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一話 剣の園 ①

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 剣の園ーゲーム人口1000万人以上を誇る人気オンラインゲーム。
 ジョブを選び、剣気術とよばれるこのゲームのスキル的なものを使い数多のモンスターと戦うこのゲームは、発売開始から半年が経ち人気はますます上がっている。
 俺はこのゲームの所謂上位ランカーであり、パーティを組んで日々ゲームに入り浸っている。
 
「咲、右に行ったぞ」
「おっけー聡」

 放課後、誰も使っていないパソコン部の部室で俺と同じクラスの木崎咲は剣の園をプレイしていた。

「やったー勝ったね!」
「よっしゃあ!ああ、ちょっと危なかったけどどうにかなったな」

 木崎咲、高城義時、寺島雛、そして俺。
 この4人で俺たちはパーティを組んでいる、全員リアルで会ったことあり、俺と咲が同じ学校で他の2人は学校が違う。
 
「流石に学校だと大声とか気にしちゃうけど、勝つとつい出ちゃうね」
「わかる」

 オンラインゲームを誰かとしていると、勝った時の喜びのあまり声が出てしまう。
 あんまりスポーツとかは得意では無いけど、スポーツとかで雄叫びを上げる人達の気持ちがわかる気がして、俺は喜びの声をお互いにあげてしまうこの空気が結構好きだ。

「そういえば聡は日曜の剣の園のイベント行くの?」
「ああ、義時と行く約束してる」
「えー私も雛と行くんだよ!だったら4人で行こうよ」
「お、おう」

 なんだよこいつも行くつもりだったのかよ、でもこいつこの前ゲームのイベントは疲れるから参加しないとか言ってたくせに、まぁ別にいいか友達と行った方が楽しめるし。



「おーい聡!」
「あ、義時それと雛もおはよう」
「おはよう聡くん、久しぶりだね」
「あーそうだね、リアルで会うのは2ヶ月ぶりくらいか」

 日曜日、俺はイベント会場の最寄駅で義時と雛、そして咲と待ち合わせをしていた。
 オンラインゲームあるあるだが、ゲーム上でほぼ毎日会っていると何ヶ月かぶりにリアルで会うと久しぶりって感じが薄れる気がする。

「あれ咲ちゃんは?」
「あー咲なら少し遅れるってさ」
「へぇ」
「あ!咲ちゃん!」
 
 そんなに遅れることなく咲が来た、時間にしてだいたい1分の遅刻。
 まぁそれでも遅刻は遅刻だな。

「おせーぞ咲、1分も遅れやがって」
「うっせぇ聡、1分なんて誤差よ」
「お前ら仲良いなぁ、さぁ全員集まったし行くぞ」
 
 俺と咲がに無意味に悪態をついていると義時がそれを宥めるようにそう言ってきた。
 いや別に、仲良くなんかないけど……。

「おぉ、めっちゃ人いるなぁ」
「そりゃあ総人口1000万人突破の人気ゲームだもんなこれくらいいるよな」
「あ、見て見て聡ダル狐だよ!」

 ダル狐ー剣の園内におけるマスコット的なモンスターで、なんともダルそうな狐で顔は垂れ目が特徴的で女性から異様人気がある。

「わーい可愛い!」

 そう言って咲はダル狐の着ぐるみに抱きついた。
 おいおい中身おっさんかもしれないのによく行くなあいつ。

「おーいお前ら、そろそろイベント始まるから会場入るぞー」

 着ぐるみに抱きつく咲とそれを見ている俺に早くこっちへ来るようにと義時が言ってきた。
 これから俺たちはメインホールで行われる剣の園関係者の登壇イベントを見ることになっている。
 ゲームを作った人達の話を聞くのは好きなので、柄にもなくワクワクしながら俺は会場の中へ入っていった。
 
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