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1、検査の結果
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「検査の結果ですが……Domの特徴がよく出ていますね」
「え……? っ、なんて」
とある総合病院のとある診察室。困惑する青年に告げられたのは、ここでは数年に一度お目にかかるかどうかといった比較的少ない症例だった。
既に各科をたらい回されたことがよくわかるほど疲れ切った表情が、普通に考えて意味のわからない検査結果にさらに険しくなるのが申し訳なさすら覚えてくる。
「はい、残念ながら聞き間違いではありません。世野さんは確かに元々はNormal、ですが。ただの慢性疲労にも見えますが、この数値と念のため脳波を見ても……いわゆる後天性のDomに変異した、と考えて間違いないでしょう」
「……おれが、Dom? いや、だって」
「ええ、驚かれるのもわかります。っ、落ち着いて」
ああ、さすがにこれには何年経っても慣れやしない。
間違いなくこれが自分が変異であると突然告げられた場合の「正しい」反応であることに異論はないが、Domとして無自覚だからこそ感情に任せて無遠慮に溢れ出る純粋なグレアは俺には眩しくて刺激が強過ぎる。
気休め程度に分厚く誂えた眼鏡を掛け直して呼吸を整えて、気圧される前にこちらから見下ろすようにして立ち上がる。
「聞いて下さい。目を閉じて……そう、ゆっくり息を吸って、吐いて……ええ、そのままもう一度」
グレアが放たれていた先ほどまでは脅威でしかなかった存在も、押さえつけた両肩は存外華奢で。
かすかに震える姿はただ戸惑うしかない若者で、本人も望んではいなかったであろうDomという存在にただただ気の毒だと心底同情する。
「大丈夫ですから……そう、感情に引っ張られて無意識にグレアが出ているようでしたから、やはり間違いなくそれもDomの特徴のひとつです」
「そう、なんですか……」
「心当たり、ありますよね……目を閉じたままでいいので、話だけ聞いて下さいね」
言われた通りに目を閉じたまま諦めたように頷いたその表情が、泣いているように見えては心が痛むのもいつになっても慣れそうにはない。
「いきなり信じられないとは思いますが、成人してから第二性が覚醒するケースは実際に存在します」
極めて少数派であることは間違いないが、事実、意外なところにそういう者はそれなりに存在する。
例えば、三十路も過ぎてから後天性Subだと診断された俺――なんて、な。そんなこと今はどうでもいいけれど。
「通常であれば成長期に合わせてゆっくりと覚醒していくのですが……後天性となると、突然のことで戸惑われるのは当然です」
「…………」
だから、それが普通の反応であることも、戸惑う気持ちも身に沁みてよくわかってる。
そこでできるだけ必要なことから噛み砕いて説明してやるのも俺の仕事だ。
「第二性については、どの程度ご存じですか」
「え……? っ、なんて」
とある総合病院のとある診察室。困惑する青年に告げられたのは、ここでは数年に一度お目にかかるかどうかといった比較的少ない症例だった。
既に各科をたらい回されたことがよくわかるほど疲れ切った表情が、普通に考えて意味のわからない検査結果にさらに険しくなるのが申し訳なさすら覚えてくる。
「はい、残念ながら聞き間違いではありません。世野さんは確かに元々はNormal、ですが。ただの慢性疲労にも見えますが、この数値と念のため脳波を見ても……いわゆる後天性のDomに変異した、と考えて間違いないでしょう」
「……おれが、Dom? いや、だって」
「ええ、驚かれるのもわかります。っ、落ち着いて」
ああ、さすがにこれには何年経っても慣れやしない。
間違いなくこれが自分が変異であると突然告げられた場合の「正しい」反応であることに異論はないが、Domとして無自覚だからこそ感情に任せて無遠慮に溢れ出る純粋なグレアは俺には眩しくて刺激が強過ぎる。
気休め程度に分厚く誂えた眼鏡を掛け直して呼吸を整えて、気圧される前にこちらから見下ろすようにして立ち上がる。
「聞いて下さい。目を閉じて……そう、ゆっくり息を吸って、吐いて……ええ、そのままもう一度」
グレアが放たれていた先ほどまでは脅威でしかなかった存在も、押さえつけた両肩は存外華奢で。
かすかに震える姿はただ戸惑うしかない若者で、本人も望んではいなかったであろうDomという存在にただただ気の毒だと心底同情する。
「大丈夫ですから……そう、感情に引っ張られて無意識にグレアが出ているようでしたから、やはり間違いなくそれもDomの特徴のひとつです」
「そう、なんですか……」
「心当たり、ありますよね……目を閉じたままでいいので、話だけ聞いて下さいね」
言われた通りに目を閉じたまま諦めたように頷いたその表情が、泣いているように見えては心が痛むのもいつになっても慣れそうにはない。
「いきなり信じられないとは思いますが、成人してから第二性が覚醒するケースは実際に存在します」
極めて少数派であることは間違いないが、事実、意外なところにそういう者はそれなりに存在する。
例えば、三十路も過ぎてから後天性Subだと診断された俺――なんて、な。そんなこと今はどうでもいいけれど。
「通常であれば成長期に合わせてゆっくりと覚醒していくのですが……後天性となると、突然のことで戸惑われるのは当然です」
「…………」
だから、それが普通の反応であることも、戸惑う気持ちも身に沁みてよくわかってる。
そこでできるだけ必要なことから噛み砕いて説明してやるのも俺の仕事だ。
「第二性については、どの程度ご存じですか」
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