上 下
3 / 53
井口泰平 編

飲み会で目上の人より先におしっこなんて行こうものなら

しおりを挟む
18時50分。



歩いていると、ただ黙って立っているよりも少しは楽だった。

ーーーここに着くまでは。

「最近ここができてね。あんまりこういう店は好きじゃなかったんだけど、一回入ってみたら意外とハマっちゃってさ」

「行ってみたいとは思っていたんです!なかなかひとりだと行く機会が無くて。いやぁ嬉しいなぁ!」

最近の戸崎が気に入っている店。その名も『銀だこ&ハイボール酒場』。

元々は路上販売を専門にしていた店で、売りは何種類もあるバリエーション豊富なタコ焼き。

外はカリカリ、中はフワフワで噛むとプチプチと弾けるタコが心地いい。

そのタコ焼きをつまみにハイボールを飲める、ここ最近人気のチェーンだ。

「さ、乾杯しよう。立ち飲みもたまには良いでしょ」

「最高です。やっぱりサラリーマンはこれでないと」

(なんで座れないんだよ!!!)

「お疲れ様です!」

カチン、とジョッキを合わせる音が鳴り響いた。


22時40分。

「で、僕はその時、それがなんだ!って社長に言ってやったんだよ。それはやる気がないだけだろ!って。今まで上に楯突く奴なんていなかったから驚かれたなぁ」

「いや~、すごいなぁ!さすがですね!上に楯突くなんて僕には絶対無理ですよ~ははは」

(あぁぁああぁ!もうつまらないつまらないつまらない!足痛い足痛い足痛い!ってか立ち飲みでどんだけ飲み続けるんだよ!)

酒で多少は紛れるものの、足の疲労感はとうに限界を超えていた。

「特に昔は縦社会だったからね。上には常に敬意を払って接しなければならなかった。こういう飲みの席でも上より先にトイレなんて行こうものなら後からものすごく先輩に怒られたなぁ」

「そうですよねー。今では考えられない時代だったとよくうちの上司も言ってます」

「けど、その時代のそういう風習があったから全体がピリッとしていたし、業績も良かったんだよなぁ。だから僕はそういうのは大切にしていきたいね」

(トイレも行きたいよー!!!)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

二分で読めるショートストーリー

佐賀かおり
ライト文芸
二分で読めるおもしろいお話です。最新話【空気の読めない神様】投稿中

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...