1月も経たぬ間に私を賭けたセリは、ドンドンと値上がりしていったのです。
大国も小国も己の威信をかけて私の王国エデンの為に御金を貢いでくださいました。
それはお互いの名誉をかけた戦いでしたので、やがて明けの明星様が予言成された通り、この遊びは勝負にまで白熱していったのでした。
アンドレア様も本国に随分掛け合って随分な金額を融通してくださいました。それは大国スパーダにとっても厳しい額にまで上り詰めていたのでした・・・。
そうやっていつの間にか多くの国が脱落し、ドラァーゴとスパーダのみが残った時、いよいよ魔王様が動きました。
「頃合いやな。そろそろ俺の出番や。」
魔王様そう言うと3日後に絢爛豪華な商隊を引き連れてエデンの城下に入ってこられました。何十頭という馬を引き連れた商隊など聞いたこともありませんでしたが、その上、その馬には大量の金塊が載せられていたのですから、見たものは全て度胆を抜かれました。
そして商隊を率いる魔王様の御姿を見た者たちは更に度胆を抜かれたのでした。
その圧倒的に高貴なオド。さらにお姉様と同じようなデザインの異国の衣装を身にまとっておられたからです。
そうして魔王様はお姉様と如何にも遠い旅の後に再会したかのような会話をした後に、
「私がこの国の女王を娶るのだっ!!」と、高らかに宣言なされたのです。
そうして、魔王様が予言なされたようにこれで勝敗が決したのです。最後まで頑張っていたドラァーゴもスパーダも、もうそれ以上融資はしなかったのでした。
しかし、その代わりに大国スパーダが我が国に対して宣戦布告をしてきたのでした。
とうとう明けの明星様が思い描いた絵図通りの破滅が訪れ始めたのです。
すなわち「この国のために最も多く貢献していただいたお方の下へ御輿入れいたします。」という内容が各諸侯の下へ文書として配られたのでした。
一番最初に反応したのはアンドレア様でした。それもそのはず、アンドレア様は当王家と親戚関係にあることもあって城下町に別荘がご用意されていて、アンドレア様は私が新国王になった知らせを受けた時、本国から当国においでなされまして、それからはずっと別荘に住み込んでおられたのです。
ですから私の外交文書を読まれるとすぐにお城にやってこられたのでした。
「ラーマっ!! これは一体どういう事なんだい?
君がまさかこんないかがわしいことを思いつくとは思えない。一体、誰の入れ知恵なんだ?」
アンドレア様は、勝手知ったる他人の家とばかりになんの約束も取り付けずに堂々と私のいる執務室まで入ってきたかと思うと、私にそう言って詰め寄るのでした。私も自分がやっていることがいかがわしいことは重々承知であったので心苦しい部分もあり、アンドレア様に詰め寄られたら言い淀んでしまうのでした。
「あ、ああ、あの・・・。アンドレアお兄様。
わ、私・・・。その・・・・・・。」
しどろもどろで返答さえできなくなってしまった私をヴァレリオ男爵がサポートしてくれました。
「お静かにアンドレア様。
アンドレア様はドラァーゴ王国の皇太子に在らせられるお方です。その皇太子さまがこのように他国の宮殿に我が物顔で押し入り、我らが女王を詰問するとはなんとも常識はずれな所業と言わざるをえません。
どうぞ、お静まり下さい。」
「なんだ、貴様っ!! 見かけぬ顔だが、何処の者だっ!!」
少し苛立っておられたアンドレア様がそう言ってヴァレリオの胸倉をつかんだ時の事でした。
「お黙りなさい!! それが皇太子のなされようですか?
お控えなさい。外交問題になりましてよ?」
と、凛とした声が執務室に響いたかと思うとお姉様がチャイナドレス姿で入室されたのでした。
「・・・・・・。美しい・・・。」
アンドレア様は魔神フー・フー・ロー様が魔王様の手によって女性にされたことは当然ご存じなく、入室してきた女性がまさか魔神ギーン・ギーン・ラー様だとは夢にも思われないでしょう。そして、お姉様のこの世の者とは思われぬ美貌に呆然としてしまい、先ほどまで激昂なさっておられたのに、水を掛けられた焚火のように一瞬で大人しくなられてしまいました・・・。
「と、とてもこの世の御方とは思えない・・・。
それに見かけたことのない異国の衣装・・・。
ラーマ。この恐ろしく高貴なお方はどなただ?」
そしてアンドレア様は大人しくなるとお姉様の事をお尋ねになられました。それはただ単にお姉様の美貌に骨抜きにされただけではありません。お姉様が放つ高位に位置する魂が発するオドに恐れおののいての事。それはそうでしょう。だって、お姉様は魔神ギーン・ギーン・ラー様なのですから・・・・・・。
ただ、問題は一つ。私は魔王様の指示によってお姉様の正体を少しの間、他国に対して隠せとの厳命を実は受けていたのです。隠す理由については聞かされてはおりませんでしたが、どうせろくでもない理由なのはわかり切った事なので私も敢えて尋ねはしませんでした。ですが、例えお身内のアンドレア様とて他国の皇太子。お姉様の素性を明らかにすることは出来ず、魔王様に教えられたとおりの情報をアンドレア様にお伝えするしかありません。
「こちらのご婦人は遠い海の向こうより来られたアンナ・ラー様でございます。
龍の血脈のご婦人ですので、アンドレアお兄様もどうぞご無礼無きようにお気を付け下さいませ。」
と、私がアンドレア様にお姉様をご紹介いたしますと、アンドレア様は畏まってご挨拶なさいました。
「これは、アンナ様。知らぬこととはいえ、ご無礼仕りました。
それにしてもアンナ様がこの部屋に入ってこられた瞬間にこの部屋には一瞬でアンナ様の高貴なオドで満ちました。とても我らでは真似できぬ事と思いましたが、龍の血を引く御方でした。道理で・・・。」
アンドレア様がそう言って深々と頭を下げてご挨拶なされると、お姉様はアンドレア様に挨拶を返します。
「はい。アンドレア。これからよろしくお願いしますね。
私は旦那様のご用命でこの国に来ました。その御用命が何なのかは教えるわけには参まいりませんが、用件片付くまではよろしく頼みましたわよ。」
お姉様はそう言ってアンドレア様が下げた頭に対してまるで幼子をあやすかのようにポンポンと軽く叩くと私の元までやってきて
「ラーマ。今日は私とお話があるはずですよ? 男はこの部屋には必要なくって?」
と、仰いました。
私はもう、アンドレア様がお怒りにならないかと心配になるほど見下した仕打ちに戦慄を覚えましたが、当のアンドレア様はお姉様の高貴な出自をきちんと把握されておられるのか、お怒りになるどころか「これはご無礼致しました。邪魔者は直ぐに退散いたします。」と丁寧に御挨拶の上に執務室を出て行くのでした。
そして、そんなアンドレア様に対してお姉様はまるで追い打ちをかけるかのように冷たく声をおかけになったのでした。
「アンドレア。あなたは他国の皇太子とはいえ、このラーマは私の事を姉と呼ぶほど慕い、私も妹のように思っている存在。無礼は許しませんよ?
次は、必ず事前に約束を取り付けてからおいでなさい。」
とても厳しい口調でしたが、アンドレア様は「ははっ」と素直に返事をして他の男達と共に執務室から退室していかれました。アンドレア様はきっと怒る怒らない以前にお姉様のオドからお姉様が只者ではないことを悟られたのでしょう。それで大人しく引き下がられたのでしょうが・・・。
「お姉様っ!! いくらなんでもあの対応は酷いんじゃありませんか?」
私は厳しすぎるお姉様の対応に苦情を言います。あれではアンドレア様がお可哀想・・・。
でも、お姉様は顔を真っ赤にしながら私の耳元でこう仰ったのです。
「旦那様に肌着を奪われてしまいました。
こんなスリットのきついドレスだと何かの拍子で下が見えてしまいます。
ラーマ。お願い。肌着を貸してっ!!」
・・・・・・。
「ええええええ~~~っ!?
はだぎをとられたぁ~~~っ!!?」
「きゃあああああっ!! こ、声が大きいいいっ!!」
信じられません。信じられません。
なんという事をするんですか? あの魔王様は。
「昨晩、あなたを慰めるために乳房を弄んだときの感触をご報告したら、
『己は、俺も揉んだことのないあの乳を弄びやがったんかいっ!!
ええ根性しとるのワレっ!! 今日は一日、素っ裸でおれっ!!』
と、大層お怒りになられて・・・・・・服の方は何とか・・・とても口では言えないようなプレイをしたご褒美に返してもらえたのですが・・・肌着の方は返していただけなくて・・・。
そんな事情だから、ラーマっ!! 貸してくれない?」
・・・・・お二人ともアホたれですか・・・。
・・・と。あらいやだ。魔王様とお付き合いさせていただいてから、私言葉遣いが悪くなっている気がしますわ。
しかし、まぁ。同じ女として今の状況は見過ごせません。お貸しせねばっ!
私はお姉様をドレスルームにご案内して、失礼のない様に新品の肌着をお渡しします。私の新品の衣装なのですから、間違いなく我が国で一番高級な肌着です。
そうして、お着替えをなさっている姿を拝見させていただくと、お姉様の御体は本当にお美しい。
「いやん、そんなに見つめないで。ラーマ。
・・・・・・それとも、あなた。そっちの素質があるのかもしれないわね。」
私がお姉様の着替えをあまりに見つめていたので、お姉様は恥ずかしそうに両手でお体をお隠しになられました。
わ、私。そんな女性に警戒されるほどに見つめていましたでしょうか?
慌てて私は弁解いたします。
「ああっ、こ、これはご無礼をいたしました。
あまりの御美しさに見惚れてしまったのです。」
「・・・貴方も綺麗だわ。」
私が正直に感想を言うとお姉様も私を褒めてくださいました。
それでも、やはり私はお姉様には程遠いと感じたのです。
「でも、お姉様はそうおっしゃってくださってもアンドレアお兄様は、やはりお姉様の御美しさに一目で心を奪われていたかのように見えます。
きっと。女性の目と男性の目では違って見えるのでしょうね。」
私がそう言って落ち込む姿を見て、お姉様は「しょうがない子ね。」と言ってから教えてくださいました。
「貴方は気が付いていなかったかもしれないけど、あのアンドレアとか言う若者。
私とあなたのお胸を交互にチラチラ見比べていたのよ?
そしてその上で悔しいけれど、あの男は貴方を選んでいる・・・。
彼は本気よ。本気でアナタを狙っているわ。」
「・・・・え?」
お姉様のお言葉は私にとって意外でした。
・・・本当に・・・?
お兄様、お兄様と幼いころから呼ぶ私に優しくしてくださったアンドレア様・・・。
・・・・・・本気って・・・。もしかして、ずっと私の事を・・・?
そう思った瞬間、私の胸は高鳴り、顔が紅潮していくのが自分でもわかりました。
正直、嬉しかったです。
魔族と人間の混血の私をアンドレア様が選んでくれていたなんて。愛される喜びを女として私は初めて知ったのですから・・・。
しかし、お姉様はその後にとても不吉なことを仰ったのです。
「可哀相なラーマ。よくお聞きなさい。
あの男はダメです。
あの男は貴方に確かに本気です、ですが本気すぎるのです。
きっと旦那様の戦術にハマって大勢を犠牲にしながら泥沼に沈んでいくでしょう。」
私にはそれが予言に聞こえました。とても不吉な予言に・・・。
「どういう意味ですか? お姉様。
明けの明星様が何かなさるというのですか?」
「あなたは・・・まだわかっていません。旦那様の恐ろしさを。
あのお方は何もなされません。
しかし、なにもなされなくても池の鯉を根絶やしにする毒を一滴溢すように人心をかき乱すことができる御方なのです。」
「いいですね。ラーマ。
あの男の事は諦めなさい。」
私はお姉様にそのお言葉の真意を確かめたかったのですが、その真実を知ることが何だか恐ろしすぎて聞けずにいました。
そうして、1月も経たぬ間に私を賭けたセリは、ドンドンと値上がりしていったのです。
大国も小国も己の威信をかけて私の王国エデンの為に御金を貢いでくださいました。
それはお互いの名誉をかけた戦いでしたので、やがて明けの明星様が予言成された通り、この遊びは勝負にまで白熱していったのでした。
アンドレア様も本国に随分掛け合って随分な金額を融通してくださいました。それは大国スパーダにとっても厳しい額にまで上り詰めていたのでした・・・。
そうやっていつの間にか多くの国が脱落し、ドラァーゴとスパーダのみが残った時、いよいよ魔王様が動きました。
「頃合いやな。そろそろ俺の出番や。」
魔王様そう言うと3日後に絢爛豪華な商隊を引き連れてエデンの城下に入ってこられました。何十頭という馬を引き連れた商隊など聞いたこともありませんでしたが、その上、その馬には大量の金塊が載せられていたのですから、見たものは全て度胆を抜かれました。
そして商隊を率いる魔王様の御姿を見た者たちは更に度胆を抜かれたのでした。
その圧倒的に高貴なオド。さらにお姉様と同じようなデザインの異国の衣装を身にまとっておられたからです。
そうして魔王様はお姉様と如何にも遠い旅の後に再会したかのような会話をした後に、
「私がこの国の女王を娶るのだっ!!」と、高らかに宣言なされたのです。
そうして、魔王様が予言なされたようにこれで勝敗が決したのです。最後まで頑張っていたドラァーゴもスパーダも、もうそれ以上融資はしなかったのでした。
しかし、その代わりに大国スパーダが我が国に対して宣戦布告をしてきたのでした。
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