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番外編

おれがそうしてほしいから※

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※本編で二人の誤解が解けた少しあと。
 主人公視点です。
一応タイトルに「※」付けていますが会話が主で描写は軽めです。




 「あの頃から時間が止まってるきみから見れば僕もすっかりおじさんだし、覚えてないのは仕方ないけどさぁ」

 「…………」

 「それはいいとしても、あれだけ愛してるって言ったのに信じてくれてなかったのは……ちょっとひどくない?」


 拗ねたような口調で、いや、さすがにこれは実際拗ねている。
 一言一句、本当にそのとおりでしかなくてぐうの音も出ない。

 大体、ジャンがおじさんならおれだっておじさんなのだが、今言われているのはそういうことじゃないことぐらいはさすがにわかる。


 「だって……いや、ほんとにごめん。おれだって、好きすぎて……こんなに愛される理由なんてあるわけないと思ってたし、怖くて聞けなかったんだよ………」

 こんなところで取り繕っても仕方がないので、正直な気持ちを伝えようと言葉を探す。

 「はぁ……ほんと、そうやって僕が喜ぶような言い方しちゃうんだからずるいよね」

 「ごめん……おれも愛してるし、これからは信じるから」

 「あぁもう……そういうとこだよ……」

 おれよりも少し高い位置にあるジャンの顔をチラリと見上げると、大きなてのひらで彼自身の顔を覆いながらため息をついていた。

 「はぁ……ルカ、」

 「はい」

 どう考えてもおれが悪いのだから、ここは素直に彼に従うだけだとしっかりと彼の目を見て真面目な返事を返す。


 「お仕置きだよ」


***


 「んっ……はぁっ、」

 お仕置き――そう称しておれはジャンDomから五月雨のようにじっとりといやらしいコマンドを浴び続けながら、冷める気配のない彼の熱を受けとめていた。
 いつもは目元からほんのり滲むような優しいグレアも、まるで実体を持っているように重たくて濃厚で、ドバドバと溢れ出しておれに降りかかる。

 「ルカ、ダメだよ。目をそらさないでLook

 「あ…………」

 駄目押しのようなコマンドでその視線から逃れることすら許されず、頭も身体もぐずぐずに蕩けていく。
 このまま溶けてなくなってしまったほうが楽になれるのではないかと思えてしまうほど、気持ちよすぎてどうにかなりそうだ。

 「はぁ、ルカ、可愛い、好きだよ」

 「んっ、は、あぁっ…………」

 視線を見合わせた体勢のまま腰を打ち付けられて、やがてお互いの熱がぶちまけられて全身から力が抜けていく。
 ジャンの身体が覆い被さるかたちで抱きしめられて、おれの胸に顔を埋めるように触れられて余韻を確かめる。

 「ん…………はぁ…………」

 「はぁ……本当に、きみが好きなんだ」

 「ん……わかったから…………」

 「愛してる……って、あんなに伝えてたのに。だけど僕が実際にやっていたことは、逆らうことができないきみを、いいようにしていただけなのかもね」

 ひとりごとのように呟いて、たった今まで密着していた身体が離れていく。


 ダメだ。違う、


 「まって……」
 
 考えるより先に手を伸ばして引きとめようとするけれど力が入らなくて、おれの手はするりと空を切る。

 でもダメだ、このまま行かせたら絶対に後悔する。

 「違う!ジャンは悪くない、そんなふうに思ったことなんてない!」

 喉もカラカラで掠れた声しか出ないけど、それでもおれは必死で身体を起こして精いっぱいに叫んで訴える。
 
 「そんなの、おれだって……ジャンはなにもかも与えて愛してくれたのに、おれはなにもしないでそれをただ受け取ってた。それこそ……代わりでもいいから抱いてほしいと思うぐらい、好きだったのに黙ってた」

 「…………」
 
 「めちゃくちゃ気持ちよくて、やめてほしくなかったから……セーフワードだって使わなかった」

 「ルカ…………」

 「だから行かないで、おれはもっと役に立てるようにがんばるから。もっと命令して、いくらでもいいよう・・・・にしてくれよ」

 
 それぐらいしかおれにはできないし、おれがそうしてほしいから。

 だから、そんな怖い顔しないで、戻ってきて――――



 少しの沈黙のあと、根負けしたように軽く息を吐いてからジャンがこちらに近付いてくる。


 「やっぱりきみは……そういうところだよね」

 「…………怒って、ない?」

 「怒れないし、惚れた弱みだ」

 「えっと…………」

 それはつまり…………? 喜んでいいのだろうか?

 「お願いだから、僕以外にはそんな殺し文句使わないでよ」

 「殺し文句って……、おれは思ったことしか言わないよ」

 「あぁもう……うん、嬉しいよ、GoodBoy僕のいい子

 「あっ…………」


 不意打ちのコマンドにまた力が抜けていくけれど、しっかりと抱きとめられたのが嬉しくてそのまま寄りかかる。
 
 おれのこと、諦めないでいてくれてありがとう。
 おれの優しすぎるDom、ジャン……ずっと愛してる。


 そんなことを、おれは口に出してはいないはずだがジャンは嬉しそうにそっと撫でてくる。
 安心感のあるその手があまりにも心地良くて、ふわふわとした心地のまま、おれはまどろみの中に落ちていった。




 End.
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