上 下
3 / 3

3話 ようこそ貧困魔王城へ!!

しおりを挟む


「ね、ねぇ離してよ」
「嫌ですナターシャ様、私は今西の魔王城すべての魔物達のため、新たな魔王を連れているのですたとえそれが次の魔王の頼みとあっても私はあなたを連れて帰らねばならんのです」

 おいおい何を言ってるんだか……私としては魔王(上司)の命令を無視する部下がとてつもなく恐ろしく見えるけどね。
 まったく、こんなに必死な姿を見たらなんだか魔王城に一回行くだけならアリかなと思ってしまうじゃない。
 仕方ない、無理矢理連れて行かれるくらいならここらで折れのもありね。

「わかったわもう降参、逃げないからその手を離してもらえる」
「……ほ、本当ですか?」

 うっわ何その疑ってる目は、仮にもあんたの上司になろうって私に対してそれって、あんたには色々と教育が必要かもね。

「本当よ本当、もう面倒だし行ってやるわよ魔王城」
「な、なんとやっと決心してくれましたか」
「いや違うからとりあえず行ってみようかなってだけだから」

 まぁ見るだけ見たら、こいつの隙を見てにげるけど……。

「では私の近くへ来てください」

 そう言って悪魔は両手を広げた。
 え、普通に嫌なんだけど。
 なんでそんないかにも抱きつきますよみたいに両手広げてんの?そんなの行くわけないじゃん。

「え、普通に嫌なんだけど」
「違います、これは瞬間移動をするために必要なものなのです、決してやましい気持ちなどはありません」

 そうは言ってもねぇ、普通にこんな両手を広げたおっさん悪魔に近寄りたくないのよね。
 ええい、行くと決めたのは自分なんだしここは割り切って頑張るか。
 
「おおナターシャ様、承諾していただき誠にありがとうございます、では参りますね」

 そう言って悪魔は私に抱きついた。
 や、やっぱり抱きつくのかよー!
 そうして私と悪魔はパッとその場から消えた。

「うわっ、な、なにこれ!」
「着きました、ここが西の魔王城でございます」

 気がつくと目の前には大きな大きなお城が出現していた。
 す、すごい本当に一瞬で着いた。
 ……ていうか、なにこれ本当にこれが魔王の城なの。

「ナターシャ様のその目わかります、言いたい事も痛いほどわかります、至る所に穴の空いた屋根、片方が欠けている城門、そして奥に見える折れた塔、そうですご覧の通りひどい有り様なのです」

 嘘、なに奥のあれ塔なの?
 なんか半分くらい折れてるから、そういう建物なんだって思ったわ。
 
「そ、そうねこれは結構ひどいわね」
「はい、魔王様がお亡くなりなってから我々もすっかりやる気がなくなってしまい、近隣の村々への略奪にもあまり行けてなく、気がつけば城の財はもうほとんど底をついてしまいました」

 りゃ、略奪って。
 やっぱりこいつらどう考えても、人類の敵よね。
 こんな奴らの仲間と思われたらもう生きてけないし、さっさと逃げよ。

「あ、悪魔神官様だー」
「おかえりー神官さん!」
「おお子供達!ただいま帰ったよ、そしてなんとこの方こそが新たな魔王ナターシャ様だ!」

 え、城の前でもたもたしてたら、なんか小さい悪魔が来たんだけど。
 け、結構可愛いわね。
 生えかけのツノにあどけない顔、やっぱり子供はどの種族でも可愛いわ。

「う、うそーこの人が」
「やったーこれでこの城もまた復活できるね!」
「ああそうだぞ!これからまた我らの時代がやってくるんだ」

 え、なにこれ、なんでこんなに嬉しそうにするの?
 こ、これじゃあ帰るに帰れないじゃん⁉︎
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

スパークノークス

お気に入りに登録しました~

神崎あら
2021.09.29 神崎あら

ありがとうございます。
励みになります。

解除

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。