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克明
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覚束ない足取りでクーニャの研究室へ戻る。研究室の奥にいるであろうクーニャに声をかける。
「……戻ったよ、クーニャいる……?」
俺の問いにすぐに反応があった。部屋の奥の扉が開かれると、そこからクーニャが出てきた。
「おかえりなさいアオイさん、ずいぶんと長い時間修行されてたんですね」
そう言って出迎えてくれたクーニャは俺を見るなり少し驚いたような表情をした。
「アオイさん、お怪我を?」
クーニャに言われて自分の頬や腕を見ると確かに小さな傷がいくつかあったが大したことはないと思ったので大丈夫だと答えた。するとクーニャは安心したように微笑んだ。
「それならよかったです……念の為治癒魔法をかけておきますね」
そう言ってクーニャは俺の頬に手を当てて呪文を唱えた。するとみるみるうちに傷が塞がっていくのが見える。その様子を見て改めて魔法というものの威力を思い知らされるのだった。
「ありがとう」
俺は素直に感謝の言葉を口にすると、クーニャは照れくさそうに顔を背けてしまった。そして少し間を置いてから再びこちらを向いて言った。
「いえ……どういたしまして……そういえば、サラさんから布団などの生活用品が届けられましたので一旦あちらに置いておきました」
「あ……そういえばそんなようなことを言ってたな」
俺はすっかり忘れていたことを思い出して苦笑いを浮かべた。
クーニャはそんな俺を見て小さくため息をつく。
「……とりあえず食事にしませんか?お腹が空いてるでしょう?」
屋内のため時間感覚がずれている気もするがおそらく既に陰の刻なのだろう。空腹も感じていたので素直に従うことにした。
「そうだな、よし――食堂へ行こう!」
そう言って俺は意気揚々と食堂へ向かうことにした。クーニャもそんな俺の様子に苦笑いを浮かべつつ後を追ってきたのだった。食堂に着くと既に料理が用意されていてテーブルに並んでいた。
「美味しそうだな」
俺は椅子に座りながら言うと、クーニャも席に着いた。そして二人で手を合わせてから食事を始めることにするのだった。
「……それで?今日はどんな修行を?」
クーニャが尋ねてくるので俺は今日の出来事を簡単に説明した。するとクーニャは納得したように頷いた後、少し考え込んだ後に言ったのだ。
「なるほど……対魔法、つまり遠距離攻撃への対処法は一旦考えずにとにかく近接戦闘の技術を磨く方がいい気がしますね――この間合いに持ち込めば絶対に勝てるというような」
「……遠距離攻撃への対処法は考えなくてもいいのかな?」
俺はクーニャの言葉に頷きつつ、気になった点を質問した。
「魔法に対抗するためには魔道具を使用するしかないと思います」
そう言うとクーニャは懐から何かを取り出した。それは手のひらサイズの黒い板のようなものだ。初めて見る物だった。俺が興味津々な様子を察したのか、クーニャはその魔道具を俺に見せながら説明してくれたのだった。
「これは魔法を吸収することのできる特殊素材で作られています」
そう言ってその魔道具の背面についているスイッチを押すと表面に魔法陣が現れるのが見えた。
「このように特定の道具や素材に魔力と術式を付与することで、限定的に魔法を使うことができます――例えばこの素材で作られたトンファーであれば、魔法を吸収しながら自身の間合いまで距離を詰めることもできるということです」
なるほど、確かにその通りだと思った。俺はクーニャの話を聞いて改めて自分のトンファーを見つめ直した。
「……ありがとう、クーニャ。なんとなく道が見えた。クーニャの言うとおりまずはトンファーの間合いで負けないだけの実力を身につけるよ」
そう言って俺はクーニャにお礼を言った。クーニャは微笑みながら頷いてくれたのだった。
「魔道具型トンファーはおそらく武器庫にはないので私が作ってみます――自信はありませんが、やり方はわかりますので」
「至れり尽くせりとはこのことだな――ありがとう」
クーニャの言葉を聞いて俺は頭を下げた。その後、食事を終えた後片付けをした後俺達は研究室へと戻ることにした。
「……この後はどうされますか?もう休まれますか?」
クーニャは俺に向かって尋ねてくる。俺は少し考えてから答えた。
「……いや……基礎訓練を少しやってとあとはクーニャに借りている本にも目を通すよ」
「そうですか……では私は奥にいますので、何か質問などがありましたら声をかけてくださいね」
そう言ってクーニャは奥の部屋へと消えていった。俺は改めてガンツさんに渡された基礎訓練メニューをすることにした。
漫然とメニューをこなすのではなく、戦いに必要な可動域を考えてストレッチを、必要な筋肉を考えて筋トレを――思考することを放棄せずに訓練を続ける。そして数時間ほど経っただろうか、一旦訓練を終えて、浴場で汗を流した後再び研究室に戻り今度は読書に没入した。
「……ふぅ……これで全部か……」
俺は大きく伸びをしてから一息ついた。
クーニャから借りた2冊の本――歴史と文明の基礎知識に関してはすべて頭に入れることができた。クーニャに質問したいこともあったが、既に陰の刻真っ只中といえこともあったため、明日聞くことにし眠りについた。
「……戻ったよ、クーニャいる……?」
俺の問いにすぐに反応があった。部屋の奥の扉が開かれると、そこからクーニャが出てきた。
「おかえりなさいアオイさん、ずいぶんと長い時間修行されてたんですね」
そう言って出迎えてくれたクーニャは俺を見るなり少し驚いたような表情をした。
「アオイさん、お怪我を?」
クーニャに言われて自分の頬や腕を見ると確かに小さな傷がいくつかあったが大したことはないと思ったので大丈夫だと答えた。するとクーニャは安心したように微笑んだ。
「それならよかったです……念の為治癒魔法をかけておきますね」
そう言ってクーニャは俺の頬に手を当てて呪文を唱えた。するとみるみるうちに傷が塞がっていくのが見える。その様子を見て改めて魔法というものの威力を思い知らされるのだった。
「ありがとう」
俺は素直に感謝の言葉を口にすると、クーニャは照れくさそうに顔を背けてしまった。そして少し間を置いてから再びこちらを向いて言った。
「いえ……どういたしまして……そういえば、サラさんから布団などの生活用品が届けられましたので一旦あちらに置いておきました」
「あ……そういえばそんなようなことを言ってたな」
俺はすっかり忘れていたことを思い出して苦笑いを浮かべた。
クーニャはそんな俺を見て小さくため息をつく。
「……とりあえず食事にしませんか?お腹が空いてるでしょう?」
屋内のため時間感覚がずれている気もするがおそらく既に陰の刻なのだろう。空腹も感じていたので素直に従うことにした。
「そうだな、よし――食堂へ行こう!」
そう言って俺は意気揚々と食堂へ向かうことにした。クーニャもそんな俺の様子に苦笑いを浮かべつつ後を追ってきたのだった。食堂に着くと既に料理が用意されていてテーブルに並んでいた。
「美味しそうだな」
俺は椅子に座りながら言うと、クーニャも席に着いた。そして二人で手を合わせてから食事を始めることにするのだった。
「……それで?今日はどんな修行を?」
クーニャが尋ねてくるので俺は今日の出来事を簡単に説明した。するとクーニャは納得したように頷いた後、少し考え込んだ後に言ったのだ。
「なるほど……対魔法、つまり遠距離攻撃への対処法は一旦考えずにとにかく近接戦闘の技術を磨く方がいい気がしますね――この間合いに持ち込めば絶対に勝てるというような」
「……遠距離攻撃への対処法は考えなくてもいいのかな?」
俺はクーニャの言葉に頷きつつ、気になった点を質問した。
「魔法に対抗するためには魔道具を使用するしかないと思います」
そう言うとクーニャは懐から何かを取り出した。それは手のひらサイズの黒い板のようなものだ。初めて見る物だった。俺が興味津々な様子を察したのか、クーニャはその魔道具を俺に見せながら説明してくれたのだった。
「これは魔法を吸収することのできる特殊素材で作られています」
そう言ってその魔道具の背面についているスイッチを押すと表面に魔法陣が現れるのが見えた。
「このように特定の道具や素材に魔力と術式を付与することで、限定的に魔法を使うことができます――例えばこの素材で作られたトンファーであれば、魔法を吸収しながら自身の間合いまで距離を詰めることもできるということです」
なるほど、確かにその通りだと思った。俺はクーニャの話を聞いて改めて自分のトンファーを見つめ直した。
「……ありがとう、クーニャ。なんとなく道が見えた。クーニャの言うとおりまずはトンファーの間合いで負けないだけの実力を身につけるよ」
そう言って俺はクーニャにお礼を言った。クーニャは微笑みながら頷いてくれたのだった。
「魔道具型トンファーはおそらく武器庫にはないので私が作ってみます――自信はありませんが、やり方はわかりますので」
「至れり尽くせりとはこのことだな――ありがとう」
クーニャの言葉を聞いて俺は頭を下げた。その後、食事を終えた後片付けをした後俺達は研究室へと戻ることにした。
「……この後はどうされますか?もう休まれますか?」
クーニャは俺に向かって尋ねてくる。俺は少し考えてから答えた。
「……いや……基礎訓練を少しやってとあとはクーニャに借りている本にも目を通すよ」
「そうですか……では私は奥にいますので、何か質問などがありましたら声をかけてくださいね」
そう言ってクーニャは奥の部屋へと消えていった。俺は改めてガンツさんに渡された基礎訓練メニューをすることにした。
漫然とメニューをこなすのではなく、戦いに必要な可動域を考えてストレッチを、必要な筋肉を考えて筋トレを――思考することを放棄せずに訓練を続ける。そして数時間ほど経っただろうか、一旦訓練を終えて、浴場で汗を流した後再び研究室に戻り今度は読書に没入した。
「……ふぅ……これで全部か……」
俺は大きく伸びをしてから一息ついた。
クーニャから借りた2冊の本――歴史と文明の基礎知識に関してはすべて頭に入れることができた。クーニャに質問したいこともあったが、既に陰の刻真っ只中といえこともあったため、明日聞くことにし眠りについた。
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