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第14話 氷撃のゲルマン・ディアス

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ーー4時間前


「ふぅ、まったくオルクスは相変わらず根性なしのヘタレじゃな」

 
 天神会本部の前でオルクスと別れた儂は、久しぶりの奴について考えていた。
 しかし、あのヘタレがどうしてあのような強大な力を持っておるのだ。
 あれではまるで魔王……いやひょっとするとそれ以上のなにかにすら感じる。
 あのアホ弟子何か大きなことに巻き込まれておるのか。 
 まぁ奴なら持ち前の運でどうにかするか。
 それよりも儂も儂でエイドリアンについて調べねば。
 
「着いたな」

 第一区画と第二区画の間にはスラムと呼ばれる家を持たぬ者やならず者が数多くいる場所が多々ある。
 儂はそのうちの一つにエイドリアンの手がかりがあるのではないかと読んでいる。

「さぁて、なんか知ってそうな奴はおらんかな」
「おいおっさん、良い服着てんなさては金持ちだな」
「おーなんだよ、お客さんかぁ」
「おいおい俺にも挨拶させろよ」

 スラムに入ると早速手厚い歓迎を受けた。
 よしよし良い感じの奴らが集まってきたのぉ。
 
「金はあとで払うから一つ訊きたいことがある」
「聞いたかこのおっさん金を払うだとよ」
「へー、良いやつじゃん」
「ばっか違うだろ、ここでは金はな払われるんじゃなくて奪うのが常識なんだよ!」

 そう言って血気盛んな若造の1人が、懐からナイフを出して飛びかかってきた。
 おー素晴らしいなんと無防備なジャンプじゃ、優しい儂でなければその跳躍のスキにお主は殺されておるぞ。
 まったく指導が必要じゃな。

「ふんっ」
「うわぁ」

 儂は飛びかかる小僧を鼻息で吹っ飛ばした。
 攻撃アビリティー鼻ブレス、若い頃思いつきで考案した儂のオリジナルアビリティ、消費魔力50威力75ほどの弱アビリティだが子奴らにはこの程度が丁度いいだろ。

「嘘だろ、このおっさん鼻息で人を吹っ飛ばしたぞ」
「ちっげーよバカだな、よく見ろ一瞬手を使ったんだよ」
「そうか、そうだよな鼻息で人が飛ぶわけないよな」

 おぉ子奴ら絵に描いたようなアホ達じゃな。
 仕方ないそうなれば今度は手を後ろに組んで使うとしよう。

「ん?」

 なんだなにやら強い気配を感じるな。

「天神会のゲルマン・ディアスだな、ここに何の用だ」

 派手な装備に周りの雑魚どもとは違う強者のオーラ、これはこれは王直下の精鋭部隊、輝石の英雄のメンバー達ではないか。
 何故こいつらがこんなところにおるんじゃ?

「その質問そのまま返すが、お前達こそ何故こんなところにおるんだ?」
「……お前は王にも顔が利く有名人だが、それは教えられんさっさとここから立ち去れ」
「ほぉ、追い出そうとするところを見ると尚のこと気になってくるのぉ」

 子奴ら何かを隠しておるな、その証拠に全員が何やら大きい荷物をもっておる。
 これはひょっとするとまずい事態になっているのやもしれんな。

「ゲルマン!いくらのお前でもこれ以上ここに留まると言うのならばこちらも力ずくで対処するぞ」
「儂はそれでも一向に構わん、さぁ来るならこい」

 儂がそう言うと、輝石の一人が大剣を構えた。

「おいおい戦うのは一人かよ、つまらんのぉどうせならそこにいる輝石の7人全員で来い」
「図に乗るなよゲルマン、いくら貴様がこの国最強と謳われているとは言え、この人数のましてや輝石の称号を背負う俺たち全員を相手にできるわけないだろ」
「やってみなければわからんだろう、なんだ貴様まさか全員でいって負けるのが怖いのか?」
「ふざけたことを……いいだろう、お前の誘いのってやる、全員武器を構えろ!」

 お、のってきたか、やれやれ堅物は挑発に弱いと言うがまさか本当だとはな。
 ま、こっちとしても全員で来てくれたほうが楽だからのぉ。

「輝石の者達よ、一つ聞くがお主らアビリティの真髄は何か知っておるか?」
「うるさい黙れ!」

 儂の問いに対し一人の兵士が怒りをあらわにした。

「おい落ち着け、相手はあの氷撃のゲルマン・ディアスだ、油断していい相手ではないぞ」
「油断しないとは結構なことだな、まぁとにかくアビリティの真髄とはーー」
「うるさいんだよぉぉ!」
「待てエッジ!勝手に行くな」

 儂の話に痺れ切らしたのか一人の兵士が味方の制止を振り切りこちらに突っ込んできた。
 まったく年寄りの話は最後まで聞くもんだぞ。

「やれやれ仕方ない、アビリティ発動ー【魔境】氷原白日」
「な、なんだ」
「ま、まずい全員撤退ーー」

 そうして一瞬にしてスラムとそこにいた全員は氷に包まれ凍ってしまった。
 
「あ、やばい、話聞けんかったのぉ」
 
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